植物相調査の中間報告
「魚沼市生物多様性セミナー」が3月18日、同市井口新田の小出郷福祉センターで開催された。
魚沼市では、平成21年度の市政施行5周年を機に自然環境都市を宣言し、自然環境を柱とした「まちづくり」に取り組むことを表明。そのための第一歩として身の周りの自然をよく知るために水辺や里山を中心とした植物相調査を実施している。23年度は里地、里山、水辺など、人の生活圏に近い13か所で176回の現地調査が行われ、これまでに1地区当たり約300種類を確認、全体で約500点の標本を採取するなどしている。
セミナーはその調査の中間報告会として開かれたもので会場には約130人が集まった。
セミナーではまず、調査リーダーの和田齊さんと武藤光佳さんが植物相調査の中間報告を行った。和田さんは調査により確認された植物の写真を紹介しながら「ヤマユリは昔いっぱいあったが、採られて少なくなっている。コシノカンアオイは珍しく、ギフチョウはこれに卵を産み幼虫は葉を食べる」など説明。「健康的で楽しい調査だったので、若い人たちから引きついてほしい。知らなかった植物を覚えることができたり、綺麗な昆虫も見ることができてよかった」と感想を述べた。武藤さんからも権現堂山や松川林道、米沢の林道での調査で確認された植物について報告された。
この後の課題提起では、元新潟大学教授の石沢進さんが「中間報告を通してみる魚沼の植物と今後の課題」と題して話し、調査結果からこれまで魚沼市に生えていないと見られている植物が分布していることが明らかになったことが報告されるとともに、魚沼市にもオオキンケイギクやセイタカアワダチソウなど特定外来種やクワモドキなどの要注意植物の分布が拡大していることを指摘、今後の課題としては調査を継続し長年にわたり資料を蓄積することの必要性や情報収集の範囲の拡大、「すぐれた地域」の選定と後世への保存をあげていた。
新潟県立植物園副園長の倉重祐二さんは、植物種多様性保全の重要性を説明するとともに、絶滅の原因として開発、環境の変化、採集、帰化植物をあげ、人間の活動の影響が大きい湿地、里山、島嶼で現象していると指摘。魚沼市での保全への提言として「自生地の調査」「自生地での保全(盗掘監視・環境整備)」「保険としての自生地外での保全(種子保存)」などを示し「市民、保護団体、研究機関、行政、植物園等様々な団体が協力して行なうことが必要」と述べていた。