自然環境調査で貴重な植物保全
里山を中心とした自然環境調査に市民の参加を呼びかける「魚沼市生物多様性保全シンポジウム」が4月24日、魚沼市井口新田の小出郷福祉センターで開催された。
魚沼市では市制施行5周年を機に「自然環境都市」を宣言し、自然環境を柱とした「まちづくり」に取り組むことを表明している。このため同市では、「身の回りの自然をよく知ることが第一歩」と考え、水辺や里山を中心とした自然環境調査を市民の参加を募り実施することにしており、市民に調査活動への参画を呼びかけるシンポジウムを開いたもの。会場には120人ほどの市民が集まった。
シンポジウムでは、まず新潟県立植物園副園長の倉重祐二氏が「生物多様性保全の重要性と実践」と題して基調講演、生物多様性保全の必要性や絶滅の危機にある日本の植物、絶滅の原因、生物多様性保全の実践方法などについて説明。地域の植物を守るための提言として自生地の調査(植物相の解明・育成状況・環境等)、自生地での保全(盗掘監視・環境整備)、保険としての自生地外での保全(産地別・種子繁殖)、「自生種を用いた自然や保全への理解の深化(講習会・総合学習)をあげ、「これらを行うことにより魚沼の豊かな自然が守られるのではないか」と強調した。
続く課題提起では元新潟大学教授の石沢進氏が「魚沼市における植物分布上の特色」について説明し、自然環境保全調査委員の富永弘氏は「魚沼市における植物分布の実態~保護すべき貴重植物の生育と分布状況~」と題して「コシノチャルメルソウは魚沼市のどこにでもあるが、全国的には珍しい」、「ヤマネコノメソウは海に近いところにしか分布していなく、魚沼市では珍しい」など具体的な植物を示しながら分布の実態を紹介した。
「魚沼市の自然環境調査をどのように行いどのように活かすか?」をテーマとしたパネルディスカッションでは「住んでいる人にはその価値が分かりにくくただ、自然が豊かといってもピンとこない。何が優れているのかを明らかにする必要がある。まちづくりを進めていく上で共通のイメージをつくることが大事」「地元の人から見守ってもらい、大事にしていくのが環境保全。盗掘がなく、みんなで楽しめるようになってほしい」、「調査の段階から地域の人たちから携わってもらわないと調査の意義が薄れる。ぜひ今回の調査には市民から参加してもらいたい」などの意見が出されていた。