
(NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより184号」(2014年3月発行)掲載記事「海鳥を読む」を分割して掲載)
「エトピリカ」(片岡義廣著、A5版、94ページ、北海道新聞社、1998年)
著者の片岡氏はエトピリカをはじめとする海鳥に惚れ込んで、霧多布に宿を構えて30年近くになる。その氏による霧多布のエトピリカの観察記録が、多くのカラー写真とともに紹介される。ディスプレイやヒナへの給餌についての詳細な記述もあり、エトピリカの繁殖生態を日本語で読める唯一の本だ。複数つがいが繁殖していたピリカ岩での絶滅といった、絶滅危惧種ならではの場面もある。ピリカ岩の絶滅後も繁殖していた小島も数年前から繁殖が途絶え、霧多布のエトピリカは厳しい状況が続いている。外国からのヒナ再導入も含めた、保護増殖のための議論が重ねられている。海鳥の個々の種を扱った書籍は多くないが、ウミスズメ類では「オロロン鳥 北のペンギン物語」(184ページ、寺沢孝毅著、丸善、1993年)があり、本州以南のオオミズナギドリやアホウドリにもいくつかの本がある。南半球のペンギン類については翻訳も含めて多く出版されており、国内で繁殖するウミスズメ類やアホウドリ類よりも多いのは皮肉な話である。
(2014年3月 千嶋 淳)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます