
(NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより184号」(2014年3月発行)掲載記事「海鳥を読む」を分割して掲載)
「海鳥についてもっと知ろう」(小城春雄著、B5版、38ページ、社団法人海と渚環境美化推進機構、2008年)
普及・教育用に作成された冊子で非売品。筆者も何かのシンポジウムの際に著者から頂いた。図書館等にもあまりないので、手にできる機会は少ない。しかし内容は素晴らしい。海鳥が海鳥たる特徴の後に渡りや食性、プラスチック汚染や漁網による混獲といったテーマが、優しい語り口と豊富な写真、イラストで解説され、最終章では保全についての持論が展開される。1時間もかからずに読み切れるボリュームながら、著者曰く「海洋国の日本人としてどうしてもこれだけは知っていて欲しい、海鳥についての知識」が身に付く内容となっている。北洋を舞台に、「ラストパイオニアフィールド」と呼ばれた外洋性海鳥の生態解明に人生を捧げた著者の経験や思想を加筆した上で、広く流通する書籍として出版すれば海鳥の教科書的存在となることは間違いないし、それが無理ならせめてインターネット上で公開して欲しい。34ページの「コバシウミスズメ」の写真はウミスズメ幼鳥で、同ページの記述も誤りと思われる。この本や上の綿貫氏の著作が出る前は、海鳥の生物学全般について日本語で読めるのは、「オーシャンバード 海鳥の世界」(240ページ、ラース・レフグレン著、旺文社、1985年)くらいであった。スウェーデンで出版されたものの翻訳で、30年近くを経て内容の古さは否めないが、世界中の海鳥がカラー写真で紹介された大判のページは繰っているだけで楽しい。
(2014年3月 千嶋 淳)
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