鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

151011 十勝沖海鳥・海獣調査

2016-01-06 21:47:37 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
ミツユビカモメを襲撃するトウゾクカモメ 以下すべて 2015年10月 北海道十勝沖)


 午前遅くから大気が非常に不安定となり、雷や突風も予想されたため、この時期としては早めの午前5時半の出航。4時半に家を出ると、南の空にはオリオン座が煌々と輝いていました。いつの間にか、そんな季節になっていたのです。

 港に着く頃には雲が広がり始めたものの、海況も比較的穏やかで申し分ありません。港を出るとすぐに多くのウミネコやセグロカモメで賑わいます。毎年、秋はこんな感じで沿岸の秋サケ定置網漁業と関係があるのかもしれません。出港して20分もすると、カモメ類にオオミズナギドリやハイイロミズナギドリが混じり始め、いつの間にか優占種として置き換わります。オオミズナギドリ中心の海鳥相は先月と同じですが、フルマカモメ、ミツユビカモメといった寒流系の種も並んで目立ち始めたこと、夏の終わり以降姿を消していた(おそらく北上していた)ウトウが散見され、海ガモ類やアビ類の移動も活発になって来たことが秋の深まりを教えてくれます。

 そして、そのミツユビカモメを虎視眈々と狙うのが天敵のトウゾクカモメ。小型な体を活かした急旋回やきりもみで振り切ろうとするミツユビカモメを執拗に追いかけ、上から下からダイレクトに、また激しい威嚇声で攻撃し、着水すると上から覆い被さるように続く一連のアタックは、猛禽類と呼んで差し支えないくらい激しいものです。中には、まるで助けを求めるかのように船に近付くカモメもいて、それでもなおトウゾクカモメも追いかけて来るので、息を呑むような死闘を手の届きそうな距離で何度も目にすることができました。急な動きを頻発する追撃はトウゾクカモメにとっても負担となるようで、追跡を諦めた個体が海上に降り、水浴びや羽づくろいをして調子を整える姿もありました。

 底曳網漁やトロール漁が行われていなかったためか、アホウドリ類が全般に少なめなのは残念でしたが、復路の水深170m付近で、一緒に調査していた大学生のN君が「アホウドリ!!」の絶叫。指差す方角を見ると、確かに巨大で骨太で…白い!!双眼鏡に捉えた姿は綺麗なアホウドリの成鳥で、カメラに持ち替えた瞬間に死角へ入って、そのまま飛び去ってしまったのは残念でしたが、N君がしっかり証拠画像を残してくれました。若者の優れた反射能力にただただ感謝。アホウドリはほぼ毎年観察されますが、ここまで成鳥か限りなくそれに近い個体の出現は初めてのことです。

 沿岸に戻って来る頃には暗雲が広がり、雨もちらつき始めました。雷を見た人もいたそうです。幸い、港から20分程度の距離までだったので、調査の中断も一瞬で、無事終えることができました。下船後は番屋で旬のアキアジ(鮭)を使ったチャンチャン焼きを囲みながら、話に花を咲かせました。このサロン的雰囲気も本調査の魅力の一つだと思っています。今回は旭川、室蘭など遠方からも参加いただきました。参加・協力いただいた皆様、どうもお疲れ様でした。また、今年度の調査は前田一歩園財団からのご支援をいただいており、こちらも合わせて感謝いたします


トウゾクカモメ



確認種:マガモsp. シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ シロエリオオハム アビsp. コアホウドリ クロアシアホウドリ アホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ アカアシミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ ハイイロヒレアシシギ ミツユビカモメ ウミネコ ワシカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ‘タイミレンシス’ オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ ウトウ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ 海獣類:ネズミイルカ


(2015年10月11日   千嶋 淳)

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