鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

150808 十勝沖海鳥・海獣調査

2015-09-16 17:50:48 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
カマイルカオオミズナギドリ 以下すべて 2015年8月 北海道十勝沖)


 日程の決定が直前となり、その日程も悪天候により土壇場で変更となったため、参加できたのは4名のみでした。朝6時、数日前の猛暑が嘘のように肌寒い漁港を出航。曇ってはいるものの、この時期に最も懸念される霧はまったく無く、帰港まで良好な視界が得られました。また、肌寒さも時間とともに解消され、遅い時間帯には日差しが顔を覗かせることもありました。
 港付近の沿岸ではウミネコが増え、トウゾクカモメも姿を見せるなど「秋」の要素が強くなっています(十勝ではウミネコは繁殖せず、7~10月に数が増えます)。出航して30分弱で、浮きに止まる1羽のアジサシ類を発見。船を近付けてもらうとコシジロアジサシ成鳥でした。その1分後にはオオトウゾクカモメも現れ、幸先の良いスタートです。
 その後はオオミズナギドリが数は少ないながら間断なく出現し、フルマカモメやハイイロミズナギドリがそれに混じります。洋上を漂うフルマカモメの死体を発見。タモ網で回収しました。こうして得られた死体は標本として残すことで教育用に活用できるだけでなく、外部形態や換羽に関する基礎的な、さらに栄養状態、胃内容物などからは海洋環境との関わりを示す情報を提供してくれます。
 水深150m前後の海域でオオミズナギドリを中心とした鳥山と出会い、しばらく観察。その間、船頭さんはイカ釣りを行い、数ハイを手に入れました。帰港後、我々の胃袋に収まったのは言うまでもありません。操業中の漁船と勘違いしたらしく、何羽ものクロアシアホウドリが船の周囲に飛来し、至近距離での観察を楽しみました。
 引き返して港に戻る途中、オオトウゾクカモメが何度も出現します。往路も含め10羽以上が確認され、過去最大の数だったと思います。南極大陸からやって来る、非常にごつくて格好良い海鳥です。


オオミズナギドリを攻撃するオオトウゾクカモメ



 割と沿岸まで戻って来た海域で、本日最大の見所が訪れました。カマイルカの群れに大きな鳥山が付いていたのです。じわじわと近付き、気が付くと周囲のそこかしこで数~10頭程度にバラけたイルカが「ブシュー」と噴気と飛沫を上げて海面近くにイワシの群れを追いやり、そこをめがけ何羽ものオオミズナギドリが「ピー」と歓喜の(?)声を上げて空中から突入し、イワシを捕えたオオミズナギドリを今度はオオトウゾクカモメが襲撃するという、何ともダイナミック光景が繰り広げられていました。コアホウドリも多く見られましたが、オオミズナギドリの群れと一緒に行動しているのはあまり見たことがなく、船頭さんも珍しいと仰っていました。
 その後もコシジロアジサシやカンムリウミスズメが立て続けに現れ、最後まで興奮覚めやらぬクルーズでした。コシジロアジサシは3羽(すべて成鳥)、カンムリウミスズメは6羽を記録しましたが、微妙な風波があって海上の小さい鳥は見付けづらかったため、カンムリウミスズメはもう少しいたかもしれません。
 防波堤のウ類やカモメ類を見ながら帰港し、岸壁に降り立ったのは既に11時半近く。その後は番屋で、ついさっき釣ったイカの刺身をはじめ、イワシのつみれ汁、シシャモの甘露煮など漁師料理を堪能しました。土壇場での日程変更にも関わらず参加いただいた皆様、長時間の海鳥観察に付き合って下さり、美味しい料理を食べさせてくれる船頭さんとご家族の皆様、どうもありがとうございました。

確認種:シノリガモ クロガモ コアホウドリ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ オオセグロカモメ コシジロアジサシ アジサシsp. オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ トウゾクカモメsp. カンムリウミスズメ ウトウ ハシブトガラス スズメ 海獣類:カマイルカ イシイルカ ネズミイルカ


コシジロアジサシ(成鳥)
3

(2015年8月8日   千嶋 淳)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿