鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミバト(その1) <em>Cepphus columba </em>1

2012-02-03 21:29:08 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウミバト 2011年3月11日 北海道根室市)


 極東にのみ分布するケイマフリと異なり、千島列島からアリューシャン列島、アラスカ西部、カリフォルニア等北太平洋に広く分布する。千島列島ではパラムシル島からウルップ島までの北・中部で多く繁殖し、旧ソ連の文献によると歯舞諸島でも普通に繁殖するというがこれは疑問。道東へは主に冬鳥として11月後半より渡来し、観察される数や頻度は2、3月に最も多く、流氷の南下と関連している可能性がある。納沙布岬や霧多布岬では以前から少数が見られていたが、冬の根室半島海上への遊覧船が就航して以降頻繁に観察され、10羽前後出現することもある。これは渡来数が増加したのではなく、近距離での観察とデジカメによる大量撮影が可能になったためだろう。実際、冬の海上に出て「今日はウミバトが出なかったな」と思っても、画像をチェックすると何羽も出て来ることがよくある。特定の海域に集中して分布するケイマフリと同所的に出現することが多く、個々の鳥の識別に十分な時間を割けないためである。



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 図鑑のイラストにあるような全身白く、雨覆の白斑が大きく目立つ個体はむしろ少なく、本個体のように白斑がほとんど認められない個体も普通。本個体では大雨覆、中雨覆の羽先のみが白く、2本の白線となるが近距離でないとわからず、陸上からの識別を困難にしている。一般的にはこのような個体を亜種ウミバト(旧称チシマウミバト)、白斑の大きな個体を亜種アリューシャンウミバトとするが、白斑の大きさやパターンには個体変異が大きく、中間的な形質を示すのも少なくない。更に、繁殖地では両タイプが混在しているという話もある。


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 このような全体的に黒みの強い個体は2、3月頃よく見るように思うが、夏羽への換羽が始まっているのかはわからない。ケイマフリでは換羽タイミングの個体差が非常に大きく、早い個体では2月下旬から夏羽になる(遅い時期の冬羽は若鳥を含んでいる可能性がある)。目の周囲は淡色だがケイマフリのように純白ではなく、また後方へ伸びない。ケイマフリは嘴基部の2ヵ所に白色部があるが、冬羽では不明瞭な場合もある。脚の赤色はケイマフリ同様、遊泳時にもよく目立つ。


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 背後からの見え方。後頚から背にかけてはケイマフリよりやや灰色がかり、画像では雨覆の2本の白線も確認できるが、遠くの海上に浮き沈みするのを望遠鏡で観察したり、絶えず揺れのある船上からこれらの特徴を見出すのはかなり難しい。


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 全長39~43cmとキンクロハジロと同大の中型ウミスズメ類であるが、波によって体の一部もしくは全体が隠れることも珍しくない。このような条件では近距離でも識別は厄介であり、そうした悪条件が重なって本種の記録を少なくしてきたと思われる。根室海峡を含む道東太平洋側で本種は珍鳥ではないが、もちろんケイマフリに比べるとはるかに少ない。漁港や岸近くから見る機会は少ないものの基本的には沿岸性と思われ、コウミスズメやエトロフウミスズメが卓越するような沖合で見たことはない。4月末から5月上旬までには概ね渡去するが、ユルリ、モユルリ島周辺や霧多布、襟裳岬では夏期にも1、2羽を見たことがある。


(2012年2月3日   千嶋 淳)


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