鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

波と共に走れ!

2007-09-16 23:53:36 | 水鳥(カモ・海鳥以外)
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All Photos by Chishima,J.
波打ち際を走るミユビシギの小群 以下すべて 2007年9月 北海道十勝地方海岸部)


 九月の海岸は賑々しい。砂浜にはアキアジ(鮭)釣りの竿が数mおきに林立し、一段高い場所では釣り人とその車やテント、バーベキュー等が並ぶ様を見ると、この時期、十勝で一番の盛り場は海岸なのではないかとさえ思えてくる。賑やかなのは人ばかりでない。オオセグロカモメとウミネコが大部分だったカモメ類は、セグロカモメの割合が増えてくる。南下真っ最中のシギ・チドリ類のうち、警戒心の強い大型種は人の少ない早朝や夕方、荒天時にしかいないが、小型・中型の種は人の入っていない、隙間のような箇所をうまいこと見つけ、そこで採餌に休息に勤しんでいる。
曇天の海岸
釣り人が撤収を始めると、残った餌でも撒いたのか、オオセグロカモメが集まって来た。
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 砂浜で出会う機会の多い小型・中型のシギ・チドリ類は、トウネンやミユビシギ、メダイチドリ、ダイゼン、キアシシギ等。このうちミユビシギやトウネンの採餌行動は、観察していて大変面白い。


トウネン(幼鳥)
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 彼らの餌となる甲殻類や多毛類等の小型無脊椎動物は、波打ち際の砂中、それも絶えず波に洗われている場所に多いようだ。波が引くと一斉に、今まさに波が引いた区画目指して一目散に駆けて行く。そこで嘴を砂に突き刺して、餌を探す。そうして餌を探しながら、徐々に海側に前進して行くが、じきに波が戻ってくる。波にさらわれたり、大事な羽毛を濡らしては大変なので、彼らは大慌てで陸側の、波が到達しない地点まで走ることになる。たまに、間に合わなくて飛んで避難する個体もいる。波が引きに転じると、またすかさず海へと駆けて行く。 この繰り返しなのだが、波に合わせて早足で行きつ戻りつしている姿は、特に小群で行動することの多いミユビシギではどこかユーモラスで、眺めていて飽きを感じさせない。


採餌中のミユビシギ(幼鳥)
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走れ!(ミユビシギ・幼鳥)
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 学生時代、友人たちと「ミユビシギゲーム」を試みたことがある。波打ち際を器用に走るミユビシギに触発され、自分らはどれだけあれに近付けるだろうと、棒切れを海に向かって投げ、波が引いた際にダッシュでそれを取りに行く遊戯だ。シギほど身軽でない上に濡れた砂地に足を取られ、大した距離まで進めない内に衣服を濡らしただけで、このゲームは終了した。


採餌中のトウネン(幼鳥)
おそらくハマトビムシの一種を捕食中。威勢よく飛び跳ねるので、何度も逃げられながら、苦労して食べていた。
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 忙しなく走り回っていたシギたちも、腹が満たされると波打ち際を離れ、漂着している流木の影や砂地の窪みで休息に入る。この時には意外なほど背景に溶け込み、すぐ目の前から走り出すか飛び出すまで、その存在に気付かないことが多い。


ミユビシギ(幼鳥)
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(2007年9月16日   千嶋 淳)


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