鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

エトロフウミスズメ(その3) <em>Aethia cristatella </em>3

2012-03-15 22:36:45 | 海鳥
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて エトロフウミスズメ 2012年2月23日 北海道厚岸郡浜中町)


 本種の飛翔時の特徴として、他のウミスズメ類と比べて個体間の距離がたいへん近く、個体が密集した群れは黒い塊のように見える点がある。この特徴は、調査や観察の際に個体数を過小評価しやすくする。冒頭写真の群れは何羽くらいに見えるだろうか?普通の鳥を見慣れた人には30羽くらいに思えるかもしれないが、実は55羽前後で、部分によって個体は何層かに重なる。一連の写真は別の群れ。

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 この小さく見える群れでも、約20羽を含んでいる。この程度の乏しい光量だと嘴、虹彩やその後方の白い羽毛は確認しづらいが、体、翼の上下面とも黒い点は十分特徴となる。気を付けなければならないのは、シラヒゲウミスズメだろう。全長が約7cm違うので、翼の拍動等飛び方に何らかの差が出るとは思うが、シラヒゲを実見したことないので言及できない。下尾筒はエトロフの中にも限りなく白に近く見える個体がいるので、注意が必要。エトロフやコウミスズメを見ていると、Aethia属が増加する2、3月には、少なくとも成鳥では顔の模様に多少は夏羽が出るのでないかと推察される。薄暮時等、更に光量の乏しい条件だとウミオウムも体下面の白色が見えず、紛らわしいかもしれない。


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 飛翔高度は低く、海面すれすれが多い。このように波頭の後ろに個体が隠れることもよくある。翼のみ見えている個体も含め、約35羽の群れ。


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 本種の飛翔群としては割と疎らな方で、群れは列状を成す。ただ、群れの前半はやはり塊状で、総数は約100羽。冬の北日本海上では、年や流氷の状態によりこうした群れをいくつも見ることができるが、航行中の船舶への警戒心は総じて強く、特にフェリーだとこのような見え方が多い。それでも18年前の2月下旬、初めての冬の北海道からの帰路、釧路航路の釧路~十勝沖で出会った数万羽の雲のような群れの衝撃は未だ忘れ難く、海鳥にのめり込むきっかけの一つともなったが、ここ10年以上千~万単位の大群を見れていないのは同航路が無くなったからなのか、飛来数が減少しているのか…。


(2012年3月15日   千嶋 淳)

*一連の写真は、NPO法人エトピリカ基金の調査での撮影。

本種に関する過去記事
エトロフウミスズメ(その1) Aethia cristatella 1
エトロフウミスズメ(その2) Aethia cristatella 2


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