鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

霧多布沖の海鳥①ハイイロヒレアシシギ(5月23日)

2011-12-24 16:39:05 | 海鳥
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ハイイロヒレアシシギ夏羽 2011年5月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第3号(2011年10月)掲載の「2011年霧多布沖合調査」を分割して掲載、写真を追加)

 去年の沿岸調査から範囲を更に拡大しての沖合調査。初回5月23日の天気は曇り、波も多少ある中での長時間調査で調査員も船酔いや波かぶりで苦労しましたが、沖合35km付近ではコアホウドリやフルマカモメが多数観察され、岸から見ているのとは違う「海鳥の世界」がそこにあることを実感しました。
 沖合でひときわ目を引いた鳥に、夏羽のハイイロヒレアシシギがありました。冬羽から付けられたであろう「ハイイロ」という名とは裏腹に、夏羽では全身鮮やかな赤褐色をしています。そして多くの鳥と異なり、メスの方が大きくてより鮮やかな羽色です。1羽のメスが複数のオスと交尾し、オスだけが抱卵、子育てに当たるためと考えられます。北極圏で繁殖し、熱帯、温帯の海域で越冬するため、春秋の渡り途中に日本近海を通過します。海上生活を主とし、近縁のアカエリヒレアシシギと比べて観察機会が著しく少ないことから珍しい種類とされますが、霧多布沖では春秋とも多数観察され、アカエリヒレアシシギより多い時もありました。海面に浮かぶ海藻や漂流物の近くをくるくる回りながら、細い嘴で餌をついばむ姿がよく見られました。長距離を渡る体力を養うのに必要なだけの恵みが、霧多布の海にはあるのでしょう。


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(2011年9月24日   千嶋 淳)

*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの


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