鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

エトロフウミスズメ(その2) <em>Aethia cristatella</em> 2

2012-03-12 21:45:22 | 海鳥
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて エトロフウミスズメ 2012年2月23日 北海道厚岸郡浜中町)


 全身黒色で寸詰まりの体型、英名や種小名の由来となった前方へカールする冠羽、白色の虹彩やそこから後方に伸びる細い白線、厚みのある嘴等特徴的な部分が多く、近縁の数種以外で識別に悩むことは少ない。ただ、距離や波間に見え隠れといった条件次第ではウトウのように見えることもある。ウトウの方がはるかに大型で、また厳冬期(12~2月)の道東にはいない。本種の全長は23~27cm、翼開長は40~50cmで、サイズ的にはウミスズメに近い。

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 ほとんどのウミスズメ類は白黒のコントラストがはっきりしていて、本種のように全身暗色なものはそれ自体が特徴となる。小型種は翼上面に白帯や白斑の出ない種類が多いが、コウミスズメやマダラウミスズメは肩羽に白色部があり、飛翔時によく目立つ。十分明るい順光下では、翼上面の色合いは本種とウミスズメを識別するのに有用だが、曇天や逆光下ではウミスズメの上面も黒みが強く見えることがある。


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 翼は上下面とも暗色。手前の個体は光が当たって、下初列風切がやや銀色みを帯びて見えるが、実際このように見えることは少ない。飛び立ちには他のウミスズメ類同様助走を必要とする。脚は青みを帯びた灰色。冬期には、ハヤブサ等に捕食されたと思われる本種の脚その他残骸を、海岸や港で見かけることがある。翼は体のほぼ中央に位置し、腹部の膨らみと合わせて体の後半部に重心があるような印象を作り出す。


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 本種のサイズで、背後から見た時に腹まで黒いのは本種くらいであろう。シラヒゲウミスズメは小さく、下尾筒は白いが、どのように見えるのか実見したことがないので私にはわからない。ウミオウムやコウミスズメも含め本属は、胸から腹にかけての膨らみが大きく、その分顔は小さく、額が切り立って見える。


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 海上の4羽。冠羽や白い虹彩とその後下方の白線は、海上でもよく目立つ。前頚下部から胸、腹にかけての体下面は、上面よりいくらか淡色な灰黒色。


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 白い虹彩と後方の白線は、飛翔時にも顕著。それ以外の全身は暗色で、体下面はやや淡色。稀に下尾筒が白っぽく見える個体もいるので、シラヒゲウミスズメとの識別には注意が必要。飛翔時に脚は短い尾羽を超え、そのため後端が尖った印象を受ける。


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 海上から飛び立つ小群。飛翔高度は低く、波間に見え隠れするのも普通。飛跡は直線的で、コウミスズメのような不安定感はなく、羽ばたきは速い。


(2012年3月12日   千嶋 淳)

*一連の写真は、NPO法人エトピリカ基金の調査での撮影。