石の花
十月の三日月に
飛び立つ雪虫たち
さわやかに冷たい夜を運んだのは
お前たちなのか
そこにある一房のぶどうと黄色いぼんぼり
遠い誕生の日に夢みた影を恋し
無数に飛散るけしの実を追って
風の光る野原をかけつづけ
秋は咲かない時
秋は黙って海を歩く時
記憶の流れた日に
滝に花咲き
石の花咲いて
消えていく
これは、わたしの叔母、石川律子の詩だ。
石の花
十月の三日月に
飛び立つ雪虫たち
さわやかに冷たい夜を運んだのは
お前たちなのか
そこにある一房のぶどうと黄色いぼんぼり
遠い誕生の日に夢みた影を恋し
無数に飛散るけしの実を追って
風の光る野原をかけつづけ
秋は咲かない時
秋は黙って海を歩く時
記憶の流れた日に
滝に花咲き
石の花咲いて
消えていく
これは、わたしの叔母、石川律子の詩だ。
刃物を研いでいると、なぜか、気分が落ちつく。
以前なんどか書いたが、わたしは、メタルが好きだ。金属が好きなのだ。とくに、鉄が好きだ。
この刃先が少し欠けた切りだし刀は、名古屋で孤独死した叔母、詩人・石川律子の遺品だ。
亡くなった叔母の書斎を整理して、ノートと生原稿以外、すべて捨てた。しかし、この切り出しだけは、捨てられないな、と、いまも持っている。
きっと、60年以上も大事に使ったような、ピンクの筆箱(ペンシルケース)に、綺麗に削った鉛筆2本と、ピンクの万年筆、そして、この切り出しと、ちびれた消しゴムがあった。
わが叔母、石川律子は、帯広高等女学校(帯広三条高校)の女学生のときから、82歳で、名古屋で孤独死するまで、ずっと詩を書いていた。生涯・詩人の女性だった。