tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

政府、学界は「価格転嫁」の合理性を示せ

2023年03月01日 16時20分24秒 | 経済
今春闘では、大手企業で集中回答日に先だって大幅賃上げをする企業がマスコミをにぎわせています。

一方、中小企業については、賃上げの必要は認めつつも経営実態から厳しい状況に置かれている企業が少なくない事が言われています。

日本商工会議所の小林会頭は、中小企業でも賃上げ野の機運は出ている。賃上げを期待しているが、そのためには取引価格の適正化が欠かせない。「大企業には下請け企業に圧力をかけて収益を伸ばすのではなく・・・」と注文しています。

この問題については、海外の資源価格やインフレ傾向で、輸入原材料価格が上がっても、製品納入先企業(親企業)からなかなか製品価格の値上げを認めてもらえないという、いわゆる「価格転嫁」の困難さがいつも指摘されるところです。

この問題が企業間の力関係で決まるのであれば、下請け中小企業の立場は明らかに不利という事になるでしょう。

確かに「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」なども業界別に細かく解り易く(?)用意されているようですが、日本商工会議所が今なおこの問題に言及しなければならないというのは、現場の役に十分立っていないという事でしょう。

輸入原材料が値上がりするという事は、経済学的には日本経済がそれだけマイナスを被るという事です。これは国民全体が負担するしかないのです。
他の条件が一定であれば、輸入価格上昇分は順繰りに転嫁してい行って、最終的には最終消費者が負担するしかないのです。

この原則を基本にして、中小企業など立場の弱い所に余計負担をさせる行為は、商業道徳に反する行為であることを明確にし、その上で、生産性向上努力でのコスト吸収があれば、その成果は生産性を向上した企業に帰属すべきなのです。

その企業の成果を親企業が納入価格を抑えて取り上げることは許されないという取引上の道徳律を日本産業全体として認識できるような行政の在り方が大切です。

そして、学界はその辺りの理論づけを確りと行い、政府にアドバイスし、広く、マスコミを通じ、解り易い常識として国民一般に周知する役割を果たしてほしいと思います。

円安の場合には、輸入品のコスト高分の価格転嫁は常識とし、一方輸出品の円安差益は企業努力は無縁のものですから、段階的な価格転嫁を通じて輸入品の差損を埋め合わせる準備と考えるべきでしょう。(「トヨタ、日鉄、鋼材値上げで合意」参照)

また、輸入品の価格上昇で、国産品が割安になる産業部門においては、国産品による輸入品代替の積極化が必要と考えるべきでしょう。(円高の場合は逆が起きます)

こうしたことは、経済(学)上の最も合理的な行動であるという裏付けの下に、その原則を多様な条件の中でも常に規範としてビジネスを行うという商取引における「合理性の維持」に説得力を持たせるという意味で、基本的なものではないかと思っています。

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