tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

米中首脳電話会談:これからも頻繁に

2021年09月10日 21時39分32秒 | 国際関係
マスコミの報道によれば、アメリカ時間9日夜、日本時間の今日の午前中にバイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談が行われたとのことです。

どちらからの意向かはわかりませんが、まずはアメリカからの声明発表という事ですから、アメリカからの働きかけの様な感じです。

バイデンさんは就任当初から米中関係は競争関係という事を闡明する形で発言をされていますが、これは極めて良心的な、世界にとって望ましい表現だと思うところです。

競争は互いに切磋琢磨するという関係ですから、アメリカも頑張るし、中国も頑張る、それによって対立でない前進する方向に両国関係を進めていくという事でしょう。

報道によれば、電話会談のポイントは、バイデンさんからは、
・利益の一致する分野に加えて、利益や価値観が異なる分野でも幅広く話し合った。
・アメリカとしては、インド太平洋の平和と安定、繁栄を重視していると伝えた。
・競争を衝突につなげないための両国の責任について意見を交換した。
といったことのようです。

一方、中国側の報道では、習近平さんからは、
・一時期のアメリカの政策から、中国は深刻な困難に直面している。
・中国とアメリカの協力は世界の利益で、対立は損害をもたらす。
・米中の違いを適切に管理することで、気候変動、コロナ対策、景気回復、国際社会の種々の問題について協力して推進が可能になる。
と連携を強調したとのことです。

現在の国際情勢、その中での米中関係を広く眺めれば、アメリカにしても、中国にしても、経済発展を犠牲にしてまで、自国のメンツを立てようとして対立、抗争、衝突といったことをするような、余裕は本来ないはずです。

現にアメリカは、トランプ政権の4年間に起因する国内の分断の問題があり、その融和の進捗状況が、政治問題だけではなく、経済のコロナ禍からの回復、更には鎬を削る対中国の先端技術をはじめとする各種の開発競争にも影響しかねえない状態にあるでしょう。

一方中国は、多民族の14億人の統一国家の維持に腐心しながら、経済発展によってそれを乗り切る必要は大きいでしょう。特に、新しく掲げた「共同富裕」のスローガンは大きな経済・財政負担を齎すことは容易に想像できます。

こうした中で軍拡競争をやり、多分使う事のないだろう飛行地や空母や弾道ミサイルやその兵器や防衛機器を年々積み上げたりするのは、いかに無駄かということを考えれば、出来れば避けたいというのが本音でしょう。

そういう事になるのは、相手はもっと軍拡をするのではないかという、双方の疑心暗鬼の結果でしょうから、お互いに、少しでも気心が通じれば、そした無駄は省くことが出来る可能性は大きくなります。

ならば、それに一番効果的なのは、常にコミュニケーションを怠らず、競争や対抗意識の中でも、多少の本音も言い合えるようになることがまずはすべての出発点になるのではないでしょうか。

その意味で、今回の米中電話会談は、今後の世界に平和と安定・繁栄へのきっかけになり得るものでしょう。出来得れば、これを適切な頻度で継続する事で、徐々にでも相互の共通利益、両国の人類社会の安定への責任ある態度につての共通理解が進むような方向への進展を心から願うところです。

世界一位と二位の経済大国のリーダーが、まさに地球的責任を果たせるかどうかがかかっている会談で、しかし考えてみればそれこそが両国それぞれにとっても最も利益になることではないでしょうか。

GDP:2021年4-6月期第二次速報

2021年09月09日 14時16分40秒 | 経済
昨日、4-6月期のGDPの第2次速報が内閣府から発表になりました。
GDPの成長率は対前期比(季節調整済み)で第一次速報の0.3%増(年率換算1.3%)から0.5%増(年率換算1.9%)の増に修正されました(いずれも実質値)

年率で1.9%の成長はコロナ禍の最中としてはまあ良い数字ですので、何が改定になって1.3%が1.9%になったのか中身をみてみたいと思います。

第一次速報では、対前期0.3%の増でしたが、その内訳は国内需要が、寄与率にして、0.6%増え、海外需要が(同)0.3%減った結果ですが、第二次速報では国内需要が(同)0.8%増えて海外需要は第一次速報と同じマイナス0.3分で合計0.5という事です。

内需が0.3ポイントのプラス改定になったわけですが、内需は、民間部門と、公的部門の合計で、民間部門が0.8%増えた内の0.6%分は民間部門で、0.2%分が公的部門です。

民間部門の0.6%の内、消費需要が0.5%分で、企業の設備投資が0.4%分です。ただし在庫が減っている(0.3%分)のでその分マイナスです。

この中で第一次速報と変わったのは、民間部門では、家計最終所費支出と企業設備投資が、それぞれ0.1%分ずつ増えたことです。

公的部門では政府最終消費支出が0.3%分増えていることで(政府の固定資本形成は0.1%分減って結局0.2%分)、これはコロな関係の医療費支出などが増えたことによるようです。

細かい事をいっぱい書きましたが、つまりは家計消費と企業の設備投資が第一次速報より改善したこと、それにコロナ関係の政府の支出が増えたという事です。

民間部門は、法人企業統計季報が9月1日に発表になりこれが予想外の伸びで、更に毎月発表される家計調査の数字も算入されたことによるのでしょう。

政府のコロナ関係の支出に関しては、第一次速報の伸び率0.5%が、第二次速報では1.3%と大幅な見込み違いだったようで、この辺りは政府の後追いの実態を反映したものでしょうか。

いずれにしても、家計消費と、企業投資が、何とか少しずつでも伸びていることが、経済成長を支えていることが現状でもGDP成長の救いになっているのかなという感じです。

この所、株価は随分上がっているようですが、これが本当に景気気を先見しているのかどうか、何となくいかがわしいと思いながら、少しは期待したいところです。

2021年7月の家計調査を見る

2021年09月08日 20時04分13秒 | 経済
2021年7月の家計調査を見る
昨日、標記の家計調査が総務省から発表になりました。
昨年来コロナに振り回されている家計の消費支出ですが、コロナ慣れというのでしょうか、この3月ごろから、何か多少とも積極的な動きが出て来ているように感じています。

対家庭ビジネスも種々変容を遂げ、テイクアウト、出前、自動販売、通信販売、宅配、出張販売、曳き売り、などなどと多様化しました。

消費者サイド(家計サイド)も、生活様式のコロナ適応もあって、次第に、低いなりに、部分的には積極的に、一般的には多少落ち着いたものになって来たようにも思われます。

2人以上所帯の1所帯当たりの「消費支出」の、今年に入っての実額の推移を見ますと
    
       1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月)
全所帯    27 25 31 30 28 26 27(単位:万円)
勤労者所帯  30 28 34 34 32 28 30 (同上)

すでにこのブログでも指摘しましたように、何か、今年の3月から家計の消費態度が積極化したようで、、これは経済成長率にも影響を与えています(4-6月GDP第二次速報)。そのご、新規感染者の増加、4度目の緊急事態宣言などの影響もあり、多少停滞。、7月は、ワクチン接種の進んだこともあるのでしょうかやや増えてきています。

このブログでの毎月の分析では、対前年同期の変化率(増減)を見て来ていますが、先月の分析で指摘しましたように。昨年の5月、6月、7月は、安倍政権の1人当たり10万円の給付金があって、時系列的な分析には適していません。それで今回は、今年に入っての実際の家計の消費支出の金額そのものを見てみたわけです(上表)。

8月には昨年の給付金の影響はほぼ消えると思いますが、今年は8月がデルタ株を中心に、新規感染者の著増、特に50歳代以下の若年・中年者、その後はさらには低年齢者という状態ですから、これからその影響がどうなるか見届ける必要があります。

9月には、感染の急増した若者のワクチン接種の要望が急速に高まり、デルタ株の怖ろしさも浸透して、盛り場の人流も減るといった状況ですので、これも消費支出に影響することは当然予想されます。

しかし一方では、コロナ禍の中での企業活動、消費行動の進化も否定できない所で、庶民の知恵が消費支出、ひいてはGDPを支えるといった傾向も進みつつあるようにも思えます。

現実はその複雑な波に翻弄される消費支出といった感じですが7月の勤労者所帯の平均消費性向を見ますと56.2%と昨年7月の51.4%を4.8ポイント上回りました。

これは可処分所得(手取り収入)が昨年比4.1%減った(昨年の10万円の給付金の影響あり)のに対して、消費支出は4.9%増えたためです。
付け加えますと、コロナも何もなかった一昨年の7月の勤労者所帯の平均消費性向は64.0%でした。

こんな状態で、コロナや給付金の荒波の影響を受けて、通常の傾向的な変化は大変読みにくい所ですが、8月以降の様子を月々見ながら、これからのコロナ終息への努力の中での消費支出の動きを見ながら、消費支出が日本経済を支える方向への転換を見ていきたいと思います。(因みに、ここまで回復すれば、GDPを数%高めることになるでしょう)

デジタル庁に期待する

2021年09月06日 23時01分18秒 | 政治
ついこの春、日本はワクチン後進国なのだという事を聞いて、残念だなあと思ったばかりですが、今度は日本はデジタル化で世界のベスト10にも入れないのだと聞いてまたまたがっかりです。

その日本でも、この度「デジタル庁」が発足して、大臣も事務方トップの監もきまり、スピードを上げて韓国やエストニアやフィンランドに追いつけ(追い越せ?)というっ事になるようです。

歳の割に新しもの好きのせいで、マイナンバーカードなども家内と共にお揃いで作ったりして来ているのですが、折角作ったのに殆ど使い道がありません。私は確定申告に使っていましたが、確定申告の必要もなくなると使い道がありません。

家内などはとっくに本人認証の期限が切れていて、この度マイナポイントを頂くために、市役所まで行って再登録、何度も失敗しながらやっとマイナポイント獲得に成功で「出来た出来た」と自慢していましたが、マイナンバーカードを国民に作らせながら、行政のデジタル化などほとんど進まないままに、もう何年たったのでしょうか。

この度芽出度くデジタル庁が出来ましたが、願わくば、本気で、デジタル化を、急いでやってください。物事をやるのに、徒に時間がかかることが最もコストパフォーマンスを悪くすることは周知です。

やってほしいことはいっぱいありますが2つだけ挙げておきましょう。
1つは、行政関係の事はみなマイナンバーカードでOKという状態の実現です。
健康保険、介護保険、運転免許、身障者手帳、納税証明、印鑑証明、などなど、マイナンバーカードさえ携行していれば、お役所でもどこでもすべてOK、出来ればネット上でOKといった状態に早くならないものでしょうか。
同時に、登録の変更など、いちいち市役所に足を運ばなくても、ネット上で可能にしてほしいものです。

もう一つは、そこまで行くのに、色々な届を書面やネットでやることになるかと思いますが、マイナポイントの取得や、コロナワクチン接種の予約の時のような、ネット上の手続きの分かりにくさに辟易することになるような事の無いよう、誰でも間違わずにスムーズに手続きができるシステムを準備して欲しいと思います。
「一発でできましたよ」というのが自慢になるようなプログラムはご免です。

最後に一言、将来、デジタル化は、一国の政治、社会、経済など、すべての分野をカバーするようなシステムに発展していくのでしょう。
始めるのは部分部分からでしょうが、将来の統合システムとこれから進める部分システムが十分な整合性を持つような進め方が大事ではないかと思います(やり直しはコスト高直結です)。

東京タワーの建設が始まった時「芝公園の辺りのあちこちに、変な斜めの鉄骨構造物を作っているが、あんなものを4つも作って何をしようとしているんだろう」などと言っていた覚えがありますが、結果は寸分の狂いもない東京タワーが完成しました。

建築とデジタルシステムの構築は、同じではないでしょう、しかし、共通の面もあるのではないでしょうか。 







混乱の中での日本の選択:近づく総選挙

2021年09月05日 21時09分37秒 | 政治
コロナで混乱、自民党内部の混乱という2つの混乱の中で政権が交代するかどうかという選挙が時間とともに近づいてくることになっています。

選挙ではいつも、保守と革新の対立といった「カッコイイ」主義・主張の違いによる対立の様な理解が伝統的ですが、本当の所はどうなのでしょう。

例えば、コロナ対策などは誰が考えても主義・主張の違いなどないはずで、人間対コロナの総力戦ですが、そのために国会を召集せよという野党、そんな必要はないと言いつつ対策は手遅ればかりの現政権というのが実態です。

政治は党利党略が大事で、国民のためにいかなる政策がいいのかなどという問題は、片隅に追いやられているのが実態で、これでは日本の社会や経済が立派に育つのは難しいかななどとつい考えてしまします。

主義・主張、思潮の面から言えば、自民党は保守で、野党は革新という事になっているのですが、今の世界の保守や革新の在り方を先入観なしに眺めてみれば、民主主義国の本当の問題は、端的に言ってしまえば)せいぜいアメリカ型と北欧型の範囲で、その範囲のどのあたりを国の在り方として選ぶかというところに落ち着くのでしょう。

それ以上右へ行けば右翼独裁(ファシズム)、左に行けば共産党一党独裁(コミュニズム)という事になり、そうなると、今度は民主主義対専制主義という問題になってしまうのです。民主主義国ではそれはないはずです。

それでも、トランプ政権や安倍・菅政権の下で、独裁者の雰囲気を感じた人は結構多いでしょう。国民への説明なしに物事が進んでいくのです。

しかし、民主主義を形だけ掲げて独裁政権を維持しようとしているロシアや最近の中国のような姿は、日本としては選ぶところではないでしょう。

日本にも共産党はありますが、名前は(郷愁で?)維持していますが、言動は一党独裁政権志向ではないようです。

こう考えてきますと、自民党は日本で一番幅広い(疑似独裁から健全保守まで)政治家の集団という事でしょうか、野党は大方、社会主義的民主主義的の中で、それぞれに狭い分野を自ら規定し、社会主義的民主主義を小分けにして住み分けているというように見えます。

野党が、なかなか政権を取れない、あるいは取っても長続きしない理由も、小分け主義で、大括り思考(小異を捨てて先ず大同に就く)が出来ないためのようにも思えます。
更には、この小分け主義も、思想的に狭量というより、党首などの個人的な色彩が強いという極めて人間的な面も垣間見えたりします。

今回などは特に、野党にも二大政党方式の思考が(度量でも術策でも)出来さえすれば、今の与党の惨敗は容易に実現する、かつてないようなチャンスだと思うのですが、当事者の方がたにしてみれば、大変難しい事のようです。
主義・主張での切り口は、詰まる所そんな感じに思われるのです。

ところで、もう一つ政策の切り口になっているのが、日本を再び戦争をする国にするのか、これからもずっと戦争をしない国でいるかという切り口です。

この切り口は、往々、保守=戦争をする国に戻ってもよい、革新=戦争をしない国にすべき、というように結びついて理解されているようですが、それは必ずしも合理的ではない「結びつけ方」のようにも思えます。

戦争をしたくない保守、戦争を(場合によっては)しても良い革新も決して無いというわけではないでしょう。(「改憲論議」とは必ずしも同じものではないでしょう。憲法は第9条だけではありません)

この点は、今後も日本国民みんなで、保守も革新も関係なく、十分考え、適切な結論を出していくべき問題でしょう。

2021年4-6月期の「法人企業統計季報」

2021年09月03日 22時37分21秒 | 経営
昨日から今日にかけての自民党の内部事情の大騒動には、我々庶民は、何か狐につままれたような感じです。

政治の世界は訳の分からないものだと思いますが、中に入ってみれば、それなりにきちんと理由があって、そうなっているのでしょう。

株価(日経平均)はニュースが出た途端、大幅に上がりました。これもそれなりの理由があるのでしょう。

多分、マスコミが、その内にいろいろ明らかにしてくれるでしょうから。それを見て納得できたらと思っています。

ところで本題ですが、政治の混乱とは裏腹に、民間企業は、それなりに頑張っている様子が見えるのが統計です。

9月1日、財務省から法人企業統計の季報、4-6月期分が発表になりました。
4回目の緊急事態宣言、デルタ株の本格化を迎える時期で大変ですが、企業業績、特に製造業は、逆境の中でも頑張っている様子がうかがえます。

端的に、企業業績を示す指標として売上高と経常利益の一昨年4-6月期、昨年4-6月期、今年の4-6月期の額を見てみました。(除金融保険業)

一昨年4-6月期は、いわば普通の年、昨年の4-6月期は新型コロナの第1回の緊急事態宣言下(4-5月)を含む期間、今年も緊急事態宣言下という事になります。

       一昨年4-6月  昨年4-6月  今年4-6月
売上高・全産業  344兆円   285兆円   314兆円
    製造業   97方円    78兆円    94兆円
   非製造業  248兆円   206兆円   220兆円

経常利益・全産業   24兆円   12兆円    24兆円
     製造業    8兆円    4兆円    10兆円
    非製造業   16兆円    8兆円    14兆円

残念はがら、コロナはパンデミックで、世界中影響を受けえいますから、売上高で見ますと今年の4-6月期は、一昨年の水準を回復していません。
全産業、製造業、非製造業のどれも一昨年よりマイナスですです。

しかし、経常利益で見ますと、全産業は一昨年レベルを回復、製造業は2兆円のプラス、非製造業は、矢張りコロナ禍の打撃は大きいです、2兆円のマイナスです。

製造業のプラスは減収増益という事で、売上げは減っても利益は伸びたという事で、コストダウンの成果と言えそうです。
円安傾向の影響もある程度はあるかもしれません。しかし原油高もありますし、未だ日本の製造業は健在だと言えるようです。

政治が確りしてくれると、もう少し良い数字が出るのかもしれませんが、民間部門は、一生懸命頑張っていると言えそうです。

習近平の中国は何処へ行く

2021年09月02日 14時15分07秒 | 政治
最近、習近平の中国が何となく心配になってきました。理由は、いろいろな面で独裁制を強めているように思われる事です。

長期独裁政権がまともな形であり続けることは極めて難しい(確率が低い)ことが歴史の多くの例で実証されているからです。

前々回書きました「改革開放」、「社会主義市場経済」から「共同富裕」への道は、理論的にも経験的にもまともなものだと思います。
しかし、それが民主主義社会で行われるのか、あるいは共産党一党独裁のもとで行われるかは、結果的に大きな違いを引き起こす可能性をはらんでいるでしょう。

問題は、世界第二の経済大国になり、いずれアメリカを追い越すと見られている中国が、地球社会の中で、どんな役割を果たそうとしているかですが、それが解っているのは習近平さんだけだという事です。

習近平さんが、経済発展を目指していることは当然でしょう。中国の国内経済の一層の進化を考えていることも、「共同富裕」の方針を打ち出したことからも感じられます。

こうした方向と、南シナ海の領有を主張し、国際仲裁裁判所の判断を紙屑だと言ったり、尖閣列島を自分のもの決めたり、香港の一国二制度を破棄したり、台湾の併合に執心を見せたりといった領土に関わる問題の認識との関連がどうにもよく解りません。

世界が脱石油に走っているのですから南シナ海はの領有は、コストが掛るだけのものになりかねませんし、香港は経済力が落ちるでしょうし、台湾を領有するより、その発展力を生かして経済交流を促進した方がプラスになると考えるのがまともでしょう。
なぜコストをかけてまで領有しようとするのでしょうか。

そのあたりの認識と関連するのでしょうか、習近平さんは、学校教育に習近平思想の導入を始めています。
中国が世界で最も素晴らしい国になるという夢や、一体一路で世界を中国を中心にした社会主義思想で発展させていくといったことを学校教育の十数年で徹底しようというのでしょうか。(なんとなく日本の過去の「八紘一宇」を連想してしまいます)

確かに習近平さんは、民主主義では世界は治まらない。中国流の社会主義でなければ不可能だという考えを述べています。

そして、恐らく、これには大変な時間とリーダーシップが必要だから、それは、この透徹した思想を確立している自分がやらなければならないと考えているのでしょう。
そのために、既に生涯主席という地位については認められることになっているし、主席3選を禁じるルールも変更して2023年には3選を果たさなければならないという事になるのでしょうか、そんなふうに思われます。

3選禁止というのは、今の中国が毛沢東の独裁化の弊害の経験から、定めたルールですが、それに従ったのでは、折角これまで構想してきた素晴らしい中国の将来像の実現が不可能になるといった考えを、習近平さんが持ってもおかしくはないでしょう。

こうした中国の将来へのアプローチを、これから習近平さんは、何とかして自分の手で、と考える気持ちも、解らないではありません。

2023年の2期目の終了までには、何かが見えてくるのかもしれません。習近平さんが自ら構想する目標の達成を、ソフトパワーで行うのか、あるいは、ハードパワーが必要と考えているのか、これは世界が最も危惧するところでしょう。

私が危惧するのは、歴史に鑑みれば、独裁者は、まず素晴らしい夢を掲げるのですが、独裁者の地位に居続けることで次第に判断が独善的になるという点です。
これは、いわゆる「権力は腐敗する」と軌を一にすることが多いようで、この
「独裁権力の長期化の罠」にはまらないことは極めて困難らしいという事です。

何処の国でも、まともな国は、リーダーの任期の制限を決めています。これこそ歴史から学んだ知恵の結晶でしょう。

習近平さんも、自分に限ってそんなことはありえないと思っているのでしょう。
しかし、多くの歴史が示しますように、本当の事は習近平さん自身にも解らないという事なのではないでしょうか。
実は、それが、一番恐れなければならない事ではないでしょうか。