tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

職務中心の経営と人間中心の経営:SDGsの視点から 2

2021年09月22日 16時03分18秒 | 経営
職務中心の経営と人間中心の経営:SDGsの視点から 2
まず指摘しなければならないのは、SDGsといった概念、更にその実践が必要になるというのは、人類社会がそれを必要としているからです。

最も大事なのは、人類をはじめ、生物連鎖としての地球環境が、短期的な目的のために破壊されることなく、持続可能な形で、今後も存在し続けてほしいという、まさに地球的な要望という事なのです。

こういう事を考えるのは人間だけで、その人間自身の持続可能性を破壊する行動を速やかに止めようというのがSDGsの基本理念です。

こうした視点から職務中心の経営と、人間中心の経営を検討することになります。

という事で、まず、職務中心の経営ですが、この形の経営の基本概念は企業の目的は「利益」であるという理解でしょう。
利益を極大にするために最も効率的な組織「職務の集合体」を設計し、それぞれの職務に最適な人材を採用するという思考回路になっているのです。

従って、企業は利益集団で、その主体は株主であるという事になり、株主配当の高さを経営成果の判断基準とし、それによって動く株価が時価総額最大になることがトップ企業の条件という事になるのでしょう。
特に最近は、当面の利益を重視し、株価上昇を重視する短期的経営が目立ちます。

一方人間中心の経営の場合には、企業は、経営者と従業員が人間集団の構成員で、顧客との関係が中心です。株主は、その人間集団が生産活動をするための資金を提供する立場で、市場金利を上回る安定配当を支払えば十分という第三者になります。

企業の目的はその企業で働くもの全員の雇用の安定と少しでも高い報酬・賃金を支払うための原資、そして利益は企業自身の安定存続を支える自己資本を蓄積するために必要という事で、人件費と利益の合計の「付加価値」を生み出すことという事になります。

一口で言えば、前者は、企業を「株主のために利益を生み出すシステム」と考え、後者は、企業で働く人の生活の安定を目的に、「社会(顧客)に役立つためのシステム」と考えているという事です。

職務中心の企業では、従業員の職務に必要な能力しか使いません。そして仕事がなくなれば解雇です。欧米で失業率が高いのはそのせいで、特に未熟練の若い人の失業は深刻です。

人間中心の企業では人間の多様な能力を引き出して使います。自動化などで仕事がなくなっても、企業内職種転換などにはきわめて柔軟です。人間は多様な能力を持っていますから適応は可能ですし、普段から一 專多能の人材を育成します。

その結果日本では企業の寿命が世界一長いのです。これには経営の神様ピーター・ドラッカーが驚嘆しています。

何故そうなるかと言えば、人間集団ですから、皆がいろいろな考えを企業という組織を通じて実現しようとし、現場の改善活動から、企業の業態(業種)転換まで(繊維会社が化学会社に、印刷会社がエレクトロニクス会社に、メーカーからシステム企業に変身したり)して従業員にとっても企業としても持続可能性を高めていくことが可能だからです。

もともとSDGsは人間と地球生態系の持続可能性を目指すものですから、多分これから、利益を目標とするシステムより、人間集団の方がアプローチしやすいということも次第にはっきりしてくるでしょう。

今後、日本としては、欧米流が正しいという「舶来崇拝」から脱却、グローバルな客観的視点に立ち、正確に判断し、日本的経営、経営理念を人類社会の将来のために、いかに生かすかを考え、実践していく必要があるのではないでしょうか。