tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

シャトレーゼの三喜経営

2021年09月28日 19時39分51秒 | 経営
先日、娘が遊びに来て、お土産にシャトレーゼのどら焼きやプリンなど、いくつか持ってきました。
 娘の言うには、「シャトレーゼが近くにあって、うちではよく買うんだけど、美味しくて安くて、材料は厳選してあるというのが自慢で、結構ボリュームもあるしいいのよ。お父さんはどちらかと言うと甘党だし、イイかなと思って買ってきました」と言います。

偶然というのは奇妙なもので、ついこの間まで「日経産業新聞」の「仕事人秘録」にシャトレーゼを一代で創りあげた斉藤寛氏の話が連載されていたので、面白く読んだところでした。

早速お茶を入れて食べましたが、まさに結構な品で、娘の言うとおりでした。
「今度は、何時もシャトレーゼでいいよ」などと冗談を言いながら家内と3人、しばらく楽しい屈託のない四方山話をしました。

ところで、そのシャトレーゼですが、日経産業新聞に連載の「仕事人秘録」によれば、社是は「三喜経営」だそうです。三者の喜ぶのが経営の目標なのです。
三喜の「三」は、「お客様」「取引先」「社員」という事です。この三者が喜べば、利益は後からついてくる、と言っています。

三菱グループの「諸事奉公」、伊藤忠(近江商人)の「三方よし」、その他日本の企業には、いろいろな社是社訓がありますが、その中には「世の中の役に立つ」とか「みんなが喜ぶ]という思想が必ずと言っていい程入っています。

日本人はこれが当然のように思っていますが、このブログで折に触れて取りあげているように、欧米ではそうではありません。
企業は、利益が目的で、それは企業の所有者である株主(資本家)に出来るだけ多くのリターン(配当、株価の上昇)をもたらすためという事になっています。

だからこそ資本主義というのでしょうが、見方を変えれば、「だからこそ」ピケティの言うように、資本主義は上手くいかない(格差拡大を齎し、サステイナブルでない)という事になるのでしょう。

この日本と欧米の差を象徴的に示すような話が前記の「仕事人秘録」には出てきます。
斉藤寛氏も、一度上場を考えたことがあるそうです。幹事会社もすべて決まって、明日は最終決断という夜、もう一度考えてみると、「わが社は三喜経営、その中に株主が入ってくる・・・」これでは三喜経営が成り立たなくなると考えざるを得なくなり、ご本人が書かれている「卓袱台返し」、上場取りやめにしたのだそうです。

このくだりは、まさに、日本的経営と、欧米型の株主中心経営の違いを現実の経営の中で考える「最善の教科書」だとつくづく思った次第です。

「三喜経営」でも「三方よし」でも、資本家はいません。資本は企業のものです。企業が自己資本を蓄えて社会ために役に立つ仕事をする、資本は自己資本として社会からの信用(暖簾)とともに、企業の財産として存在するのです。

これが日本的経営の特徴でしょう。今は欧米流の経営手法が流行りますが、日本の伝統的企業家精神は些か違うのです。
シャトレーゼは「三喜経営」の社是に則り、今や国際展開にも成功しているのです。

着実に努力を重ねて、長期に発展存続することを目指すという、本来の日本的経営の在り方を、企業の成長発展の実例として見せてもらったような思いがあったのが「日経産業新聞」連載の斉藤寛氏の「仕事人秘録」でした。