tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

習近平、鄧小平理論を持ち出す

2021年08月30日 17時45分07秒 | 文化社会
近ごろ、愛国心を強調して民心を引き締めている習近平さんが、鄧小平理論を持ち出して、国民の全体に豊かさを行き渡らせる方向(共同富裕)を打ち出したようです。

このブログでは、人間は、基本的に「豊かさ」を求めるもので、更に豊かさともに「快適さ」も求める段階に進んでいくという仮定を置いています。
SDGsなども、それを実現するための条件と考えることが出来るのではないでしょうか。

共産主義はもともと平等を大切にするために自由を制限するという考え方を持つものですが、鄧小平理論は、先に豊かになる人がいてもいいではないかと先ず考えます(改革解放)。
豊かな人が増えれば、その人達が、豊かでない人を助ければ、それで豊かさは均霑していく(共同富裕)。まず豊かな人が出てこないと、豊かさは生まれないといったものでしょう。

これは、共産主義が、平等を重視しすぎた結果、豊かさを追求する自由を働かせる余地が狭まり、経済そのものが発展しなくなってしまっている事への反省だったのでしょう。

この鄧小平理論は大当たりで、その後の中国の経済成長の目覚ましさは皆様ご承知の通りです。

しかし今ではその結果、中国内の貧富の格差は巨大になり、この格差社会化が社会の不安定をもたらす要因になって来ているという事でしょう。

そこで、鄧小平理論の第一段階の、豊かになれる人たちが大いに活躍し、中国経済を世界第二の経済大国になるまでに豊かにしたその成果を刈り取った習近平は、今度はその豊かさを豊かになっていない人達に均霑させようという第2段階(共同富裕)に進むことを考えているのでしょう。

考えてみれば、これは極めてまともなことで、西欧自由主義社会が(まさにピケティが言うように)格差拡大で行き詰まる過程で、社会保障という考え方が広まり、労働運動や社会主義運動などが生まれ、「揺り籠から墓場まで」といわれたイギリスの社会保障制度や、北欧各国の福祉国家が生まれるプロセスと同一のものでしょう。

ただ違うのは、西欧型のそうした経済・社会政策の進化は、民主主義という政治形態のもとで、政権交代を繰りかえしながら進化していったものです。
しかし、中国の場合は、共産党一党独裁ですから、指導者が、そう考えるだけでその進化は可能になります。

その点は簡単で大変やり易いわけで、国会での論争や、選挙戦などは必要なく、指導者の気持ちひとつで、極めて効率的に出来るのでしょう。
しかも、すでにいろいろな国の歴史が先例をいっぱい作ってくれていますから、行先はよく解っているという「地図完備」で「ナビつき」の進路を進めばいいのです。

そうした意味で大成功を収めた例は共産主義国家ではありませんが、シンガポールでしょう。的確に方向を見定め抜群の効率で進化を進め、今や1人当たり国民総所得では日本の1.4倍です。

中国の場合は国が巨大なのと、共産党一党独裁の形で覇権国家を目指すという意識を習近平さんが個人的以お持ちのようですから、そのあたりが上述の好条件をいかに利用し、その先にさらに何を目標にするかが、外からは読めないという点があります。

豊かさの配分の仕方についても、税制、社会保障政策による再配分に加えて、寄付社会の構想もあると聞きますが、習近平さんの肚の内は奈辺にあるのでしょう。

高齢化する人口14億人の国の社会保障問題などというと気が遠くなりそうですが、中国が良い国になってくれることを願うばかりです。

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