tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

春闘の賃上げ理論を整理する

2022年01月29日 14時07分29秒 | 労働問題

労使の春闘のキャンペーンも始まるようです。

今年は、連合の例年の賃上げ要求に対して、経団連も賃上げの必要性は認めるという立場ですから、それに岸田総理の3%賃上げ発言のおまけもついて、みんなが賃上げに前向きですから、賃金水準も少しは上がるでしょう。

ところで、何故そんな雰囲気になったかですが、一番大きいのは経済の閉塞感でしょう。企業にしても売上が伸びなければどうにもなりませんし、コロナ禍で消費不振が経済の沈滞を齎すことは企業としても実感したところでしょう。

それともう一つは、ガソリン値上げに刺激されたのか、製品値上げを発表する企業が急に多くなり、インフレが来るという雰囲気が強くなり、賃上げをしなければというのが、広く世論のようになって来ていることでしょう。

こうした雰囲気というのは確かに経済実態を反映しているものだと思いますし、近年外国は結構インフレ傾向の国が多く、日本の物価は随分割安という感覚も一般化しているようです。

そういう意味では、今年の春闘では、多少の賃上げ実現という可能性が大ですが、心配なのは、労使ともに、何故賃上げが望ましいのか、何を基準に賃上げの幅を決めるかといった点についての整理がきちんとできていない事です。

日本の労使は戦後、種々の経験、特に石油危機の経験、更には円高の苦渋から、健全な経済を維持するために必要な賃上げと、経済発展を阻害する賃上げとを確り見分けて、状況に適応した適切で健全な賃上げについての議論を重ねてきました。

所が長期不況で春闘が賃上げにその役割を果たすことが出来なかった期間が長すぎ、当時の議論は、労使双方の中にも、政府官僚の中にも、多分アカデミアの中にもあまり残っていないのではないでしょうか。

しかし、真面目で頭もよく勘もいい日本の労使です、環境が変わっても諸外国に多く見られるような無理や失敗は多分やらないだろうと思っているところです。

そんな意味で、今年の春闘の結果が、日本経済の長い低迷からの脱出の何らかのキッカケになればと期待しつつ春闘の経過を見守っていきたいと思っています。

諸外国の賃金交渉は、日本の様な年中行事ではなく、複数年の協約が切れたときとか、経済に変動があった時(多くはインフレ)とかに行われ、産業別などの交渉が多いのですが、日本の場合は違います。

毎年春に行われ、春闘は俳句の季語にもなっていて、労使交渉は、殆どが個別の企業内でその企業の労使によって行われます。交渉の舞台(主体)は日本中の個別企業です。

交渉の結果は、連合や経団連に組織化された企業の集計という形で発表され、最終的には厚労省の調査によって、正式な数字が出されます。

という事は、それぞれの個別企業の労使が何を基準にして賃上げが為されるべきかを理解していないと結果は誤ったものになりかねないのです。

その意味で、連合、経団連のいわゆる「春闘白書」は教科書であり、春闘の賃上げのリーダー企業の労使の議論は重要で、多くの企業はそこから学び、自社の実態を勘案して最終的な妥結に至るという事になるのです。

このブログでも、何かのお役になるようにと、なるべく早く、賃上げの基準になるもの、ならないものを纏めて整理しておきたいと思っています。

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