tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

決断の日銀、逡巡のFRB、日本の選択は?

2024年08月01日 13時46分51秒 | 経済

このところ日米の金利問題ばかり書いていますが、日米として、いずれやらなければならに問題についての今後を考えれば、整理しておかなければならない事だと考えているからです。   

いずれ踏み切らなければならない異次元緩和からの明確な脱出に日銀は舵を切りました。

FRBは、ヨーロッパの動きを横目に政策金利の引き下げには動きませんでした。しかしパウエル議長の発言では、9月の利下げを示唆することは忘れず、アメリカのマネーマーケットでは、まずは株価上昇、そして日米金利差の縮小を予測する円高方向への動きにつながったようです。

世界のマネー・ゲーマーたちはこれをビジネスチャンスに生かそうと手ぐすね引いて待っていたのでしょう。

その中で日銀は、今回、思い切って「まだ」を「もう」にしたようです。もちろんすでに0.1%を許容していた短期金利を0.25%に引き上げたという、いわば瀬踏み的なもので,実体経済に格別に大きな対応を強いるようなものではありません。

植田総裁の記者会見でも、そのあたりの配慮は十分に読み取れるところでしょう。それでも結果は円レート149円台、日経平均は今朝から1000円を越える大巾下げです。

マネーマーケットは、その習性から値幅の動きを大きくしビジネスチャンスの拡大を狙うのですが、それに引き換え、実体経済の動きは、これからの方向感覚が見え、新たな動きの芽が出始めるかどうかにかかっています。

日本では、これまで円安が進んで消費者物価が上がり、実質賃金の低下が続くと心配されていました。149円台という円高がどこで落ち着くかにもよりますが、その円高で消費者物価の上昇が縮小、実質賃金の下落が止まるかどうか、それが消費需要の拡大、経済成長の加速するという連鎖が望まれるところです。

植田総裁は、日銀の持つ多様な資料の分析では、その方向に進むことが見えてきているといった説明をされましたが、多分まだ時間がかかるでしょう。

その前に政府のエネルギー関連の補助金で人為的に引き下げられる公共料金の消費者物価指数引下げへの反映(一時的なもの)が先に現れてきそうです。

量的緩和の是正、日銀のB/S調整、国債買い入れの減額も、2年先に半減でしょうか、実体経済に過度な影響を与えないように配慮する姿勢は十分理解できるところです。

その意味で、方向は明確に、改革は穏やかにという金融政策に望まれるところへの慎重な配慮にはさすがと思われるものがあります。

今日の株価暴落をもたらした円高にしても、「日銀短観」の調査企業の平均では年度下半期の円レートは141円と予測され、現実に今回の円安が始まる前の円レートは109円だったと記憶します。マネーゲームに翻弄されない経営が必要です。

最後の一つ言いたいのは、金融の役割は重要ですが、金融に出来ない事もあるという事です。生産活動そのものもそうですが、賃金決定もそうなのです。

金融政策で賃上げし易い環境を作ることはできますが、賃上げをすることは出来ません。

日銀が金融の正常化に踏み出した今、賃金決定の正常化に向かって、「日本の労使」が動きだすことが、日本経済の残された課題になってきたようです。