tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

春闘賃上げ率・賃金水準上昇率と日本経済

2024年08月09日 14時38分27秒 | 経済

日銀の政策金利引き上げでマネーゲーマーたちはそれぞれの反応を見せ、円レートも、日経平均も予想以上の乱高下です。やっと、昨日、今日になって何とか落ち着いてきたようですが、迷惑なものです。

日銀の植田総裁も、マネーゲーマーに掻き回されないように慎重に発言されていましたが、次の利上げにも触れたことで「日銀タカ派に」などと書かれ、副総裁が出て打ち消すことでバランスを取ったようです。経緯は解りませんが、絶妙のコンビネーションプレーかもしれません。

9月にアメリカのFRBが金利引き下げをするかは解りませんが、アメリカにはアメリカの事情があるでしょうから、マネーゲームはアメリカに任せて、日本のやるべきことは、民間の消費需要を健全に拡大させて、日本経済自体の成長経済への回復に注力することでしょう。

という事で、もう一度、消費需要の源泉である賃金の動きについて、ここ数年の数字を見てみました。

      資料:厚労省資料、春闘、毎勤統計

春闘賃上げ率は、企業のそれぞれの従業員の所定内賃金が4月にどれだけ上がるかという数字の平均ですから定期昇給も入っています。平均賃金は、賃金の高い人が定年で辞めて、賃金の安い新入社員が入ってきた結果の平均賃金水準ですから定期昇給分は通常相殺されてしまいます。

という事で春闘賃上げ率に比べると、平均賃金(毎月勤労統計の名目賃金指数)の上昇率は低くなります。もちろん消費需要の水準に影響するのは平均賃金の方ですから、民間消費水準との関係では此方が重要です。

上図で見ますと、所定内賃金の上昇は、春闘賃上げ率の半分程度です、ただし、所定内賃金のほかに、残業代も在りますし、ボーナスもあります。

今年の6月に25か月続いた実質賃金の低下がストップしたのは、ボーナスが大幅に伸びたからでした。

もう一つ、重要な資料があります。家計調査です。このところ家計調査の2人以上勤労者世帯の家計収入はずっと毎月勤労統計の賃金指数の上昇率を下回っていましたが、この5月、6月と大幅上昇に転換しているのです。

6月で見ますと、対前年比で、世帯全体の実収入6.5%世帯主定期収入6.2%、配偶者収入9.8%といった増加です。(家計調査は小・零細企業従業員も含みます)

毎月勤労統計と家計調査の平均賃金上昇率の逆転の理由は不明ですが、賃金の分布構造などに何か変化があるような気もしないでもありません。

上のグラフに見るように春闘賃上げ率とともに平均賃金が高まり、それが家計消費に反映されれば(これはまだ確認されませんが)日本経済の姿も多少は変わって来るのではないかと考えられます。

こうした動きは円レートや日経平均といったマネーの世界とは違う実体経済(本当の経済)の動きです。実体経済が確りすれば、マネー経済はいずれそれにサヤ寄せするのです。

日本の実体経済の変化は上のグラフの上昇率が順調に伸びていくことから始まるのではないかと思っています。