tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

<月曜随想>経済思想と実体経済の関係は大切

2024年08月19日 15時32分35秒 | 経済

経済思想というのは。もともと人間がより豊かな生活をしたいと考えることで生まれてきたものでしょう。

農業や漁業中心の時代は、お日様と水が豊かさの源でしたから、そういう土地を持つことが経済思想だったのでしょう。そういう土地を探して移住したり、戦争して手に入れたりという事が経済思想だったのでしょう。商業資本の時代には、地域的な価格差を発見して交易をすることが豊かさを生む手段になりました。大航海時代は東洋と西洋の価格差を利益の元にしたのでしょうし、日本でも紀伊国屋文左衛門のミカン船の伝説があります。

産業革命が起きてからは、技術革新が利益を生むことが解りましたので、産業資本の蓄積が豊かさ源泉となり、資本主義が一般的になりました。

こうした見方だけですと、資本家。企業家はいても、経済の中で生活する一般の人々は出てきません。これでは社会全体の豊かさには繋がらないようです。

元々、資本主義、企業の会計基準というのは利益を算出するために出来上がっているもので、「売上-経費=利益」と「利益」が解ればいいという形です。

経済活動をやるのは、昔は個人、今は企業という事になっていますから、経済思想も、利益が中心という事だったのでしょう。

大航海時代に船を東洋へ出すのは冒険(アドベンチャー)です。成功すれば巨大な利益で、目的は利益です。産業資本になっても、そして今日でも「起業」はベンチャーです。目的は利益です。

一般の人々(労働者)の生活を豊かにする人件費は、原材料費などと一緒で、直接原価の一部です。

こうした経済思想ですと、労働者を搾取の対象、社会は不平等という意識から社会主義や共産主義という社会思想が生まれます。そして、で経済思想と社会思想は一体化され共産主義国(労働者独裁)や福祉国家など労働者重視の思想が生まれます。

こうして経済思想の中で、生産活動の2大要素は「資本と労働」の認識が生まれ、このブログでは産業活動は「人間が資本を使って行う」としています。

第二次大戦関連で、国の経済力を測る方法論として「国民所得の計算」が開発され次第に進化し、「国民経済計算システム」が一般化しました 。

このシステムでは国全体の生産力:GDPを測るのですが、その要素は「人件費と利益」で両者の合計が「付加価値」と名付けられて、これが「国力」だという事になりました。(国民が付加価値を生産し、分配し、消費する「3面等価」)。

経済は人件費と利益でできている。その両方がうまく合成されて、それが国力を担っている。そして、その在り方いかんで、年々生産する付加価値(GDP)は増加する、つまり経済は成長するという事になるのです。

つまり労働と資本、」その組み合わせ、活用の仕方によって、経済は成長する、その国に住む人間はより豊かにになるのです。

この国民経済計算システムが経済思想の骨格となって、今の経済思想は一応の完成を見たのでしょう。

ところがそこにまた新しい経済思想が出てきました。それは「マネー資本主義」です。金融工学というシステムを開発して、マネーを移動させる、つまりマネーの操作によって、購買力を移動させるという活動です。

これは本来豊かさの創造には関係のない机上の活動(ゲーム)ですが、マネーの移動は購買力の移動ですから、机上の活動の結果で、実体経済の購買力が移動することになります。

これは将来的にも経済思想とはならないと思いますが、購買力の移動は富の移動ですから、実体経済の成果を歪めます。

つまり、豊かさの再配分の役割を持ちます。豊かさの再配分は、政府の、税・社会保障制度によるのが近代国家の原則ですが、金融工学による豊かさの再配分を、マネー資本主義と名付けて経済思想の中に不用意に組み込まないようにした方がいいように思っています。