tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2024年6月平均消費性向の低下をどう見る

2024年08月06日 13時38分29秒 | 経済

今日は広島の原爆忌です。平和公園の石に刻まれた「過ちは繰り返しませんから」という約束はまだ果たされていません。

2024年6月分の家計調査が今日発表になりました。2人以上の勤労者世帯の平均消費性向を見ました。昨年6月の41.1%から、36.9%へと4.2ポイントの大幅低下です。

このブログでは、日本経済の不振の最大の原因は、個人消費の不振にあるのだから、まずは消費性向を上げて消費を増やし景気を良くすれば、賃上げも活気づいて個人消費の活発化による景気の回復に役立つという視点から、消費性性向を上げようと言ってきました。

家計調査の平均消費性向を見ますと2022年は割合高い月が続き、2022年の経済成長率は実質1.5%でまずますでしたが23年、24年と1%を切るか切らないかといった事になりそうです。

一方、昨年からは賃金を上げなければ消費は増えないという意見が強くなって今年の賃上げは33年ぶりの高さになりました。

これで消費が増えるだろうと見ていましたが、賃金が上がった今年の5月、6月と今度は平均消費性向が下がっているのです。

平均消費性向の推移(二人以上勤労者世帯、%)

                 資料:総務省「家計調査」  

折角賃金が増えても、消費性向が低くなったのでは消費は増えません。一体どうなっているのだろうかというのが当面する問題です。

二人以上全世帯の消費支出の動向を実質対前年同月増加率で見ますと2022は前年より3%前後高い月が多く23年は前年より2%ほど低い月が多く、今年に入ってゼロ近傍に浮上です。これではあまり景気押上げ要因にはなりません。

しかしその中の勤労者世帯だけを見ますと5月、6月と名目では6%前後、消費者物価上昇を除いた実収入で5月3.0%、6月3.1%の上昇です。

6月の家計収入の中身を見ますと名目では世帯主収入はボーナスの増加もあり7%増、配偶者の収入が9.8%増で、平均消費性向の計算の分母になる可処分所得は名目で12.1%、実質で8.5%も増えています。 

所が消費支出の伸びは名目でわずか0.6%(実質では2.6%のマイナス)です。その結果の平均消費性向の低下なのです。

今年の春闘の賃上げ率が5%を超えたといっても平均賃金の上昇は2~3%でしょう。個人の賃金と、家計の収入は違いますが、勤労者世帯で見る限り、5月以降の収入の増加は顕著です、その割に、消費支出を増やしていないというのは、この世帯収入の増加が今後も安定して続くか見通しが難しいという事でしょうか。

ならば、企業に要請されるのは、従業員に雇用の安定、賃金上昇の継続といった安心感を持たせることでしょう。労働組合のナショナルセンターである連合の役割も大きいでしょう。

折しも株の暴落が起きましたが、日本の実体経済は、労使が頑張ればこれからはよくなるという環境の中にあるといえるでしょう。

家計収入の安定した増加が続き、家計が安心して消費に向かうという状態で、平均消費性向が上昇してきたとき、日本経済は長く続いた消費不況から本当に脱出という事になるのでしょう。