国際収支というのは、色々な項目から成り立っています。
基本は貿易収支でしょうが、貿易収支の中にもモノの貿易収支とサービスの貿易収支があります。
以前は、この両者を分けて統計がとられていましたが、最近は纏めて貿易収支となったいます。
アメリカは物の貿易収支は赤字でもサービスの貿易収支は常に黒字という状態でした。
次に第一次所得収支というのがあります。アメリカは海外で沢山仕事をしています。確かGMの自動車の生産台数は、中国が最も多かったのではないかと思います。
そうした海外進出企業からの配当や利子収入が第一次所得収支の収入の部で、その逆のアメリカに来ている外国企業への配当や利子に支払いが支出の部で、アメリカの場合、これは常に黒字です。因みに日本も第一次所得収支は毎年大幅黒字です。
次に第二次所得収支というのがあって、出稼ぎに来ている外国人への給与や、外国への援助などですから、アメリカも日本もだいたい赤字です。アメリカではかなり大きな持ち出しのようです。
以上の3つの収支の合計が「経常収支」という事になっており、この経常収支が、その国の、経済活動による収入と支出の基本的なバランスを示します。
アメリカは、貿易収支の赤字が多過ぎるので、第一次所得収支が黒字でも結局経常収支は万年赤字という状態です。
日本は、最近は原油など海外資源の高騰もあり、貿易収支も時々赤字になったりしますが、ほぼトントンで、第一次所得収支の分が安定して黒字ですから、万年黒字という状態です。
ところで、赤字国は赤字の分はどうするかです。どこからか借りないと資金繰りがつかなくなります。
アメリカの場合は毎年経常収支が赤字ですから結局どこからかファイナンスして来ているという事になります。
国際収支の構成項目にはもう2つあって、資本移転等収支と金融収支です。
資本移転等収支は、外国の固定資産取得や処分に関わるもので、金融収支は国際間の証券、債券、デリバティブなどへの投資の収支です。
アメリカの場合は、基本的に経常収支の赤字を、この金融収支の黒字(資金流入)によってファイナンスするという事をずっと続けてきているというのが実態です。
つまりは、外国からの借金で資金繰りをつないでいるという事なのですが、普通の国では出来ないことが、アメリカだから可能になるということがあります。
理由は明らかで、今、アメリカは基軸通貨国です。ドルは世界の貨幣価値の標準(基準)と世界が認識しているのです。
考えてみれば、日本が大幅黒字を出した時、余裕資金をどこに預けようかということになります。いろいろ考えて、政府も金融機関もお金持ちの会社や個人も結局、アメリカの国債などの債券・証券を買うのが一番便利で安全かなという結論になるのでしょう。
世界の国の貿易収支の合計はゼロサムで、赤字国があれば必ず黒字国があります。黒字国は、余った資金の運用先としてドル債を選ぶことが多いでしょう。
かつては日本が米国債の最大の保有国でしたが、今は中国のようです。
政治とはまた違った経済の絡まり合いの中で、アメリカは赤字を減らそうと思っても、それが巧く行かなくても、現状で何とかなってしまうというのでしょうか。
しかし、いつまでもそれでいいという訳にも行かないのではないでしょうか。先行きが心配という意見もいろいろあるようです。