tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

中国的パラドックスは成立するのか

2022年02月12日 22時04分18秒 | 文化社会
皆さんご存知のように、中国は「社会主義市場経済」の国という事になっています。

鄧小平の改革開放路線以前は、経済も政治も共産主義体制でしたが、その中で経済の部分は市場経済にしようという事になって、中国経済は大発展し、アメリカを追い越す世界一の経済大国になるのではないかと言われるようになりました。

しかし、一つの国が経済は自由経済(市場経済)で政治は共産主義という自由と平等のパラドックスでうまく成立するのでしょうかという疑問は依然残っています。

共産主義国というのは、もともと自由経済だと資本家が労働者を搾取して不平等な社会になるので、社会「正」義を求める人々が社会主義の旗の下に集まり、平等な社会を目指して革命を起こしたりして、資本家のいない人民だけの皆が平等な国(社会)を作ろうと頑張って作った国でしょう。

生産手段は資本家ではなく人民が共有しみんなで出資、みんなで生産、みんなで分配
が素晴らしいと言って始めてみましたが、なかなか上手く行きません。
そして結局は、共産党という党がルールを決めて人民を指導し、上手く行くようにと考えたのです。

しかし、そこは人間のやることです、理想通りにはいかず、共産党組織が生産手段を含めて全ての権限を握る独裁組織になって共産党幹部が特権階級として君臨することになってしまったというのが歴史の示すところです。

こうなると人民は、共産党組織のために働き、貧しくても平等な生活を保障されるだけになってしまい、働く意欲もなくなり、国としては経済発展も思うに任せなくなるのは当然でしょう。

鄧小平さんはそこに気が付いたのでしょう。土地(中国で地上権)をはじめ生産手段の私有を認め、私的な資産蓄積も認めるという自由経済の原則を共産主義の中に持ち込んだのです。
それ以来の中国の経済発展はご承知の通りです。まさに自由経済の効果は大きいですね。

経済発展は進み、巨大な資産家も生まれ共産主義の理想にした平等は失われました。いま中国は巨大な格差社会でしょう。

ところで、格差拡大を許容して、政治は共産主義というのは共産主義の自己矛盾、パラドックスに他なりません。はっきり言ってしまえば、資本主義自由経済を独裁的な為政者の意向に従ってコントロールするという事になってしまうのではないでしょうか。

それを可能にするのが共産党一党独裁という制度でしょうが、それでは、共産党という名前は形だけで、中身は、単に独裁システムで自由主義経済を適宜コントロールするということに他ならないでしょう。

戦前の日本は、資本主義自由経済でしたが、軍部の独裁システムで、軍部の都合のいいようにそれを動かしていたのでしょうし、現在のロシアの場合には、民主主義自由経済を、かつてのKGBのノーハウを生かしたプーチン政権の独裁システムでコントロールしているという事でしょう。

そして中国は、経済活動の市場経済化で中身の空(カラ)になった共産主義の残った殻(一党独裁という政治システム)で、大きく成長した市場経済を都合よくコントロールする独裁システムという事になるのでしょう。

こう見てきますと、経済システムは自由主義市場経済が良い事は明らかで、どの国でもそれで決まりですが、政治システムは独裁主義が良いという国が、時々、所々にあるという事でしょう。
それが、かつての日本の軍部にも、プーチン政権にも習近平体制にも、共通の考え方であり、国の状況という事になります。

結局は、経済は自由主義市場経済が良いとうのは共通なのですが、政治体制が独裁政権(バイデンさんは専制主義と言っています)か、民主主義政権かという違いになって、「やっぱり本質は民主主義か独裁主義かという違いだけだったのか」という事になるようです。

どちらが良いかは疾うに解っているはずなのですが、問題は、独裁者にはそれが解っていないという事でしょう。