tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

あらゆる手段で行き過ぎた円高阻止を

2016年08月18日 12時39分01秒 | 経済
あらゆる手段で行き過ぎた円高阻止を
 アメリカの利上げが早まるといった観測が後退し、当面利上げはなさそうだという論議になって円高が進み、1ドル=100円とび台になっています。
 当然株は下がるはずですが、あまり下がりません。日銀がETFを買うだろうという観測で下げ渋っているのだという解説です。

 政府・日銀の経済政策はそんな事を目指しているのでしょうか。日本経済は株価でもっているわけではありませんから、日銀の資金力で株価の下支えしたところで、それは株式市場だけの問題です。日本経済の実体の推移には関係ありません。日本経済の実体は前々回取り上げました4-6月GDP速報で見たとおりです。

 アメリカの連銀の誰かが「利上げは早まる」といったり「遅れそうだ」と言ったりするたびに為替が動いて、投機家には都合がいいかもしれませんが、実体経済に関わる人たちにはこんな迷惑な話はありません。

 日本にとって最大の問題は、そんなこんなと言っているうちに、1ドル=120円はすでに昔語りになり、1ドル=100円、つまり20円幅の円高になってきていることです。
 輸出関連主要企業は、経営計画の中で設定していた今年度の為替レートの予想を大幅に円高に見直し、それとわせて、その影響による予想収益の下方修正をしています。

 安倍さんが胸を張ったアベノミクス第1弾の円安政策の半分は消えてしまっているのが現状です。
 税収増への自信も、企業に設備投資や賃上げを奨励したのも、考えてみれば、「アベノミクスで1ドル=120円にしてやったのだから」ということだったのでしょう。
 政府だけ舞い上がっていて、民間労使はずっと慎重だったのですが、民間の見方のほうがやっぱり正解だったということでしょうか。

 アナリストとかストラレジストとかいう為替の専門家と称する人たちの解説では、100円というのは印象的にもケイ線上もクリティカルなラインで、その一線を越えるとさらに円高になるなどという解説などもあります。

 なるかならないかをはっきり言う人はいないようですが、アメリカの為替戦略、投機筋のアメリカの動きに注目する度合いから見れば、アメリカ経済指標が改善しなければ、可能性は高いでしょう。
 もともとアメリカの回復は、経常赤字を抱えたままのものですから、常に 制約条件のもとにあります。

 今のアメリカの様子では、バイデンさん(前回参照)だけでなく、民主、共和両党の主張でも、そんなに日本に気を使ってくれそうにありません。

 政府、日銀にどれだけの覚悟と能力があるか知りませんが、掲げられているすべての政策は「 正常な為替レートの上に載っている」ということを確りと認識し、行き過ぎた円高の阻止に「先ず」真剣に努力すべきでしょう。