tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

中国の海洋進出の背景

2016年08月11日 13時50分01秒 | 国際関係
中国の海洋進出の背景
 この所、中国艦船の尖閣諸島周辺での活動が盛んで、日本政府は連日抗議を続けています。もともと、尖閣諸島の領有問題を中国が主張し始めたのは、尖閣地域に石油資源があるといわれた時期と一致するといわれています。

 東シナ海の日中中間線の中国側での石油掘削事業も活発化し、リグを増設、一部のリグにレーダーが設置(軍事目的?)されるという問題も起きています。
 南沙諸島の場合はすでに国際仲裁裁判所の裁定が示されていますが、中国は無視を続けています。これも巨大なガス田の存在があってのことでしょう。

 中国の一貫した動きの中から読み取れるのは、領土=資源の確保のためには何が何でも邁進するという姿勢です。
 領土問題というより「資源確保」という意味で中国の態度を観察すれば、中国が石油を中心に資源確保に国運を賭けるような側面が見えてきます。

 日本の場合はどうでしょうか。石油資源の98パーセントは輸入と言われます。しかし日本は戦後素晴らしい経済成長を実現していきました。
 国内で国民が働いて付加価値を稼げば、必要な原材料は稼いだ金で海外から買えるのが前提です。開放経済の世界ではこの原則は貫徹します。産油国は原油を売らなければ、経済が成り立たないからです。

 世界の工場と言われ、一貫して経常黒字を記録している中国が、なぜ「資源は買えばいい」と考えずに「資源確保」ばかり考えるのでしょうか。
 どうもそこには中国の経済事情があるように感じられてなりません。

 中国はかつてアメリカなどの「人民元切り上げ要求」に応じませんでした。輸出に不利だったからです。当時は「日本は円高容認で失敗したでしょう」と言っていました。
 しかし最近の中国は人民元を高く評価させることに注力しています。

 いま中国は海外経済進出に力を入れています。一帯一路構想、AIIBをはじめ、多国間の活動にも熱心です。海外にモノを売る時には人民元安のほうが有利ですが、海外に現物投資をしたり、売るのではなく買い手に回った時は人民元高でなければならないからでしょう。

 国内の余裕資金を活用し、世界に経済拠点を広げるという選択には人民元高が有利です。しかし、中国はそれほど金持ちなのでしょうか、バブル崩壊の危険性は常に指摘され、国有大企業の財務体質問題、金融機関の不良債権問題も常に指摘されています。

 3兆ドルを超える、中国の外貨準備(内容は国家機密)ですが最近急減の様子です。投機筋では人民元暴落の可能性を予言するところもあるようです。
 しかし中国は、今後も国際的なプレゼンスの拡大を強力に進める気配です。それには強い人民元の大きな支出が必要でしょう。中国がどこまでそれを続けられるでしょうか。

 世界戦略に巨大な金を必要とし、石油が足りなければ、稼いだ金で買えばいいといっていられないとすれば、石油はじめ資源の自前の確保、それによる国家経済の安定したエネルギー基盤が必要になってきます。
 中国の資源獲得への異常な執念は、中国経済の内実と密接に関連があるように思うのですが、どうでしょうか。