tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値で読む経済分析 (6 消費の重要性)

2013年03月24日 10時47分23秒 | 経済
付加価値で読む経済分析 (6 消費の重要性)
 ここまで経済活動の生産面を中心にして論を進めてきました。もちろん、モノやサービスは提供する人がいなければ消費出来ませんから生産が先ということになるのが普通ですが、本当は生産と並行して消費も増えなくてはなりません。

 消費は大事です。生産者が、自分では素晴らしいと考えて製品を市場に出しても、売れなければ「付加価値」を生みません。
 付加価値は、「売れて初めて実現」するのです。売れなければ、結局は不良在庫になり、いつかは廃棄処分になり、それに費やされた労働も資本も、経済価値として実現されないままに、無駄になるだけです。

 ですから消費については2つの事が重要です、1つは、消費者が欲しいと思うものが提供されること、もう1つは、消費者がそのモノやサービスを買うおカネを持っているかです。
 これを基本的に左右するのは、生産したGDPを資本にどのぐらい、労働にどのぐらいの比率で分配するか、別の言い方をすれば適正な労働分配率(労働分配率+資本分配率=100%)はどのくらいかという問題です。

 低すぎる労働分配率は、消費購買力の増加を抑え、結局は企業の売り上げにマイナスとなり企業成長を阻害して、GDPの増加、つまり経済成長を阻害します。
 企業の場合は、「労働分配率=総額人件費/付加価値×100」
 国の場合は、「労働分配率=雇用者報酬/GDP×100」
ということになりますが、この2つ、労働分配と資本分配は、ともに経済成長(GDPの増加)バランスのとれた形で増えていくのが、いわゆる「均衡成長」(balanced growth)と言われる経済成長の標準的な形となります。
 
 ここで1つの問題は、日本人のように、適切な労働分配をしたつもりでも、貯蓄意欲が強く、おカネが消費に回らないという問題です。1,400兆円と言われる世界一巨額な個人貯蓄を持ちながら円高デフレで賃金が下がるさなか、更に将来不安から貯蓄を積み増すといった行動パターンを国民が持つ場合どうするかという問題です。
 日本は国債発行で政府が使っていますが、これは別途考える必要があるでしょう。

 ギリシャやイタリア、スペイン、キプロス(もちろんアメリカも)といった国では、資本分配が決定的に不足ですから(外国からのカネで投資が出来ている)自分の力で資本蓄積をするよう訴え(生活水準引き下げ、資本分配増)、他方、日本では、国民に「消費も大切なことを教える」といったことも重要なのかも知れません。
 まさに世は様々です。