tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値で読む経済分析 (7 適正労働分配率再論)

2013年03月26日 12時21分20秒 | 経済
適正労働分配率再論
 前々回、適正労働分配率について触れました。このシリーズの最後に、適正労働分配率にいて、もう少し詳しく論じてみましょう。

 適正労働分配率という場合、「何から見て適正か」というのが問題の基本でしょう。経営者からみた適正と、労働組合から見た適正は同じではないでしょう。
 では何が同じかというと、それは多分「成長」でしょう。年々どのくらいの企業成長、生活水準(豊かさと快適さから見て)の向上が必要か、これは労使(国民)共通でしょう。

 マクロ経済でいえば、「潜在成長力の完全実現」が国家目標としての「望ましい経済成長率」でしょう。今の日本でいえば、災害復旧、放射能汚染除去の早期実現といった「快適さ」の改善も含めて、失われた20年を取り返すため、当面最低2パーセント程度の実質経済成長は欲しいといったのが実感でしょう。潜在成長力のベース、技術革新のスピードも2パーセントの成長に見合うものでなければなりません。

 ならば、2パーセントの実質成長を実現するために適切な資本蓄積と消費購買力の実現のためにGDPをどう分ければいいかが労働分配率の課題になるわけです。
 もちろんこうした適正な分配の結果が出るのは先行き1~3年の内といったことになるでしょう。そのために国の経済目標でも「中期目標」が必須です (企業の経営計画の場合も、基本は全く同じです)。

 この中期目標は、技術開発、企業の生産設備投資、国内消費の拡大が整合的に計画されなければなりません。そして大事なことは、これらが国民に周知され、成長目標を中心に国民、そして労使の広い同意を得ることです。国民の広い合意がその実現を支えます。

 その理由は、GDPの生産も分配も、現実にそれが行われるのは「企業という場」だからです。企業の作る付加価値の総合計がGDPになるわけで、その付加価値が生産され、分配されるのは「個々の企業の中」だからです。
 というわけで、個々の企業の労使が、この国としての経済目標をよく理解していなければなりません。

 これは、所得政策などで、インフレターゲット(本来はインフレ抑制目標)を実現しようとする際、国民が広くそれに合意しているかどうかが決定的に重要なのと同じです。
   個々の企業の適正労働分配率は、産業企業環境、財務体質などなどにより千差万別です。
しかし、国民が国としての経済計画をよく理解していれば、それぞれの企業の労使は、それを、わが社の状況に照らして、消化、適用し、国全体として、大きな誤りのない決定をすることが可能になるからです。
経験から言えば、日本人なら(日本では)、それが十分可能だと思われます。