Altered Notes

Something New.

米司法省のGoogle提訴の件

2020-11-03 02:17:17 | 世界
米司法省がGoogleを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。だが、これは「ほとんどアメリカの伝統行事のようなもので、大したことではない」と解説するのは経済学者で内閣官房参与の高橋洋一氏である。

どういうことか。

伝統的にアメリカの司法省が独占禁止法を盾に大企業を訴える…という歴史がアメリカにはある。以前はマイクロソフト社もやられているし、昔はIBMやAT&Tも標的になっている。政権が変わる度に毎度のようにこれがあるのがアメリカの伝統なのである。

しかし近年の実績を見ると、司法省はほとんど負けているようである。なかなか勝てないのだが、その理由は提訴担当者のレベルにあるようだ。訴訟は技術がものをいうので、司法省の役人では苦しいところがあるようだ。

今回のGoogleは以前のそれと比較してもかなり難しいターゲットのようである。司法省の担当者は「Googleの解体」と言うのだが、これは困難である。

なぜか。

その昔、AT&Tは確かに解体することができた。「物(ハードウェア)」を作る会社は解体できるのだが、ソフトウェア企業の解体はどうやったらいいかが判らないのである。

じゃぁ、Googleはどうなのか?

Googleの部門構成がどうなっているかと言えば、広告部門はめちゃくちゃ儲かっている。それはもう、儲かって儲かって困ります、と言うくらい儲かっている。だがしかし、Googleの他の部門は全部赤字なのである。Googleマップも赤字だし、サービスは全部無料でやっているので収益にはならないのである。Googleは広告部門だけは余裕で黒字だが、他部門は全部無償なので赤字なのだ。

それをどうやって解体するのか?…ということになる。

広告部門はともかく、広告以外の部門は無償で提供しているので、そのままいけばすぐに潰れることになる。当然だ。

従って「解体できない」、が正解となるだろう。

そこはGoogleがやはり上手いのである。こうしたケースをよく知っていて、広告以外の部門で収益を上げたら解体されてしまうことを承知しているので、他の部門を全部無料にして(故意に)儲からないようにしているのだ。

なので、「Google解体」を具体的にどうやるのか?…が大変なのである。

最も座りの良い落ち着き先は「課徴金」である。これはEUのヨーロッパもやっている。「課徴金を払う」で落とし前をつける事になるのだが、GoogleはそもそもAppleに1兆円近く払っても平気な企業なので、課徴金など痛くも痒くもないのである。「必要経費の範囲」ということで一件落着、になるであろう。恐らく、必要経費のところを「ああでもない、こうでもない」と言いつつ揉めているだけで終わってしまうであろう。

今回の司法省の訴えから見ると、Googleの言い分は結構簡単で、
「ほとんどのサービスについて無償で提供しております」
「消費者の為になっております」という説明で終わりであろう。

そういう意味で最終的に「Googleのサービスがなくなる」という可能性は限りなく小さい。プロセスの中では色々やっていくにせよ、「司法省の勝ち目は極めて小さい」というのが本命予想だ。

上で「政権が変わる度に~」と記したが、タイミング的に「なぜ、今?」という疑問はあるだろう。

その答えは、「今が大統領選挙の直前だから」、である。

さらに言えば、この手の訴訟は民主党政権がやるのが通例なのである。本当は民主党が手掛けたいと思っているのだが、でも今は民主党政権ではないのでできない。だからトランプ氏がやることで「民主党より俺の方がやるぞ」というアピールにもなるのだ。もっと言えば、ウィリアム・バー司法長官がやる気満々のようである。恐らくバー司法長官がトランプ大統領に進言したのだろう。ここで一発やった、という実績を作ること…それで良いのである。

逆に、今やらなかった場合、仮に民主党政権になったら提訴する筈である。そうなったらバー司法長官は悔しい思いをすることだろう。「それだったら俺の時にやっておこう」、ということなのだ。

司法省としては訴訟に負けても構わないのである。歴代政権で超巨大企業をターゲットにするのは前述の通り一種の伝統行事になっているので。本当である。つまりは、「誰がやるか」という話なのだ。「それだったら俺の時にやっておくよ」というのがバー司法長官の考えなのであろう。


ちなみに、Googleだけではなく、GAFAはどの社も似ているので、どの社をターゲットにするのも結構大変なのではないか、と思われる。解体しにくいのはどこも同じだからだ。