田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ヒトハリザトウムシ越冬準備

2007-10-27 | 田中川
ヒトハリザトウムシ
ハマガニを探しに、ハマボウの古木周辺で大きめの流木を動かすなど調べていて、ヒトハリザトウムシがもうこの辺りに分散して小集団を作っているのを見つけた。冬の冷たい西風は堤防とアイアシ群落そして流木や干潟に捨てられた粗大ごみなどによって忍ぶことが出来る。
夏場に大集団を作っていたコンクリートトンネルには一匹もいなかった。
この日出会った彼らの中に、歩脚が欠けている複数の個体を確認した。本来は8本の歩脚。

この干潟から数キロ離れた砂浜でもヒトハリザトウムシを見つけている。砂浜の一部を石垣で囲んで陸地化し、防砂のために松の木を密植させている。その石垣が砂浜に続く海食崖を偲ばせる。自然海岸ではないが、ヒトハリザトウムシの喜びそうな環境となっていた。

腹部第2背板上に1本の短い棘がある。カワザトウムシ科フシザトウムシ亜科

2007.10.23

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

追記
「日本国内で海岸や河川感潮域の水際に生息が期待されるザトウムシは本種のみである.他の同定のポイントは1)腹部背甲第2背板中央に短めだがふつうはっきりした1棘があること(これは幼体には見られない.本種以外に同様の1棘をもつ種としてアカサビザトウムシやオオナガザトウムシなど数種あるが,これらは海岸に出現することはきわめて少ない),2)第2歩脚の腿節に少なくとも1個の偽関節をもつ(これは本種を含むフシザトウムシ亜科に共通の特徴で,幼体でもみられる)」
鶴崎展巨 (2008) 道湖・大橋川におけるヒトハリザトウムシ(ザトウムシ目カワザトウムシ科)の生息記録.すかしば,(56):29-31.

新日本動物図鑑(中)という昭和40年頃の図鑑には,学名は異なるもののヒトハリザトウムシは「体長5~6mm.脚Ⅰ36,Ⅱ69,Ⅲ39,Ⅳ50mm.からだの皮膚は堅く,背表面は一様に小さな球状の果粒におおわれている.つねに第2背板のまん中に1本の比較的短かいとげがある.まれに第1または第3背板にも付属的なとげがある.雄では付節の腹面に密に配列した歯がある.第2腿節にのみ1~2個の小結節がある.腹部の背面には暗褐色の帯状斑がある.ふつう海岸の岩かげなどに群生する.」などとある.
 

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5 コメント

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Unknown (フッカーS)
2012-11-24 02:56:33
はじめまして。
古い記事へのコメントで申し訳ありません。
私は東京都内で虫を撮っている者ですが、つい先日多摩川河川敷でザトウムシを撮り、種名を調べるために「日本産土壌動物」で検索を行いました。その結果、マザトウムシ亜科までは進めたのですが、具体的な種名は結局分かりませんでした。ところがその後、「愛媛県レッドデータブック」を見つけ、「ヒトハリザトウムシは、ザトウムシでは唯一の海岸性の種」との情報を得ました。岡山県の資料では「海岸の砂浜をともなう海食崖や河川河口のヨシ原などに生息する」ともありました。そして、ヒトハリザトウムシをネット検索した結果、貴氏のブログ記事に辿り着きました。そこに掲載されている画像は、細部に至るまで全く同じでした。多摩川では河川敷の砂地に転がる石の下、放置ゴミの下や隙間などにかなりの個体数がおり、周囲にはヒメハマトビムシやカニの類、フナムシ類が沢山居ましたのでそれを食べているものと思われました。都市部の公園や山地で見るザトウムシとは容姿も違うので、やはり海岸性の種だと感じました。
・・・・で、問題なのは「日本産土壌動物」の検索結果なのです。ヒトハリザトウムシが現在どの科に属するかはわかりませんが、「日本産土壌動物」ではカワザトウムシ亜科になっており、この場合は頭胸部前縁の突起や眼丘上の突起が無いため、この亜科に落ちません。仮にスベザトウムシ亜科だった場合でも、腹部背甲に棘や突起が無いという条件がクリア出来ないので、やはり落ちません。歩脚腿節に偽関節が無いので、フシザトウムシ亜科にも落ちません。「日本産土壌動物」では、どうしてもマザトウムシ亜科に行ってしまうのです。その辺りの判断をどうすべきか、お伺いしようと思いコメントした次第です。ひょっとして、検索表が間違っている可能性もあるのでしょうか。
「日本産土壌動物」の検索を無視すれば、生息地も生態も成体の出現時期もヒトハリザトウムシの情報と一致します。この場合、検索を無視して「ヒトハリザトウムシは、ザトウムシでは唯一の海岸性の種」という情報の方を信じた方が良いのでしょうか。
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分類 (田中川)
2012-11-25 19:06:51
フッカーSさん,はじめまして.
ヒトハリザトウムシの所属はカワザトウムシ科フシザトウムシ亜科だと思っています.1年前に確認していますが,最新のものは私にはわかりません.
分類の細かい点については,岡山や愛媛のRDB執筆者の鶴崎展巨先生にお尋ねになるのが賢明です.
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Unknown (フッカーS)
2013-02-16 00:42:22
田中川さん、こんばんわ。
その後の追加撮影分も含めて鶴崎展巨先生にお尋ねしましたところ、悩んでいたザトウムシがヒトハリザトウムシで間違いないことが確認できました。さらには、ヒトハリザトウムシに混じっていた別種のフタコブザトウムシも確認出来ました。
また、「日本産土壌動物」での検索に関しては、採集した個体が老齢であったために、同定ポイントとなる触肢末端の爪が磨り減っていたり偽関節が認識しづらい状態だったこともご説明いただきました。
今回の先生への問合せについては、田中川さんの勧めに後押しされた結果でもありますので、一応ご報告をした次第です。その節はありがとうございました。
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解決 (田中川)
2013-02-16 14:42:17
いくつもの謎が解明されてなによりです.お知らせいただき,ありがとうございます.
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写真の件 (IVSテレビ斎藤)
2013-11-23 06:39:25
コメント失礼します。
IVSテレビの斎藤と申しまして、
テレビ番組の制作をしているものです。

番組内でこちらのザトウムシの写真を使用できないかと思いコメントさせて頂きました。

よろしければ
noeleon4545@gmail.com
メール頂ければと思います

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