田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

野登山のガガンボはTipula属の1種

2009-07-31 | ハエ目(双翅目)
Tipula属の1種
野登山の標高800メートルほどの所で、灯火採集を行った。亀山市と鈴鹿市の境付近だが、採集場所は鈴鹿市内に入る。
21時頃にガガンボが交尾しながら明かりにやってきた。雄の翅長は13ミリ、雌の翅長は15ミリ。

手持ちの図鑑に載っていないし、ネットを調べても判らないので、研究者にお尋ねした。
アノニモミイアと名乗る人が「まず間違いなくTipula属の1種ですが、カスリガガンボなどに一見翅の斑紋が類似していますが、透明斑の位置が異なっています。Tipula属にはおびただしい種が含まれていますので、あるいは未知の種かもしれません。顕著な斑紋をもっていても、交尾器の構造が異なる近似種が多数あるのがこの仲間です。
今のところ、カスリガガンボに翅斑が類似したTipula属(キリウジガガンボ属)の1種と言うところでしょう。」と教えてくれた。

次に達磨と名乗る人が「先生のご指摘のとおり、多数の種がいるので答えに窮するのです。
この写真のガガンボはTipula strix Alexander, 1918によく似ていますが、翅の模様は全くちがうので、この種の近縁種としておいて頂くのがよいかと思います。strixは図示されたことがなく、亜属の所属も不明とされるガガンボなのですが、愛媛大学にAlexander同定の標本が保存されています。この種もご他聞にもれず、近縁な未記載種(?)がいくつも見つかっていて、一度タイプ標本を見ないとどれが本当のstrixだか判断しかねます(発見時、雌個体を元に記載されました)。」と教えてくれた。

要するに、ガガンボの研究者でさえも見たことも無いガガンボのようである。これだけ特徴のある翅の模様を持っているガガンボなのに、既知の種に当てはまるものが無いようである。

この日、ガガンボは私しか採集していないので、このTipula属の1種ペアーを標本にした。何時の日か、種名が明らかになるときが来るのであろうか。
2009.7.18

Tipula属の1種
Tipula属の1種♂

Tipula属の1種
Tipula属の1種♀

Tipula属の1種
Tipula属の1種♀

砂浜のハマヒョウタンゴミムシダマシ

2009-07-30 | 甲虫
ハマヒョウタンゴミムシダマシ
ゴミムシダマシ科のハマヒョウタンゴミムシダマシ Idisia ornata Pascoe

芦原海岸に打ち上がった流木をどかしてみると、体長5ミリにも届かない小さな甲虫を見つけた。
ハマヒョウタンゴミムシダマシという海浜性の甲虫である。
砂浜があり、流木もあり、海藻類も打ちあがっているような所で見つかる。

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると、「体長5.0mm前後。微小白色卵形の鱗毛を密生する。上翅の第3、5、7、9間室は畝状に隆起」

10年前に、今は亡き市橋甫先生の勤め先へ海浜の昆虫類を持って伺ったことを思い出した。「数は少ないですがニセハマヒョウタンゴミムシダマシという種類も居ると思いますよ。そっくりさんです。間室の隆起の様子が違う程度の差です」と教えてもらった。実体顕微鏡を初めて覘かせてもらったのも、このハマヒョウタンゴミムシダマシであった。造形のあまりの美しさに感動した。

砂浜に固有の生きもの。そんな生きものたちをいとおしく感じる昨今である。

ハマヒョウタンゴミムシダマシ

芦原海岸
2009.7.29 津市河芸町の芦原海岸 
防砂を目的とした松林が森林と化している。砂浜海岸固有の生態系を壊すものだ。
松林の中には人は入れない。砂浜に石垣を作り、山土を入れて松を密植する。これを緑化だという。白砂青松だという。
白い砂が見えないような植え方をして、白砂青松と言えるもんか。

コウベキヌゲハキリバチ

2009-07-29 | ハチ目(膜翅目)
コウベキヌゲハキリバチ
ハキリバチ科のコウベキヌゲハキリバチ♀ Megachile kobensis Cockerell, 1918  2009.7.26 鼓ヶ浦海岸にて

砂浜のハマゴウが青紫色の花をつけている。群生地の中に入ると、いろんな昆虫たちが暮らしていることが分かる。
その中で最も数多くの個体が訪花するのがコウベキヌゲハキリバチである。ハマゴウが生えていれば、どの砂浜でも見つかる。彼らの翅の音は耳にうるさく感じられるほど。また、次から次へと花を変えて飛び回っている。
クマバチの訪花も多いが、個体数、頻度共にコウベキヌゲハキリバチの方が圧倒している。海浜植物のハマゴウと最もつながりの深い訪花昆虫と言えよう。
日本固有種で、本州、四国、九州に分布する。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲでは、キヌゲハキリバチの和名で「体長♀11mm位。体は黒色。体には比較的白い白色毛を密生するが、中胸背板の毛は顕著ではない。♂の触角末端節は扁平で暗色。夏季出現し、地中に営巣する。」という。

原色日本昆虫図鑑(下)によると、キヌゲハキリバチは「体長約11mm。全体黒く、白色の短毛を密生する。とくに第1~5腹節背後縁には白色毛による目だった横帯がある。頭楯中央にはたてに点刻のない部分がある。♂の触角末端は扁平で、前ふ節は内面深くえぐられる。」

体長はメスが9-11mm(10mmを超えるとしているところもある)、オスが8-10mm(9mmを超えるとしているところもある)で、体全体が白毛で覆われた中型のハキリバチである。

島根県では海浜生態系の破壊がコウベキヌゲハキリバチの存続を脅かす原因であるとし、海浜の開発や破壊による海浜固有の生態系が喪失しており、生息密度の維持が危惧されるとの理由から、ハマゴウの重要な送粉者であるコウベキヌゲハキリバチを準絶滅危惧NTに選定している。
鳥取県でも準絶滅危惧種にランクされている。

愛知県では木曽川、庄内川などの河川敷での生息が確認されているものの、キヌゲハキリバチは「河川敷の改修によって生息場所を失いつつあり、発生個体数が非常に少なくなった」として、準絶滅危惧に選定している。また、生息地の環境や生態について「砂丘の見られる海浜や、河川敷で砂浜がよく発達した地域に生息している。成虫は花に飛来し、砂地の地中に営巣する。」と紹介している。愛知県内の砂浜には生息していないようである。

いつからかは知らないが、日本産有剣膜翅類目録により、キヌゲハキリバチからコウベキヌゲハキリバチに種和名が変更されたようである。

花粉を集める花粉媒介者としての様子は観察し、撮影もしているが、葉を切るところはまだ未見である。雄の写真も撮れてない。これから、これから。

コウベキヌゲハキリバチ
2009.7.20 津市の町屋海岸にて コウベキヌゲハキリバチ♀

コウベキヌゲハキリバチ
2009.7.26 鈴鹿市の鼓ヶ浦海岸にて コウベキヌゲハキリバチ♀

スキバツリアブの訪花

2009-07-29 | ツリアブ
スキバツリアブ
ハマゴウに訪花したスキバツリアブ、おしべを前脚で抱えている。鼓ヶ浦海岸にて。

ハマゴウの群生地を訪ねて、三重県内のあちこちの海岸に出かけている。
2009.7.24に鈴鹿川派川河口左岸のハマゴウ群生地でスキバツリアブがハマゴウの花から花へと訪花している様子を観察した。スキバツリアブはハマゴウのおしべが大好きのようである。
2009.7.26に鈴鹿市の鼓ヶ浦海岸でもハマゴウに訪花したスキバツリアブを見つけた。

他の地域での様子は知らないが、私が見ているこの地域の砂浜にはスキバツリアブの個体数は極めて少ない。スキバツリアブが集団で暮らしているのを見かけたことがない。マエグロツリアブやオガサワラツリアブは集団で暮らしている様子を何度も観察してきているが、スキバツリアブは個体数が少ないためか、いつも単独で飛んでいるところしか見ていない。単独行動が好きなのかなあ。

スキバツリアブ
鼓ヶ浦海岸にて

スキバツリアブ
鼓ヶ浦海岸にて

スキバツリアブ
鈴鹿川派川河口左岸にて

スキバツリアブ
鈴鹿川派川河口左岸にて

ハマボウ3本の開花

2009-07-28 | ハマボウ
ハマボウ
古木の南に生えている若いハマボウたち4本の内、1本が初めて開花した。

田中川干潟、今年は3本のハマボウが開花した。
初開花のハマボウは私の腰くらいの高さになっている。
古木も2代目もたくさんの開花をみた。
2009.7.24

ハマボウ
ハマボウ古木。右奥に2代目も見えている。

ハマボウ
ハマボウ古木

ハマボウ
2代目のハマボウも満開

ハマボウ
シロオビノメイガが花に止まっていた。

タケトラカミキリ

2009-07-27 | 甲虫
タケトラカミキリ
カミキリムシ科のタケトラカミキリ Chlorophorus annularis (Fabricius, 1787)

車の室内にカミキリムシがいる。
庭で車内の清掃を久しぶりにした。ドアーをみんな開けっ放していたから入ったのだろう。車外へ出して撮影した。
調べると、タケトラカミキリのようである。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると、タケトラカミキリは「9-15㎜。7~8月、温帯下部から亜熱帯の竹類の枯死したものに集まり、特にマダケ・モウソウチクに多いが、ときにアズマネザサの太いものに寄生する。竹材について各地に広がっている。」

我が家には野菜の支柱用に枯れた竹材がいくつも置いてある。それらの中から出てきたのだろうか。とにかく、初めて見た。
2009.7.23

タケトラカミキリ

野登山のツノアオカメムシ

2009-07-26 | カメムシ
ツノアオカメムシ
カメムシ科のツノアオカメムシ Pentatoma japonica (Distant)  

野登山の標高800メートル付近。
シロモジの葉に止まるツノアオカメムシを見つけた。体長は約20ミリ。

カメムシ図鑑によると、ツノアオカメムシは「金属光沢をもった緑色で、大型の美しいカメムシである。一見アオクチブトカメムシに似ているが、側角が幅広く、やや前方に向かって突出し、先端が斜めに切断されているので区別できる。夜間灯火に飛来する。」

脚や腹の縁の色は秋が深まる頃には赤くなるという。
山地のハルニレ、シラカンバ、ミズナラ、ミズキなどの植物で生活している。

動きはえらくゆっくりしていた。草食性のカメムシだからかも。
一週間後、同じ場所で灯火採集を行ったが、ツノアオカメムシは飛来しなかった。
2009.7.18

アカテガニの泡

2009-07-25 | カニ
アカテガニ交尾
田中川干潟の堤防沿いにはアカテガニが多い。
ハマボウの古木へ向かう道中で、泡だらけのアカテガニを見つけた。雄が雌の歩脚をハサミではさんでいる。交尾中なのである。
雌雄共に泡を出している。興奮すると泡を出すと知人のカニ屋から最近聞いたばかりである。この雌雄はたしかに興奮しているのである。

近寄って観察しようとしたら、どうも興奮できる心境ではなくなったようで、しぶしぶ離れていった。
申し訳ないことをした。
2009.7.24

柿の木からガガンボが

2009-07-25 | ハエ目(双翅目)
Libnotes puella
ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のLibnotes (Libnotes) puella Alexander, 1925 和名は未だ無い。

庭の柿の木にイラガ幼虫が発生したので、殺虫剤を散布した。しばらくすると、イラガの幼虫がボタボタと落ちてきた。
そして、このガガンボも落ちてきた。翅長は約9ミリ。
翅の斑紋からナミガタガガンボではないかと思われるが、ナミガタガガンボの翅長は13~15㎜なので、どうもおかしい。翅の斑紋も良く見ると違っている。

研究者にお尋ねすると、達磨と名乗る人が次のように教えてくれた。
「ウスナミガタガガンボやカンキツヒメガガンボなどの属するLibnotes属の一種には違いありません。
家の標本と見比べて見ますと、九州や沖縄から記録のあるLibnotes puella Alexander, 1924と同じもののように思えます。Libnotes属のガガンボは夜、カブトムシを探しに行くと、しみだした樹液の近くの樹幹で体を震わせているのを見ることができます。」

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、Libnotes (Libnotes) puella の分布は日本だけで、九州、南西諸島(=琉球)。そして、我が家のある本州(三重県)が新たな生息地として知られることとなる。
記載年の違いはどちらが正しいのか分からない。

私の掌の上で亡くなったので、標本にすることにした。
2009.7.10

Libnotes puella

Libnotes puella

イシハラクシヒゲガガンボが灯火に

2009-07-22 | ハエ目(双翅目)
イシハラクシヒゲガガンボ
ガガンボ科Ctenophorinae亜科Cnemoncosis亜属の イシハラクシヒゲガガンボ Ctenophora (Cnemoncosis) ishiharai Alexander, 1953

野登山の標高800メートルほどの所で灯火採集を行った。21時頃に、このガガンボが現れた。
体長は約15ミリ、翅長は約13ミリ。イシハラクシヒゲガガンボではないかと思うが、既知の情報が極めて少ない。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲには、スネブトクシヒゲガガンボに似るが「♂の後脚脛節は膨大しない」との記述がある。また、「クシヒゲガガンボの類は♂の触角が櫛歯状で顕著であるが、♀では触角はほとんど糸状をなす。」とある。なお、同図鑑では
スネブトクシヒゲガガンボをCnemoncosis亜属としているので、イシハラクシヒゲガガンボも同じ亜属に属するものと思う。
参考までに、イシハラクシヒゲガガンボに似ているというスネブトクシヒゲガガンボとは、同図鑑によると、「体長16~19㎜。翅長15~17㎜。翅の斑紋と後脚脛節が♂では膨大することが特徴である。胸部背面はほとんど黒色。側面は黄色斑が存在する。触角は黒色だが、柄節のみ黄色。顔も黄色である。」

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、分布は本州、四国、九州の日本だけとなっている。また、亜科はCtenophorinaeとしている。

2009.7.18
イシハラクシヒゲガガンボ

トゲノコギリガザミ♂を食す

2009-07-21 | カニ
トゲノコギリガザミ
ワタリガニ科のトゲノコギリガザミ Scylla paramamosain Estampador,1949

甲幅145ミリ、甲長95ミリのトゲノコギリガザミ♂を愛知県のNさんからいただいた。三重県内の河川で獲れたものという。ハサミにはさまれて、軍手をしていたが、血が出てきたとのこと。彼の指には穴が開いていた。
茹でると旨みが出てしまうので、40分ほど蒸すと美味しいという。良く洗ってから蒸した。
鉗脚以外はさほど美味しくないですよと言われたが、みんな食べた。みんな美味しかった。

三重県内にはアカテノコギリガザミもいるが、アミメノコギリガザミはまだ見つけられていないとNさんは言っていた。

『(続)故郷の動物』(冨田靖男著)に、ノコギリガザミは「主として塩分濃度のうすい内湾の河口付近に生息する。県内では松阪市の櫛田川や三渡川河口、伊勢市の宮川河口など伊勢湾の中南部から熊野灘沿岸の各地で漁獲される」と載っていた。

前額突起4歯は尖り、第3歩脚及び遊泳脚にはアミメ模様があるが、第1・第2歩脚には網目模様があまり現れない。鋏脚腕節の突起は上の1本が大きく、下2本の歯は短いが確認できる。
ノコギリガザミ属3種の違いは『干潟の生きもの図鑑』に詳しい。

図鑑にはノコギリガザミ属の大きさは甲長130㎜、甲幅200㎜ほどとある。あな、恐ろしや。
2009.7.20

トゲノコギリガザミ

トゲノコギリガザミ

砂浜のハマゴウノメイガ

2009-07-20 | 
ハマゴウノメイガ
ツトガ科ノメイガ亜科のハマゴウノメイガ Herpetogramma albipennis Inoue, 2000

薄紫色のハマゴウの花が咲き出した。素足では歩けないほど暑くなる夏の砂浜を這うハマゴウの様子は大好きだ。堤防を乗り越えそうになっている元気の良い自生地も見られる。
2009.7.15、津市河芸町の豊津海岸に自生するハマゴウの葉にハマゴウノメイガを見つけた。前翅長は約9ミリ。和歌山県の南紀で7月に見られているとの情報を知っていたので、ひょっとしたら三重県内でも見つかるかもと思って、ハマゴウ群生地をいつも注意して見ていた。
ひと目でハマゴウノメイガと分かった。会いたい会いたいと思う気持ちが会わせてくれるのだと思っている。三重県内での記録は無さそうなので、参考となる情報をメモっておく。

記載論文によると、
Herpetogramma属としては異例の小型で純白の新種。
伊豆の三宅島阿古、石川県小松市、加賀市、根上町、佐賀県浜玉町虹ノ松原、熊本県天草島牛深市大島で採れた標本によって記載された。小松市浜佐美で山中浩さんが採集した雄がホロタイプとなっている。
ヒメシロノメイガにやや似るが、さらに小型、斑紋はさらに単純で、前翅にあるPalpita属に特徴的な腎形紋などがなく、後翅横脈上と後角の黒紋もない。


山口県の長島では2000年6月の調査で見つけられていて、『長島の自然』によると、「ツトガ科のハマゴウノメイガはInoue(2000)によって新種として発表された種で、現在の所ハマゴウが唯一の寄主植物として知られている(村瀬,2001; 富沢,2000)。今回の記録が中国地方初記録となるが、各地のハマゴウ自生地に広く分布しているので、中国地方の他地域からも発見されるものと考える。」と記されている。

京都府のレッドデータブックによると、「海岸の植生に依存した種であり、京都府における個体数は少ないと思われる。」として、要注目種に選定し、「成虫の開翅長約17mm、幼虫はハマゴウの花部を摂食する。詳しい生態は富沢(2000)に述べられている。これまで石川県、福井県、和歌山県、佐賀県、熊本県の海岸部で記録されている。京都府では、現在冠島だけでしか記録がない。ハマゴウ群落の保全を図る必要がある。」としている。

(むしかご通信2001)によると、1997年の夏、小松市の海浜で初めて成虫を発見し、その後「本種の生活史や分布を調べたところ、①成虫は年2回発生し、7~8月に見られること、②幼虫で越冬すること、③石川県が分布の北限らしいことなどがわかりました」とある。

和歌山県では、日高郡南部町で1997年8月の中旬に多数の成虫が観察されている。有田市の地ノ島、西牟婁郡の志原海岸でも見つかっている。幼虫は、和歌山県では7月中旬から10月上旬まで見られ、いずれもハマゴウの花序の軸に軽く糸を張って花を食していたという。

「いしかわレッドデータブック〈動物編〉2009」によると,「土木工事等によって海浜植物帯が破壊され、本種の食草であるハマゴウが消滅し、生息地が激減して
いる」などとして,絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。「海浜植物を保全しつつ土木工事を実施することが重要である。また、砂浜への車の乗り入れも本種の生息を脅かしている」と,ハマゴウノメイガの生存の危機を訴えている。

参考文献
Inoue, H. 2000. A new species of the genus Herpetogramma Lederer(Pyraustinae, Crambidae) from Japan. Trans. Lepid. Soc. Japan 51: 316-318.
富沢 章, 2000. 石川県におけるハマゴウノメイガの分布と生態. 蛾類通信(211):208-212.
村瀬ますみ, 2001. 和歌山県のハマゴウノメイガ.蛾類通信212: 234.
神保宇嗣(2001)長島の昆虫類.長島の自然 瀬戸内海周防灘東部の生物多様性.日本生態学会中国四国地区会報59号:28-37.
富沢 章, 2001. 新種発見のはなし,むしかご通信vol4No4通巻11号:5,石川県ふれあい昆虫館.
石川県,2009.改訂・石川県の絶滅のおそれのある野生生物 いしかわレッドデータブック<動物編>2009 web版,石川県自然保護課.

ハマゴウノメイガ

追記
2009.7.20 津市の白塚海岸、町屋海岸のハマゴウ群落を探したが、見つからなかった。
2009.7.24 鈴鹿市の鼓ヶ浦海岸では見つけられなかったが、四日市市の鈴鹿川派川河口左岸及び吉崎海岸で成虫の生息を確認
2009.7.29 19時前後に吉崎海岸のハマゴウ群生地を歩く。飛び立ったハマゴウノメイガの成虫が葉裏に止まらず、花序の上に静止するのを何度も目撃した。座り込んで眺めていると、暮れゆく薄闇の中をあちこちで飛ぶ立つ成虫の白い姿が見られた。蕾の上に静止しても、成虫の姿は蕾の色と変わらないように思えた。
2009.7.30 吉崎海岸で多数の幼虫と成虫を確認。鈴鹿市の千代崎海岸は砂浜があるというだけで、ハマゴウの自生すら確認できなかった。
2009.8.7夕方 高松海岸のハマゴウ群生地を調べたが、ハマゴウノメイガもツリアブたちも見つけられなかった。
2009.8.16 伊勢市二見町の神前海岸でハマゴウノメイガ成虫と幼虫を確認。度会郡南伊勢町の田曽白浜及び相賀ニワ浜では見つからず。
2009.8.17 志摩市志摩町の片田大野浜及び和具広の浜では見つからず。伊勢市東大淀の海岸では幼虫と成虫を確認。多気郡明和町の大淀海岸では見つからず。松阪市松名瀬町の松名瀬干潟で幼虫を確認。
2009.8.20 芦原海岸では幼虫、成虫共に見つからず。
2009.8.30 吉崎海岸で、幼虫、成虫共に見られず。

ハマゴウノメイガの幼虫たち
ハマゴウノメイガ初見日

干潟のクロバネツリアブ

2009-07-19 | ツリアブ
クロバネツリアブ
田中川干潟のハマボウを見に行ったとき、蟹の巣穴まわりでクロバネツリアブがうろちょろしているのに気がついた。巣穴作りのため、カニ達が外へ放り出した砂団子が盛ってある。

その砂団子にクロバネツリアブが口吻を伸ばしている。

干潟のこの付近の土の表面は真夏の干潮時には塩をまぶしたように白っぽくなる。おそらく、このクロバネツリアブは塩分を求めていたのではないかと思う。

家に帰ってから、トマトとキュウリに塩をぶっ掛けて食べた。夏だもの。
2009.7.16
クロバネツリアブ

クロバネツリアブ

クロバネツリアブ

クロバネツリアブ
マエグロツリアブの新たな生息地
クロバネツリアブ覚書

灯火にセダカヒメガガンボ

2009-07-18 | ハエ目(双翅目)
セダカヒメガガンボ
ガガンボ科のLimoniinae ヒメガガンボ亜科 Eriopterini族 セダカヒメガガンボ Conosia irrorata irrorata (Wiedemann, 1828)

玄関の灯火にやってきて、我が家で死亡したこのガガンボは翅の斑紋からセダカヒメガガンボと思われる。体長は16㎜、翅長は9mm。全身が地味なチョコレート色をしている。
手持ちの図鑑にはどれも載っていなかった。
セダカガガンボの名で石川県では秋期に採集されている。福井県、京都府にも記録がある。そして、ここ三重県では7月に現れた。
画像検索では1個の画像しか見つからなかった。その1個からセダカガガンボではと判断したが、後日、県立図書館にて『日本産水生昆虫検索図説』を見ると、セダカガガンボではなく、セダカヒメガガンボの和名で載っていた。それによると、「体長11~16㎜。全身黄褐色。翅には細かな斑点模様があり、A1脈の先端で翅の後縁は後方に張り出す。セダカヒメガガンボ属では本種1種だけが日本に分布する。」とある。

Catalogue of the Craneflies of the Worldという外国のサイトで調べたら、セダカヒメガガンボの分布は次のとおりであった。
Egypt; Israel, Kuwait, Saudi Arabia;; Afghanistan; North Korea, South Korea, Japan, China;; widespread Afrotropical (incl. Angola (incl. Cabinda), Central African Rep., Chad, Congo (Dem. Rep., former Zaire), Congo (Peoples Rep.), Ethiopia, Kenya, Liberia, Madagascar, Malawi, Mozambique, Nigeria, South Africa, Uganda, Zimbabwe);; China (incl. Hainan), India, Indonesia (incl. Mentawai Is), Malaysia (Penins., Borneo: Sarawak, Sabah), Nepal, Philippines (Luzon), Sri Lanka, Taiwan, Thailand;; Australia (Qld, NSW), ?Fiji, Indonesia (Maluku, Papua Indonesia [= Irian Jaya]), Papua New Guinea (Bismarck Arch, Papua New Guinea).

1828年に記載された種であり、世界の各地に分布しているにもかかわらず、なんて情報が少ないことか。
2009.7.16

セダカヒメガガンボ

砂浜のシロスジコガネ

2009-07-17 | 甲虫
シロスジコガネ
コガネムシ科のシロスジコガネ Polyphylla albolineata (Motschulsky,1861)

津市河芸町の豊津海岸で松林の中にシロスジコガネ♂の死亡個体を見つけた。
翌日、鈴鹿市の鼓ケ浦海岸の松林の中でも♂の死亡個体と出会った。

シロスジコガネは近くのスーパー駐車場の外灯にたくさん集まってくる。我が家の外灯にもやってくる。毎夏の風物詩だ。
「海浜性の甲虫で、幼虫は松の根を食べています」と甲虫の先生から聞いていた。

愛媛県では絶滅危惧2類(VU)、大阪府では絶滅危惧I類に選定されるなど、どうやら各地で減少傾向にあるらしい。
今年は未だ生きた個体とは出会っていない。

シロスジコガネ
2009.7.15 津市河芸町の松林にて シロスジコガネ♂

シロスジコガネ
2009.7.15 津市河芸町の松林にて シロスジコガネ♂

シロスジコガネ
2009.7.16 鈴鹿市鼓ケ浦海岸の松林にて シロスジコガネ♂