田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

サヤトゲナシケバエ9月にも発生

2012-09-18 | ハエ目(双翅目)

ケバエ科トゲナシケバエ亜科のサヤトゲナシケバエPlecia membranifera 

津市河芸町上野の田んぼ.連日の雨で,放置されたバケツの中に水がたまっている.その水面に10頭以上ものケバエが浮かんでいて,何頭かはまだ生きている.5日間連続で毎日新しい個体が浮かんだ.すべて♂ばかりであった.
以前に,休耕田へ捨てられた古畳から大量のケバエが発生しているのを見たことがあって,近くにある腐葉土置き場などを調べてみたが,今回の発生源は突き止められなかった.

原記載のRevision of the Japanese Bibionidae (Diptera, Nematocera)を見ると,Plecia membraniferaの鹿児島県での発生期は5月で,体長は5.35-6.3mm,翅長は5.7-7.0mm,♂の第9背板後縁は深いU字型の窪みとなる.

Plecia membranifera本州に産す』(はなあぶ32号)には,5,6,8月の三重県での記録がある.

『近畿地方のトゲナシケバエ属の記録』(はなあぶ33号)で,Plecia membraniferaはサヤトゲナシケバエという和名を初めて使われて,5月の和歌山で記録されている.

9月に発生した今回のサヤトゲナシケバエの♂翅長は,どれも4.5㎜程度と小型であった.その理由は判らないが,♂外部生殖器の特徴的な形態からPlecia membraniferaと判断して良かろうと思っている.今度は♀を見つけたいものだ.

2012.9.6



手前の第9背板はU字型,その奥に見える第9腹板の様子も他の日本産Plecia属の種とも異なっている.これこそ,Plecia membraniferaの♂外部生殖器である.

早春のニセアシブトケバエ

2012-09-17 | ハエ目(双翅目)

ケバエ科のニセアシブトケバエBibio pseudoclavipes 

早春の豊津海岸で見つけたケバエ.どうやらニセアシブトケバエのようである.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長7~8.5mm.きわめて普通な種で,全体黒色.前脛節にあるほぼ同長の内・外棘および特に太い♂の後脚基付節は他種と明らかに異なる点である.3~5月に成虫出現.」

『栃木県のケバエ』によると,「後脚は黄褐色で,腿節と脛節は先端に向かって徐々に黒ずむ.平均棍は黒色.春に出現する.」

同じ場所へ,しばらく通ったが追加個体を得ることはできなかった.
2012.3.11

鈴鹿山脈のヤノキゴシガガンボ

2012-09-12 | ハエ目(双翅目)

ガガンボ科Longurio亜属のヤノキゴシガガンボ Leptotarsus yanoi (Alexander, 1953)

2012.6.23 四日市市の宮妻渓谷の林道脇.オレンジ色のガガンボ2頭が雑木の間を縫うように斜面を上がっていくのを見つけた.捕まえられたのは♂1頭だけ.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ヤノキゴシガガンボはキゴシガガンボに体型が似るが,胸部がオレンジ色をしているので容易に区別できる.四国と九州から発見されているという.

Records and descriptions of Japanese Tipulidae (Diptera). Part I. The crane-flies of Shikoku. I.という原記載を見ると,1947.7.27に愛媛県面河渓で採集された♂をホロタイプとしてLongurio (Longurio) yanoiという学名で記載されていて,雄の体長は約18㎜,翅長は17mm,

Alexanderさんも「This interesting crane-fly」と書いているくらいだから,魅力的なガガンボである.私も再会を願って何度か鈴鹿山脈へ出かけているが,あれ以来見つけられないでいる.とにかくヤノキゴシガガンボは本州にも産する.


水路脇のアジアイトトンボ

2012-09-11 | トンボ

イトトンボ科アオモンイトトンボ属のアジアイトトンボ Ischnura asiatica

津市河芸町,水路脇の草むらをアジアイトトンボが行き来している.

『伊賀盆地のトンボ』(2012年1月発行)という本に,「イトトンボの中で最も小さい.産卵は♀が単独で水面近くの植物組織内に産み付ける.羽化は年に2回見られる.和名はアジアに生息していることに由来する.」などとある.

2012.9.6