田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

里山のニトベハラボソツリアブ

2010-11-12 | ツリアブ

ツリアブ科のニトベハラボソツリアブ Systropus nitobei

津市片田田中町の丘陵地帯。明るい林縁に咲いているコウヤボウキの周りをニトベハラボソツリアブがふらふらと飛んでいた。これまで標本でしか見たことが無かった種で,今日この日に出かけてきて本当に良かったと感慨深い。なかなか静止してくれないので,写真が撮りにくかった。

ニトベハラボソツリアブは,体長は12~18㎜で,後脚の第1付節の後半部は黒ずむ。中胸背板肩部の黄色班は,通常側縁に沿って後方へ伸びる。メスの第8腹板末端の黒色突起は鋭い針状。触角の第1節は橙黄色。

2010.11.7


スズキハラボソツリアブ覚書

クロバネツリアブ覚書

2010-09-26 | ツリアブ

ツリアブ科のクロバネツリアブ Ligyra tantalus (Fabricius. 1794)

前日に雨が降り,今日は西風が吹いて少し涼しくなってきた。晴天のこの日,海岸地帯のツリアブたちは9月も下旬だというのに元気だ。
マエグロツリアブとスキバツリアブ近縁種はそれぞれ1頭だけ白塚海岸で見つけた。クロバネツリアブは白塚から河芸の海岸一帯で見つけた。豊津海岸では尾端接触行動が見られた。
2010.9.25

27日に白塚から河芸の海岸一帯で,ヤブガラシ群落を見て回ったが,マエグロもクロバネも1頭も見つからなかった。ここ数日の寒さで人間でも風邪を引いて寝込んでしまった知人も居るくらいだから,彼らが生きていくのは難しいのだろう。スキバツリアブ近縁種だけは寒さに少し強いようで,数頭と出会った。
10月1日白塚海岸で1頭のクロバネを目撃。
10月8日白塚海岸で1頭のクロバネを目撃
10月23日豊津一色海岸で1頭のクロバネを目撃


尾端接触行動をするクロバネツリアブ♀


海浜植物の周りをホバリングしながら移動するクロバネツリアブ♀
ひょっとしたら,これが産卵行動かも。


尾端接触行動をするクロバネツリアブ♀


マエグロツリアブ♂

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,クロバネツリアブは「体長13~19㎜。黒色。頭頂から顔面にかけ黒と黄の短毛を装い,顔面は強く隆起して褐色を帯びる。触角第3節は前2節の和より大,円錐形で,端刺は細いが長く,その先に更に淡色微刺が存在する。腹部第3・7節に白色鱗毛帯がある。翅は黒褐で,やや紫光沢を帯び,亜縁室は4室(日本産の他属では2室)。褥盤を欠く(マエグロツリアブとスキバツリアブ同様)。分布:北海道を除く日本全土;朝鮮半島・台湾・中国・東洋区。」などとある。
なお,褥盤(じょくばん)とは脚の附節先端部にある肉質のパッドのこと。

昨年,中国農業大学大学院生の2名が大阪市立自然史博物館を訪れ,二人が研究を行っているツリアブ類とアタマアブ類について,博物館に所蔵されている標本類(タイプ標本を含む)を検閲し,100個体ほどの標本は大学の研究室に持ち帰り交尾器などを精力的に精査し,正確な同定を行ったという。今年に入ってからも博物館のクロバネツリアブ関係の標本が中国人に貸し出されていたが,ようやく戻ってきた。それらの内,故永冨昭博士が収集したLigyra属の標本をこのほど見せてもらった。Gang Yao氏同定のラベルが付いていた。性別も全て記入されていた。手書きではなく全て印字されたものであった。
dammermaniとzibrinusという種名もあったが,これまで聞いたこともない学名である。見掛け上はクロバネツリアブとの違いが判らなかった。新種記載が最近行われたのかもしれないが,参考になる資料は添付されていなかった。
マエグロツリアブ(Ligyra similis)♂と同定された標本も1頭だけあった。
驚いたことに,クロバネツリアブ♀と同定されていた標本の中に,マエグロツリアブ♀を見つけた。それも1頭だけではなく,5頭のマエグロツリアブ♀が全てクロバネツリアブ♀と同定されていた。
これは明らかな誤同定である。O氏に見せると,ひと目で「この5個体ですね。いくつかの点でクロバネツリアブとはハッキリ異なりますね」と指摘した。
Gang Yao氏が判定した同定ポイントを知りたいものだ。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,クロバネツリアブの学名がExoprosopa tantalus Fabricius となっていて,「体長11~19㎜,翅長13~20㎜。日本産のツリアブ中の最大種。体はビロウド様黒色で黒色短毛を密生する。顔面は橙黄色。あしは細く黒い。翅は長大で全体一様に黒褐色。腹部第3節には黄色毛よりなる横帯が,尾端の2節にはそれぞれ白色毛よりなる横帯がある。」などとある。

2004年発行の『改訂新版 世界文化生物大図鑑 昆虫Ⅰ』によると,クロバネツリアブ Exoprosopa tantalus Fabricius は「体長13~19㎜。体と翅が黒色の大型種。胸部の前縁と側縁に橙黄色の長毛帯がある。幼虫は寄生性。成虫は春から夏にかけて出現。日当たりのよい林縁の花上でみられるが,暖地では日当たりのよい川岸などのしめった土に多数あつまっているのが観察される。日本全土に分布。」

1989年発行のの『昆虫分類学』に,ツリアブ科は「前縁脈は翅縁を完全に回る。体は密に毛で覆われる。幼虫は昆虫の卵か幼虫に寄生し,過変態するものがある。英名Bee flies。」などとある。

クロバネツリアブ
干潟のクロバネツリアブ
雨中のツリアブたち
ツリアブ2種の距離
ツリアブたちの初見日


シオカラトンボがツリアブを捕食

2010-08-25 | ツリアブ

砂浜のツリアブたちに会いたくなって,近くの海岸に出かけた。
マエグロツリアブの雌たちがあちこちで尾端接触行動をしていた。
クロバネツリアブには最近会えていない。
オガサワラツリアブは白塚海岸では見かけているが,豊津海岸では今年確認できていない。
シオカラトンボ♂が何かを捕まえたようなので追いかけてみた。スキバツリアブ近縁種が捕食されていた。トンボを捕まえてみると,スキバツリアブ近縁種の頭が無かった。
これまでツリアブたちがムシヒキアブたちに捕食されているのは見たことが無い。トンボに捕食されるところを見たのは初めてであった。

2010.8.24



マエグロツリアブ雌の尾端接触行動





林縁のスキバツリアブ

2010-08-05 | ツリアブ

服に止まってきたスキバツリアブ雌

津市河芸町の里山の林縁で,スキバツリアブを探した。
雌たちがあちこちで尾端接触行動をしているところに出くわした。私の服にも止まってきた。
同じ町内に彼らが暮らしていたなんて,全く思いも付かなかった。日本全土に分布している種だから,近くの林縁で容易く見つかるようである。旧津市内では片田や産品地区の林縁でも見つけている。
2010.8.3


スキバツリアブ雌の尾端接触行動


林縁に軽トラが通る明るい砂利道が続く。その砂利道で彼らは尾端接触行動をしている。

河川敷のスキバツリアブ雌

2010-08-01 | ツリアブ

ツリアブ科スキバツリアブ Villa limbata (Coquillett. 1898)

思いがけず,スキバツリアブと出会った。図鑑に載っている黄色い毛のスキバツリアブである。砂浜海岸でいつも見ているスキバツリアブのそっくりさんとは明らかに毛の色が異なる。これが本物のスキバツリアブである。また,地表面への尾端接触行動をしていたことから,この個体は雌であろう。
スキバツリアブ雌と出会った場所は,安濃川中流域の河川敷である。体長は約12㎜。

吉田浩史・紺野 剛(2010)では,「比較的大型で山地林縁部でみられるものと,比較的小型で河川敷から海浜でみられるものの,少なくとも2つのタイプが含まれているようであるが,詳細な検討が行われていないため,今回は1種として扱う。」としている。

砂浜にも大型のものが居るから,これまでスキバツリアブとして記録されてきたものが3種類に分かれる可能性がある。
山地林縁部のスキバツリアブにも早く会いたいものだ。

文献
紺野 剛 2005 ツリアフ科ノート ビロウドツリアブの観察-特に雌の尾端接触活動について- はなあぶ 20:58-61
吉田浩史・紺野 剛 2010 兵庫県の双翅目4.ツリアブ科 はなあぶ 29:17-29

2010.7.30

ビロウドツリアブ初見

2010-03-21 | ツリアブ
ビロウドツリアブ♂

早春の暖かい一日,津市河芸町北黒田の里山へ向かった。ビロウドツリアブに会えそうな気がしたからである。ため池があり,小さな畑もあって,アブラナ科の野菜が黄色の花を咲かせていた。その花を渡り歩くビロウドツリアブの雄が何頭もいた。花の花粉や蜜を舐めているのだろう。今年の初見である。
複眼がくっついているので雄と分る。ビロウドツリアブの雌雄は複眼が離眼的か合眼的かで識別できる。
図鑑には「体長8~12㎜。♂の複眼は上方で接する。春季発生の普通種」などとある。
度会郡大紀町滝原の知人からもビロウドツリアブ初見の便りをもらった。
2010.3.19

ビロウドツリアブ♂

ビロウドツリアブ♂

里山のビロウドツリアブ

10月のスキバツリアブ近縁種

2009-10-29 | ツリアブ
スキバツリアブ近縁種
津市河芸町の豊津海岸で2009.10.20の14時頃に出会った。オニシバの群生する砂浜にクズが蔓を伸ばしている。その蔓に止まったところ。
スキバツリアブのそっくりさんではあるが、いろいろと調べた結果、もはや別種としか考えられないので、スキバツリアブに近縁の未記載種としておく。
何年掛かるのか、そう遠くない時期に誰かが新種記載してくれることであろう。
全国の生息状況は良く分からないが、ネット上でスキバツリアブとして紹介されているものの中には近縁種が混じっているように思える。伊勢湾の三重県側の砂浜海岸に生息していることは確かなので、情報提供だけはきちんとしたいと思っている。

これまでこのブログでスキバツリアブとして紹介してきている個体は全て近縁の未記載種である。
本物のスキバツリアブにも会いたいものだ。海岸部には居ないのかなあ。

9月のスキバツリアブ

スキバツリアブの訪花

スキバツリアブ

ツリアブたちの初見日

マエグロツリアブの新たな生息地

9月のスキバツリアブ

2009-09-29 | ツリアブ
スキバツリアブ
ツリアブ科のスキバツリアブ Villa limbata (Coquillett. 1898)

9月の後半にスキバツリアブと何度か出会った。21日は白塚海岸、24日は豊津海岸、26日は豊津海岸で再度。
この個体で体長約10ミリ、割と大きいなあと感じた、体長が7~8㎜程度の個体を何度も見ている。13ミリほどの個体も出会っているが、15や16ミリもあるような個体には出会っていない。
マエグロツリアブとクロバネツリアブは9月8日に豊津海岸で見かけて以降全く見かけなくなった。

原色日本昆虫図鑑(下)では、スキバツリアブの学名を Villa limbata Coquillett とし、
「体長・翅長とも11~15㎜。体はビロウド様黒色で、背面には黒色短毛を密生する。触角は黒く短小で顔面には黄白色短毛を密生する。前胸の全部および中・後胸の側面には黄色長毛を密生するが、その毛の色調は背面にちかい程濃色となる。あしは細く黒い。翅は透明で光沢が強く前縁部は濃褐色。腹部背面各節の前縁には黄色短毛を密生した横帯があり、両側縁部には黄白色毛を密生する。分布:日本全国;台湾。」

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲでは、学名を Villa limbata (Coquillett)とし、「体長10~16㎜。黒色。顔面は弱く隆起し、白毛に暗毛を混じる。胸部は前・側縁に黄毛密生し、背面に黒と黄褐微細鱗毛を疎生。翅は前縁が細く暗色を呈し、胸弁は外縁に黄色鱗毛を装う。腹部は第1節以外の各節背面に短い黄色鱗毛による横帯を生じる。分布:日本全土;台湾。」

1950年の日本昆虫図鑑によると、学名は Villa limbatus Coquillettとし、「触角は黒色、第1節は円筒形、第2節は球形、第3節は前2節の和と殆んど等長、甚だ細いが基部球形となる。末端棘は第3節より微かに長く、著しく細く、白色。胸背には黒色短毛を粗生し、橙色鱗毛を混ずる、特に後縁で顕著、前縁及び側縁に橙色長毛を密生する。小楯板は三角形に近く、後縁に橙色鱗毛及び長毛を生ずる。翅は殆んど無色、前縁黒褐。肢は細く、後腿節に白色鱗毛を密生する事が多い。腹部は比較的大、各節前縁及び側縁に黄色又は橙色の毛を密生し、側縁のものは長く、末端前2節のものは黒色。体長11~15㎜。」

学研生物図鑑昆虫Ⅲによると、学名を Villa limbata (Coquillett)とし、
「夏にあらわれる、ハチに似た大形種で、個体数は比較的少ない。生活史はよくわかっていないが、類似種の生態より類推すると、本種の幼虫はアブかハチの幼虫に寄生すると思われる。体長;10~16㎜。なお、Villa属はHyperalonia属同様褥盤(じょくばん)を欠いている。日本には本属の未記載種が他に数種いる。」

2009.9.26

スキバツリアブ右翅
スキバツリアブの右翅
「前縁部は濃褐色」とか「翅は前縁が細く暗色を呈」するとかの記述と合わないように思うが、図鑑の記述どおりの個体と出会ったことがないので、地域差なのか、別種なのか、判断が付かない。6月から9月まで見てきたが、季節的な変異はない。三重県内の砂浜海岸で私が出会っているのは、すべて図鑑の記述とは異なる個体たちである。

スキバツリアブ図鑑の図
1950年の日本昆虫図鑑に図示されているスキバツリアブ♂

スキバツリアブ図鑑の図
学研生物図鑑昆虫Ⅲに図示されているスキバツリアブ

コウヤツリアブが暮らす風景

2009-09-11 | ツリアブ
コウヤツリアブが暮らす風景
津市の豊津海岸。砂浜に建てられた納屋が連なる。
かつて水産加工場であった木造の建築物が崩れ落ちている。付近にはそんなのがいくつもある。エノキの枯れ枝も見えている。

9月初旬、この風景の中を落ち着き無く飛び回るコウヤツリアブを数頭見つけた。止まっても、すぐに場所を変えてしまう。

『岡山の昆虫』に、「夏期に古い木造家屋や立ち枯れの木の周辺などで忙しげに飛び回る姿が見られる」とあり、まさに記述どおりの景色であった。

『鈴鹿市の自然』によれば、2005年5月末に山本町での採集記録がある。

原色日本昆虫図鑑(下)では学名をAnthrax aygulus Fabriciusとし、「体長7~14㎜、翅長9~18㎜。体はビロウド様黒色で、背面から見て胸部の周縁には黒色長毛と白色長毛を密生する。(中略)成虫は夏に現れる。幼虫はドロバチ、ハキリバチなどの幼虫に寄生する。幼虫時代の宿主の差により、成虫の大きさに変異が多い。」

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲでは学名がAnthrax aygula Fabriciusとなっていて、ホシツリアブに似るが、「翅の基半から前縁にかけての黒色部はより濃色でM1室基部は暗色を帯びず、透明部の小黒紋は2個、腹部第1背板側方の白色長毛塊は顕著。幼虫はオオハキリバチ、オオフタモンドロバチなどに寄生。」

この種の正しい学名はどれなのか良く分からない。

この付近では、9月に入ってからクロバネツリアブやマエグロツリアブの姿は見られなくなった。また、スキバツリアブはこの夏ここでは一度も見なかった。

コウヤツリアブ8㎜

コウヤツリアブ

コウヤツリアブ

コウヤツリアブ

コウヤツリアブ
コウヤツリアブの右翅

スキバツリアブの訪花

2009-07-29 | ツリアブ
スキバツリアブ
ハマゴウに訪花したスキバツリアブ、おしべを前脚で抱えている。鼓ヶ浦海岸にて。

ハマゴウの群生地を訪ねて、三重県内のあちこちの海岸に出かけている。
2009.7.24に鈴鹿川派川河口左岸のハマゴウ群生地でスキバツリアブがハマゴウの花から花へと訪花している様子を観察した。スキバツリアブはハマゴウのおしべが大好きのようである。
2009.7.26に鈴鹿市の鼓ヶ浦海岸でもハマゴウに訪花したスキバツリアブを見つけた。

他の地域での様子は知らないが、私が見ているこの地域の砂浜にはスキバツリアブの個体数は極めて少ない。スキバツリアブが集団で暮らしているのを見かけたことがない。マエグロツリアブやオガサワラツリアブは集団で暮らしている様子を何度も観察してきているが、スキバツリアブは個体数が少ないためか、いつも単独で飛んでいるところしか見ていない。単独行動が好きなのかなあ。

スキバツリアブ
鼓ヶ浦海岸にて

スキバツリアブ
鼓ヶ浦海岸にて

スキバツリアブ
鈴鹿川派川河口左岸にて

スキバツリアブ
鈴鹿川派川河口左岸にて

干潟のクロバネツリアブ

2009-07-19 | ツリアブ
クロバネツリアブ
田中川干潟のハマボウを見に行ったとき、蟹の巣穴まわりでクロバネツリアブがうろちょろしているのに気がついた。巣穴作りのため、カニ達が外へ放り出した砂団子が盛ってある。

その砂団子にクロバネツリアブが口吻を伸ばしている。

干潟のこの付近の土の表面は真夏の干潮時には塩をまぶしたように白っぽくなる。おそらく、このクロバネツリアブは塩分を求めていたのではないかと思う。

家に帰ってから、トマトとキュウリに塩をぶっ掛けて食べた。夏だもの。
2009.7.16
クロバネツリアブ

クロバネツリアブ

クロバネツリアブ

クロバネツリアブ
マエグロツリアブの新たな生息地
クロバネツリアブ覚書

マエグロツリアブの新たな生息地

2009-07-09 | ツリアブ
津市河芸町内の砂浜海岸にマエグロツリアブの生息地が点在していることは、これまでの調査で分かっている。このほど、生息地調査の範囲を拡大してみたところ、あらたな生息地が確認できたのでメモっておく。
河芸町の豊津海岸から南に続く白塚海岸、さらに南の町屋海岸でも生息を確認した。また、鈴鹿市の鼓ケ浦海岸でも生息を確認した。

マエグロツリアブが棲んでおりそうな所ばかりを探しているので、私の眼にはマエグロツリアブの姿がたくさん見えている。鈴鹿と津の両市にまたがる海岸一帯におそらく数百頭が生息していると感じている。クロバネツリアブの姿はこれらの海岸ではマエグロツリアブの10分の1くらいしか見かけない。また、スキバツリアブとなると更に少ない数である。3種のうち、マエグロツリアブだけは集団でいることが多い。特に寝場所ではその傾向が良く出ている。もっとも、集団から離れて単独で寝る個体も良く見かける。クロバネツリアブとスキバツリアブはほとんど単独で寝ている。クロバネツリアブが2頭で寝ているのを一度だけ見たことがある。

鈴鹿市の鼓ケ浦海岸には必ず生息していると思っていた。なぜなら、『鈴鹿市の自然』にクロバネツリアブとした標本写真が載っているが、翅脈の様子から私はマエグロツリアブだと思っている。あれは間違いなく、誤同定である。鈴鹿市の担当者を通じて同定された方には私の声が届いたようであるが、「類似種がいるけれども、写真の個体は間違いなくクロバネツリアブである」との返答が帰ってきた。それでも私は、今なおあれは誤同定であると思っている。私がこれまで見てきたマエグロツリアブの翅脈と全く同じであり、クロバネツリアブのそれとは絶対に異なっている。また、地元の小学生が採集したクロバネツリアブの標本は13頭が記録されているが、あのすばしっこいクロバネツリアブが小学生にそう容易く捕らえられるとは思えないし、13頭もあの海岸にまとまって生息しているとは到底思えない。、『鈴鹿市の自然』に記録されているクロバネツリアブのほとんどはマエグロツリアブであろうと私は思っている。標本を見ないで思っているだけだが。

白塚海岸
津市の白塚海岸 2009.6.30
伊勢湾随一、奥行きのある砂浜。この辺りは自然のままで、50年前の風景と変わっていない。

白塚海岸
津市の白塚海岸 
この辺りはグラウンドが造成されたりして山土が入れられるなど人の手が入っている。また、松の木をどんどん植えている人がいる。こんな雑草の間にもマエグロツリアブが優雅に飛んでいる。ヤブガラシが花を咲かせていた。
クロバネツリアブ
白塚海岸のクロバネツリアブ 2009.6.30

マエグロツリアブ
白塚海岸のマエグロツリアブ 2009.6.30

スキバツリアブ
白塚海岸のスキバツリアブ 2009.6.30
腹部は第1節以外の各節背面に短い黄色鱗毛による横帯を生じると図鑑には載っているが、この個体も黄色鱗毛ではない。なぜだ。

町屋海岸
津市栗真町の町屋海岸 2009.7.8
三重大学の裏にある砂浜海岸だが、自治会からの協力要請を受け、地元の栗真小学校が卒業記念に毎年松の植樹を子供たちにさせている。砂浜がどんどん消えて、堤防からは砂浜が見えないどころか、海さえもがだんだん見えなくなってきている。原野のような様相となっているが、ヤブガラシの周辺を探せば、マエグロツリアブに出会える。ハチ類も多いので、それなりの覚悟が要る。

マエグロツリアブ
町屋海岸のマエグロツリアブ 2009.7.8

鼓ケ浦海岸
鈴鹿市の鼓ケ浦海岸 2009.7.8
地元の鼓ケ浦小学校、白子小学校、鼓ケ浦中学校などが例年卒業記念の松植樹を行っている。鈴鹿ライオンズクラブの植えた松林には「環境保全活動植樹」という看板が立っていた。長い砂浜が続くが、確実に松の森が増えていっている。

鼓ケ浦海岸
鈴鹿市の鼓ケ浦海岸
マエグロツリアブの生息を確認したが、ヤブガラシは生えていない。

マエグロツリアブ
鼓ケ浦海岸のマエグロツリアブ♂ 2009.7.8

雨中のツリアブたち

2009-07-09 | ツリアブ
クロバネツリアブ
小雨に濡れたまま休むクロバネツリアブ

小雨振る中、18時前に豊津海岸へ傘をさして出かけた。ツリアブたちはどのように雨宿りしているのか確かめたかった。
いつもの寝場所にクロバネツリアブとマエグロツリアブがいた。雨にあたっていても平気であった。どこかで雨をしのいでいると思っていたので意外だった。

暗くなってきたのでフラッシュ撮影した。
すると、目の前のツリアブの姿勢と写真に写ったツリアブとは違う。明らかに翅を動かしている。クロバネツリアブとマエグロツリアブ共に翅を動かしている。何度かフラッシュ撮影をしてみたが、必ず翅を動かす。しかも、すぐに翅の位置は何事も無かったかのように元通りに戻っている。ツリアブから眼を離さずに、フラッシュを光らせて彼らの動きを確かめると、フラッシュが光ったその瞬間だけ翅をわずかに動かしていることが分かった。しかし、フラッシュの光に驚いて飛び立つような事は一度も無かった。

ツリアブたちのこのすばやい反射能力についてはすでに解明されていることなのであろうか。
2009.7.3

クロバネツリアブ
雨の中、クロバネツリアブがフラッシュに反応して翅を動かす

マエグロツリアブ
小雨に濡れるマエグロツリアブ

マエグロツリアブ
雨の中、マエグロツリアブがフラッシュに反応して翅を動かす

ツリアブたちの初見日

2009-06-17 | ツリアブ
マエグロツリアブ♀
マエグロツリアブ♀ Ligyra similis  2009.6.11津市河芸町の芦原海岸にて

いつもの芦原海岸で11日の夕方、マエグロツリアブとスキバツリアブに出会った。両種共に今年の初見である。昨年のマエグロツリアブの初見日は18日だから1週間も早い。
13日には河芸町の豊津海岸一帯でも両種共に出会えた。クロバネツリアブは豊津海岸で16日の黄昏時が初見であった。
スキバツリアブとは四日市市の鈴鹿川派川河口の砂浜でも14日に出会った。

津市の天気と最高気温をみると、10日は雨で23.2℃、11日は曇りで26.7℃であった。11日以降16日まで最高気温は26℃を連日越えている。

羽化したばかりで、みんな新鮮で綺麗だ。

スキバツリアブ
スキバツリアブ Villa limbata  2009.6.11津市河芸町の芦原海岸にて

スキバツリアブの「腹部は第1節以外の各節背面に短い黄色鱗毛による横帯を生じる」(新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ)
また、「腹部背面各節の前縁には黄色短毛を密生した横帯が」(原色日本昆虫図鑑(下))あるとされているが、この個体の横帯の毛は黄色ではなく、白色である。

スキバツリアブ
スキバツリアブ 2009.6.14鈴鹿川派川の砂浜にて
腹部の先を砂に突き刺すような仕草はマエグロツリアブでも良く見られるが、何のための行動かは判らない。

里山のビロウドツリアブ

2009-04-15 | ツリアブ
ビロウドツリアブ
ツリアブ科ビロウドツリアブBombylius major Linnaeus. 1758

津市河芸町のいつもの里山。
桜の花が咲きだす頃から、この里山へは足を良く運ぶ。
この時期に明るい山道を歩くと、ビロウドツリアブに会える楽しみがある。
長い口吻を使って花の蜜や花粉を餌としているらしいが、私はまだ訪花の様子を見ていない。幼虫はヒメハナバチ科の幼虫や蛹に寄生するという。
雌の複眼は間隔が広い。
体長は捕まえた2匹を計測したら、12ミリと14ミリであった。もっと大きくて薄茶色の個体も見かけた。ホバリングする翅の音もすごく大きかった。
2009.4.13

ビロウドツリアブ

ビロウドツリアブ
翅を震わせて、下腹を地面にこすりつけるような仕草はツリアブの仲間で良く見かける。何のため、何をしているのかは不明。