田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

タカノハエトリ雌

2009-04-29 | 蜘蛛
タカノハエトリ雌
タカノハエトリ雌

芦原海岸のコウボウムギの様子を見に行った。株元の砂をかき出して生き物を探していると、タカノハエトリの雌成体とおぼしき蜘蛛を見つけた。体長は6㎜はあった。
『クモ基本50』には、「雌4~5ミリ、雄3.5~4ミリ。4~6月。」とある。

砂浜の海に近い場所で、しかもコウボウムギという丈の低い草の株元に居たというのは想定外だった。
2009.4.27

砂浜のハエトリグモ

タカノハエトリ雌

タカノハエトリ雌

ツマグロイソハナバエ

2009-04-29 | ハエ目(双翅目)
ツマグロイソハナバエ雄
スナヒトデの上で静止したハナバエ科のツマグロイソハナバエ雄 Fucellia apicalis Kertesz, 1908
旧名はノトツマグロイソバエ。

「ツマグロイソハナバエの和名は北隆館の新訂図鑑で諏訪正明先生が使っています。本種がハナバエ科Anthomyiidaeに属すること、能登に生息が限定されていないこと、などがノトツマグロイソバエから改名された理由ではないかと推測しています。」と三枝豊平先生から教えていただいた。

雄の翅端に丸みのある顕著な暗褐色紋があることが特徴。
「体長は4~5.5mm(♀では6mmを超えることもある)。左右の複眼は♂♀ともに広く相離れ、その距離は頭幅の2/5よりやや長い。前脛節の後腹剛毛は通常1本。海浜に投棄された、あるいは打ち上げられた動植物遺体・残滓に」たくさん集まってくると図鑑に記されている。日本の各地に普通という。

津市河芸町の豊津海岸に多量のアオサ類、貝類、スナヒトデなどが打ちあがっている。ハマベバエヤマトイソユスリカの姿も見られたが、圧倒的に多かったハエがこのツマグロイソハナバエであった。よく動き回るハエである。
2009.4.24

ツマグロイソハナバエ雄
ツマグロイソハナバエ雄

ツマグロイソハナバエ雄
ツマグロイソハナバエ雄

ツマグロイソハナバエ雌
ツマグロイソハナバエ雌

ツマグロイソハナバエ雌
ツマグロイソハナバエ雌

ツマグロイソハナバエ雌
ツマグロイソハナバエ雌

ナベブタムシ

2009-04-28 | カメムシ
ナベブタムシ
カメムシ目ナベブタムシ科のナベブタムシ Aphelocheirus vittatus Matsumura

雲出川水系のとある河川の上流部に出かけた。
川の生き物観察会に参加して、複数の講師からいろいろ教えてもらった。
こういう場所にはあまり行ったことが無いので、どの生き物も初めて見るものばかりであった。
ナベブタムシは以前から名前や姿は覚えがあるが、実物を見るのは初めてであった。
体長は1センチも無い。渓流にすむ。
ナベブタムシ類は成虫になっても水中の酸素をとって呼吸することが出来るので、生涯を水中で過ごすことが出来ると、ある図鑑に記述されている。

素手でつかんで講師に渡したら、講師はピンセットで受け取った。「こいつには痛い目にあっている」と言う。
ナベブタムシを裏返して腹側を見ると、長い口吻があった。この口吻で他の水生昆虫の体液を吸っているという。こんなのに刺されたら痛いに決まっている。
図鑑の検索表にナベブタムシ科は「口吻は長く、前腿節より長く、中基節に達し、末端節はその前節より短い。触角は頭部の側縁を越える。前脛節は直線状で、その付節は可動性」とある。

2009.4.26
ナベブタムシ

ナベブタムシ

コウボウムギ群落

2009-04-28 | 草花
コウボウムギ
芦原海岸のコウボウムギ群落 2009.4.27

カヤツリグサ科スゲ属のコウボウムギは砂浜の海浜植物の代表的なもの。
普通は雌雄異株。日本では北海道西南部から琉球列島にかけて分布。
学名はCarex kobomugi Ohwi 種小名が和名に基づきコーボームギと命名されている。

もう一ケ月もしないうちに、この海岸はハマボウフウの緑の葉と白い花で埋め尽くされる。
他の海岸では、広い見事な砂浜に松の木をせっせと植えている人がいる。ゴミ拾いもしてくれるから、地元の人たちが喜んでいるとも聞く。砂浜に生息する生き物たちのことは顧みようともしない。砂浜に園芸植物を植え、サツマイモを栽培して、松の手入れをして人生を楽しんでいる。

松なんか抜いてしまって、コウボウムギやハマボウフウなどの海浜植物でも植えていりゃいいのにと思う。

コウボウムギ
コウボウムギ雄株

コウボウムギ
コウボウムギ雌株

キバラケンモン幼虫

2009-04-26 | 
キバラケンモン幼虫
ケンモンガ科(Pantheidae)のキバラケンモン幼虫Trichosea champa (Moore, 1879)

里山にある公園に立ち寄った。植栽されたシャリンバイ(バラ科)にキバラケンモンの幼虫を見つけた。どうやら終齢幼虫のようである。
幼虫の食餌植物はバラ科、ツバキ科、ツツジ科など。若齢幼虫は終齢とは似ても似つかぬ形態と色彩をしているという。年2回発生するようだ。
成虫はまだ見たことが無い。
2009.4.24

キバラケンモン幼虫
手前がお尻側

ヨコバイ科のコミミズク

2009-04-25 | カメムシ
コミミズク
ヨコバイ科 Cicadellidae ミミズク亜科LedrinaeのコミミズクPetalocephala discolor(Uhler)

夕方、車で出かけて用水路沿いの農道を歩いた。家に帰ってから腕を見ると、上着に見たことの無い虫が歩いているのに気づいた。歩き方はおっとりしている。体長は翅端まで10ミリはある。

頭部の前方は扁平化し、葉状を呈するのがミミズク亜科の特徴という。
ミミズクは本州、四国、九州に分布し、アラカシなどに普通。成虫は5~6月に現れるなどと図鑑に記されている。雌のほうが大きい。
後脛節は扁平化せず、頭頂の側縁は反り返っていないので近似種とは見分けが付く。
あちこち調べてみると、4月下旬頃には成虫の姿が見られ、体色の濃淡は変異が大きいらしい。ブナ科の木に見られるらしいが、私は今日そんな木があるところには行っていない。昨日は里山のアラカシに近づいていた。ひょっとしたら、昨日のうちに車に乗せてしまっていたのかも。
出歩けば、いろいろ会えるものだ。
「そんなに毎日あちこち行ける場所があるんですか、あの方には」と人に言われているらしい。

2009.4.25
コミミズク

マエキガガンボ

2009-04-24 | ハエ目(双翅目)
マエキガガンボ雌
ガガンボ科 マエキガガンボ Indotipula yamata (Alexander)

田んぼ周りの草むらに赤っぽいガガンボがたくさんいる。キリウジガガンボよりか少し小さめのガガンボで、胸部背面がきれいなオレンジ色をしている。自力で調べても、さっぱり分からない。
ガガンボの研究者にお尋ねした。
「Indotipula属の一種のようです。
この属の最普通種はIndotipula yamata (マエキガガンボ)ですが、写真からは種までの同定はできません。」

新訂原色昆虫大図鑑によると、Indotipula属はマエキガガンボ1種のみ載っていて
「北海道・本州・四国・九州に産し、普通である。体長13~15mm。翅は弱い褐色を帯びた透明で、前縁はかなり強く黄色を呈している。胸部側面は灰褐色。口吻は黄色で、下面は暗色。頭頂は灰褐色。触角は黄色だが、第2鞭節以降の各節の基部はわずかに膨大して暗色を呈する」

改訂新版世界文化生物大図鑑によると
「胸部背面はオレンジ色。翅は透明でやや褐色を帯びる。触覚は黄色。腹部背面も黄色。平地に普通に見られる」

図鑑の記述と合っているように思うが、研究者が写真では同定できないと言い切るのだから、素人にはどうしようもない。近似種がどれだけいるのか、それらとどこがどう違うのか、何も分からない。
とりあえず、津市河芸町の田んぼ周りには普通に見られる種であるので、最普通種のマエキガガンボとしておく。これを否定できる見た目の材料は無さそうである。

後日追記
『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』にマエキガガンボ属Indotipulaについて詳しく載っていた。
この属は「日本国内からこれまでに6種が確認されているが、さらに数種の未記載種が分布している。」
マエキガガンボの他はいずれも和名が無い。
マエキガガンボ 体長:雄12mm、雌19mm前後。北海道、本州、四国、九州に分布。
Indotipula itoana 体長:雄15~16mm、雌23mm前後。本州に分布
Indotipula mendax 体長:雄12mm前後。北海道に分布。
Indotipula okinawaensis 体長:雄13mm。沖縄に分布。
Indotipula tetracantha 体長:雄13mm前後。本州、四国、九州に分布。
Indotipula quadrispicata 体長:雄16mm前後。本州に分布

マエキガガンボは「前楯板には不明瞭で細い暗色の帯がある。雄交尾器外生殖端節は幅の広いヘラ状、先端は太い」とあり、これが確認できないと種の同定が出来ないということがようやく判明した。

マエキガガンボ♂
マエキガガンボ♂  2009.4.10

マエキガガンボ♂
マエキガガンボ♂  2009.4.13

マエキガガンボ♂
マエキガガンボ♂ 2009.4.13 

マエキガガンボ♂
マエキガガンボ♂ 2009.4.13 

マエキガガンボ♂
マエキガガンボ♂  2009.4.13

オオマキバガガンボ

2009-04-23 | ハエ目(双翅目)
オオマキバガガンボ交尾
ガガンボ科 オオマキバガガンボ Nephrotoma pullata (Alexander, 1914) 上が雌、下が雄

我家の庭。キンモクセイやその周りの低木に大きなガガンボが何匹も居る。雌の体長は25ミリ近くある。初めて見るガガンボで自力で調べても良く分からない。
研究者たちにお尋ねした。
A氏いわく「これはキリウジガガンボなどの属するTipula属に近縁のホソガガンボ類Nephrotomaの1種です。本属は北隆館の新訂図鑑に掲載されている以外に多数の種が日本からも記録されています。」
B氏いわく「確かに,Rs脈が短いのでNephrotoma属ですね」
C氏いわく「断言はできませんが、胸部や翅の模様から、Nephrotoma pullata (Alexander, 1914)のように見えます。」

オオマキバガガンボなんて初めて聞く名前である。新訂原色昆虫大図鑑で調べた。
日本全土に産する。体長18~22mm。翅長15~17mm。Nephrotoma属の中では大型種。
腹部第1節が灰黒色。第2節以下は赤褐色であるが、背板は広く黒色を呈する。

Nephrotoma属は多数の種が記録されているとは言え、図鑑に載っていなければ調べようが無い。研究資料などがインターネットで自由に閲覧できる状況になってほしい。ガガンボだけの話ではない、どんな生き物でも記載論文などをもっと無料で見られるように公開していくべきだと思う。

さて、我家のこのガガンボがオオマキバガガンボと断言できる時が来るのだろうか。図鑑の記述にぴったし合うように思うんだけど。

2009.4.17

オオマキバガガンボ
オオマキバガガンボ♂

オオマキバガガンボ♂
オオマキバガガンボ♂

オオマキバガガンボ
オオマキバガガンボ♀

オオマキバガガンボ
頭部は触角の基部付近の頭頂が黄色、後頭部は黒色。触角は黒褐色。

オオマキバガガンボ雌
オオマキバガガンボ雌

オオマキバガガンボ交尾
オオマキバガガンボ交尾 左が雌
雄が雌の上に乗って、あっドッキングしたと思った次の瞬間には雄が後ろへ反り返りながら半回転する。そして、この姿勢となる。雌は全く動かなかった。

ヨモギエダシャク成虫

2009-04-20 | 
ヨモギエダシャク
シャクガ科エダシャク亜科のヨモギエダシャク本州以南亜種 Ascotis selenaria cretacea (Butler, 1879)

庭に置いてあるトロ箱などに水がたまっている。
大きな蛾が水面に浮かんでいた。溺れて死んでしまっていると思った。
落ち葉ごと持ち上げて板の上に置くと、歩き出すではないか。
前翅長は25ミリ。成虫は4月から秋まで見られるというから、このヨモギエダシャクは羽化して間もないと思われる。
個体変異の強い種で、ヨモギエダシャクの画像を検索しても皆模様が異なるように見えてしまう。
Ascotis属はこの1種のみ。
2009.4.19

ヨモギエダシャク

ハマシギの群れ

2009-04-20 | 
ハマシギの群れ
田中川干潟で数百羽のハマシギの群れが舞っていた。
ハマシギの腹はすでに黒くなっていた。夏の装いだ。
3月にはすでに周辺の海岸で数百の群れがいると聞いていた。
上の写真には左下にシロチドリ、中央下に2羽のメダイチドリも混じって写っている。
来月には北の国に旅立ってしまうことだろう。
飛翔する群れの動きは滑らかな曲線を描いて美しく、また羽の裏表の色違いも見せてくれるので、いつまでも見飽きることなく眺めていた。
2009.4.19

ハマシギの群れ

ハマシギの群れ

ヨトウガとハナグモ

2009-04-18 | 
ヨトウガとハナグモ
ヤガ科ヨトウガ亜科のヨトウガ Mamestra brassicae (Linnaeus, 1758)

庭に咲かせた菜の花にヨトウガを見つけた。
なぜか不自然な止まり方をしているので、反対側に回り込んで確かめた。
やはり、クモに襲われていた。ハナグモだ。
頃合いを見計らって、ハナグモを追い払ってヨトウガを手に入れた。全く動かず死んでいた。
標本にしようか。展翅の練習もしなくっちゃ。

2009.4.18
ヨトウガとハナグモ
カニグモ科ハナグモ属のハナグモ Misumenops tricuspidatus

スギナにオスグロハバチ

2009-04-17 | ハチ目(膜翅目)
オスグロハバチ雌
ハバチ科シダハバチ亜科のオスグロハバチ雌 Dolerus similis japonicus Kirby, 1882

川は暗渠となって姿を隠しているが、隣接して田があるので土手は残っている。
そんな土手で、この日は3種のハバチを見つけた。ネジロコンボウハバチ(体長10ミリ、翅の第1中室が透明)、スギナハバチ(前脛節が黄褐色)、オスグロハバチ。
中でもオスグロハバチ雌の体は黒、赤、オレンジの3色から成り、私の好みである。

『大阪府のハバチ・キバチ類』によると、体長はメス9mm、オス8mm。翅は透明で、外縁部がごくわずかに暗色を帯びる。脚は全体黒色。寄主植物はスギナ。近畿地方では平地の河川敷や農耕地などに普通で、低山地でもみられる。

同書では、脚は全体黒色と記述されているが、雄には当てはまるが、雌は前脚の一部がオレンジ色をしている。なお、同書にはオスグロハバチ雌の標本写真は載っていない。
雄はとにかく黒い。翅脈を見ているだけではスギナハバチとの区別が付かなかったが、脚の色で違いが分かった。
2009.4.8

オスグロハバチ雌
雌の腹部は広く橙黄色で、第1背板・第8腹板及び産卵管鞘は黒色

オスグロハバチ雌
スギナに止まるオスグロハバチ雌

オスグロハバチ雄
オスグロハバチ雄

オスグロハバチ雄
オスグロハバチ雄

里山のビロウドツリアブ

2009-04-15 | ツリアブ
ビロウドツリアブ
ツリアブ科ビロウドツリアブBombylius major Linnaeus. 1758

津市河芸町のいつもの里山。
桜の花が咲きだす頃から、この里山へは足を良く運ぶ。
この時期に明るい山道を歩くと、ビロウドツリアブに会える楽しみがある。
長い口吻を使って花の蜜や花粉を餌としているらしいが、私はまだ訪花の様子を見ていない。幼虫はヒメハナバチ科の幼虫や蛹に寄生するという。
雌の複眼は間隔が広い。
体長は捕まえた2匹を計測したら、12ミリと14ミリであった。もっと大きくて薄茶色の個体も見かけた。ホバリングする翅の音もすごく大きかった。
2009.4.13

ビロウドツリアブ

ビロウドツリアブ
翅を震わせて、下腹を地面にこすりつけるような仕草はツリアブの仲間で良く見かける。何のため、何をしているのかは不明。

ベニモンアオリンガ

2009-04-14 | 
ベニモンアオリンガ
コブガ科 ワタリンガ亜科のベニモンアオリンガ Earias roseifera Butler, 1881

玄関の外灯にやってきた蛾。
日本の各地にいる普通種。朝鮮や中国にも分布しているという。
でも、私は初めて出会った。会いたくて恋焦がれていた蛾である。

開張17~21ミリ。割と小柄。成虫は4~9月に現れる。
前翅中央部の紅色の斑紋は変異が大きく、ほとんど認められないものもあるという。また、夏の個体はアカマエアオリンガに酷似するが、アカマエアオリンガの後翅は純白、本種の後翅はくすんだ灰色。
何年も前に斑紋の無い個体を見つけたことがあったが、後翅の色が確認できなかったので種の同定が出来なかったこともあった。
ベニモンアオリンガの幼虫はツツジ、サツキ、シャクナゲの新芽やつぼみに食い入って、内部を食い荒らし、新芽を枯らす。年数回発生し、夏に被害が目立つ。
幼虫は褐色で白い斑紋があり、終齢幼虫では体長15ミリほどになるらしい。1匹の幼虫がいくつもの新芽を次々にかじるので被害の割には虫は少ないという。

サツキ類の花が咲かない最大の原因はベニモンアオリンガ幼虫による蕾食害であるという。私の恋焦がれていた頬紅の綺麗な子が害虫だなんて。

ベニモンアオリンガ

ハルササハマダラミバエ

2009-04-13 | ハエ目(双翅目)
ハルササハマダラミバエ
ミバエ科ハマダラミバエ亜科のハルササハマダラミバエ Paragastrozona japonica (Miyake. 1919)

津市の北部、河芸町上野地区。桜の花びらが散る中、笹の多い里山の山道を歩いた。
この時期、そんな場所に姿を見せるハルササハマダラミバエ。
体長は7ミリ前後。通常は翅を水平に広げて動き回っていることが多い。
幼虫はササ類の葉を食べているという。
2009.4.13

ハルササハマダラミバエ