田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

オオシラホシアツバ羽化

2012-11-28 | 

ヤガ科クルマアツバ亜科のオオシラホシアツバ Edessena hamada

2012.5.24 亀山森林公園.オオシラホシアツバが草むらの中でゆっくり移動していた.細い茎や葉につかまりながら歩いているような感じ.翅に少し触れてみたら,ベルベットのような柔らかさであった.羽化したばかりのようである.

オオシラホシアツバ成虫の出現期は5~8月.幼虫の食餌植物はクヌギ.開張は32-50㎜.


アヤヘリガガンボ

2012-11-27 | ハエ目(双翅目)

ガガンボ科のアヤヘリガガンボDolichopeza geniculata(Alexander)

2012.5.18亀山市加太の森林公園で見つけたアヤヘリガガンボ.初めて出会った種で,一目で判った.会いたかった種のひとつなのである.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長8~10mm.翅長10~11mm.翅の前縁部に顕著な褐紋を有する種で,他に類似種を見ない.脚はほとんど白色で,腿節と脛節の末端は褐色を呈する.日本全土に産する.」

福井県のレッドデータブックでは「体長,翅長ともに10mm 前後の小型種.透明な翅の前縁に独特の黒褐色の模様を持つ顕著なガガンボである.生態については,ほとんど知られていない.日本中に広く分布するが,個体数は少ない.」とし, 要注目種とされている.

大事に家に持ち帰って標本にした.数年後に完成する三重県立博物館に収めてもらおうかと思っている.三重県での記録はこれまで無さそうである.

干潟のホンヤドカリ2種

2012-11-23 | カニ

ヨモギホンヤドカリPagurus nigrofascia(上)とユビナガホンヤドカリPagurus minutus(下)

撮りためた古い画像を眺めていたら,2005年に田中川干潟でヨモギホンヤドカリを見つけていたことが判った.当時は種名にまでたどり着けなかった.
ヨモギホンヤドカリの名前は数年前に知人から聞いていて,きっと三重県にも生息しているだろうなあ,志摩半島あたりの岩場海岸に行けば見つかるだろうと思っていた.
田中川干潟ではユビナガホンヤドカリがたくさん見つかる.現在のヨモギホンヤドカリの生息状況はどうなのだろうか.7月から10月は活動していないようなので見つけられない,冬場に調査すれば大阪湾のように県内各地でいっぱい見つかるかも.
和名は,新種記載をした駒井智幸氏が「本新種には新称ヨモギホンヤドカリを提唱する」として命名したもの.

ウイキペディアに,学名の種小名"nigrofascia"は「黒い環」の意で、歩脚にある黒帯模様に由来すると載っていた.また,産卵前ガード行動の写真まで載せている.えらく詳しい人が執筆しているんだなあと感心した.

参考文献
Komai,T.(1996)Pagurus nigrofascia,a new species of hermit crab (Decapoda:Anomura:Paguridae)
from Japan.Crustacean Research,25:86-92.
山田浩二(2007)二色浜におけるヨモギホンヤドカリの出現.自然遊学館だより,44:11.
山田浩二(2012)大阪湾におけるヨモギホンヤドカリの分布.貝塚の自然,14:16-19.


ヨモギホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ヨモギホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ユビナガホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ユビナガホンヤドカリ 2005.5.3 田中川干潟にて

林縁のリュウノウギク

2012-11-19 | 草花

キク科キク属のリュウノウギクChrysanthemum japonicum

2012.11.12 津市美里町穴倉の林縁でリュウノウギクを見つけた.この花を見つけると,葉をもんで香りを楽しむことにしている.

『野に咲く花』によると,「茎や葉に竜脳のような香りの揮発性の油が含まれていることによる.竜脳は,ボルネオやスマトラ原産のリュウノウジュからとれる香料で,樟脳の香りに似ている.リュウノウギクの葉をすりつぶし,ショウガをまぜたものは肩こりや腰痛に効くという.日当たりのよい丘陵や山地に生える高さ40~80㌢の多年草.」

一度,薬として使ってみようかと思う.




アミガサハゴロモ

2012-11-19 | 三重の生き物

ハゴロモ科のアミガサハゴロモPochazia albomaculata 

2012.11.5 亀山の里山公園に出かけた.主に林縁沿いの砂利道を歩き回ったが,湿地帯を横切る木道は角材の腐食が進んでいて,ゆっくりと歩かないと危ない.
この時期,出会える昆虫も少なくなってきた.この日はこのアミガサハゴロモくらいだった.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長7~9mm.本種は本邦に知られる本属の唯一の種で,本州・四国・九州に分布し,カシ類の葉上で見出される.」
ハゴロモ科の頭部はほぼ胸部と同幅という.
別の図鑑には「7~9月,カシ類の葉上でみられる」とあったので,11月に見られるのは珍しいことなのかも.


亀山里山公園

ヒラタハナバエ亜科2種

2012-11-10 | ハエ目(双翅目)

ヤドリバエ科ヒラタハナバエ亜科のPhasia (Phasia) takanoi (Draber-Monko,1965)

多摩丘陵に住む知人を訪ねた帰途に,神奈川県山北町の丹沢湖に立ち寄った.道路脇にキク科の花が咲いていて,ヒラタハナバエ亜科のヤドリバエが3種類ほど訪花していた.内2種類は撮影できたので紹介する.
2種ともに手持ちの図鑑には載っていない.

丹沢大山総合調査学術報告書 丹沢大山動植物目録(2007)にはヒラタヤドリバエ亜科として2種ともに記録されていて,その内Phasia (Phasia) aurulansは「従来, 本種の分布地として日本では北海道のみが記録されていたが, 埼玉県より本州で初めての記録がなされた(玉木, 1997). 下の記録は本州から2 例目となると思われる.山北町三国峠(鈴木ほか, 2004)」という.

2012.11.4

Phasia (Phasia) aurulans Meigen,1824


Phasia (Phasia) aurulans Meigen,1824

コメナモミ

2012-11-08 | 草花

キク科メナモミ属のコメナモミ Sigesbeckia glabrescens

亀山市坂本の日当たりのよい道端でコメナモミを見つけた.

『野に咲く花』によると,「山野の荒れ地や道ばたなどに生える高さ0.35~1㍍の1年草.メナモミに比べて全体に小さく,ほっそりしている.茎や葉には短い伏毛がまばらに生えるが,長い開出毛はない.」

2012.10.20


花柄には腺毛はない




青山高原の風車

2012-11-07 | 風景

久しぶりに青山高原の湿地帯に出かけた.曇り空で陽が陰って,虫の姿は見られなかった.湿地を巡る遊歩道を歩き回ったが,どこまで歩いても風車が必ず見える.見えるだけではない.風車の回る音が大きく,軋むような不規則で不気味な音が絶え間なくする.風車の数もずいぶん増えたようだ.津市側よりもどうも伊賀市側に多いようだ.

まるで工場地帯のただ中にいるような気持ちになった.本当に気分が悪くなった.これは環境破壊であり,公害だと思った.
2012.11.6













暮れなずむ干潟

2012-11-01 | 風景

大潮の満潮間近か,2012.10.29 17時12分頃の田中川干潟.西の堤防際から河口付近を眺める.


17時10過ぎにマリーナ河芸の街灯がともった.

この場所から、人々は干潟の中へ入っていく.カニたちや貝たちの住処を踏みつけて.魚釣りに行く人.釣りエサを獲る人.貝採りに行く人.鳥を観にいく人.空き缶を拾う人.犬の散歩をする人.

干潟の西北部は、右岸石積堤防工事の際に粘土質の土が入れられた.大小の石や粘土の塊があちこちに残っている.人々が踏み固めた、この付近の土質は干潟内では最も硬く、乾燥もしやすい.石積堤防は自然に優しい工法ではあるが、年数が経つと緩やかに沈み込んでしまう.時々、補修をしなければならない.補修のために、干潟の中に重機が入っていく.

そんな所にも、貝やカニが生息している.
陽が落ちて巣穴の中に入るカニもいれば、暗がりを待って巣穴から出てくるものもいる.


田中川干潟の南端,幾種類ものカニ達が暮らしていた泥干潟の岸辺は,台風の影響で漂着物で埋め尽くされてしまっている.2012.10.29


2005.9.17 17時45分頃,満潮の田中川干潟 この頃のハマボウ二代目はまだ小さかった.

メナモミ

2012-11-01 | 草花

キク科メナモミ属のメナモミ Sigesbeckia pubescens

伊賀市法花地区の湿地帯に出向い時に,道端の草むらの中で咲いているメナモミの黄色い花を見つけた.
『野に咲く花』によると,メナモミは山野に生える高さ0.6~1.2㍍の1年草.茎の上部には白い開出毛が密生する.総苞片や花床の外側の鱗片には腺毛が密生して粘り,そう果と一緒に動物などにくっついて運ばれる.花柄にも腺毛がある.葉には翼のある長い柄がある.花期9~10月.

同属のコメナモミとよく似ている.

2012.10.13