田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

グンバイトンボ♂

2013-05-21 | トンボ

モノサシトンボ科のグンバイトンボ Platycnemis foliacea sasakii

2013.5.20 三重県大台町の宮川河川敷にて,グンバイトンボを見つけた.
グンバイトンボ♂は,中・後肢の脛節が真っ白い軍配状を呈する.三重県レッドデータブック2005で絶滅危惧ⅠB類に選定されている種である.

八木孝彦氏の三重県のトンボ記録(3)によると,県内においても中央構造線南側に沿う帯状のエリアのみに限定され,産地も多くない.成虫は6~7月に多い.宮川の記録もあるが,「全くの本流岸辺草地にいたもので,どこから来たものか分からない」という.私が見つけたのも同じ環境のところであった.

本種の三重県最早記録はこれまで5月22日であったが,私が見つけたのは5月20日なので私が発表すれば5月20日が三重県最早記録となる.

かつて本種が群棲状態で見られた南伊勢町の押淵湿地は,もはや湿地ではなくなったと聞いている.あの湿地が貴重な湿地であるということは十分に知られていたはずなのに.
櫛田川水系での記録は少なく,雲出川水系では見つかっていないようだ.

水路脇のアジアイトトンボ

2012-09-11 | トンボ

イトトンボ科アオモンイトトンボ属のアジアイトトンボ Ischnura asiatica

津市河芸町,水路脇の草むらをアジアイトトンボが行き来している.

『伊賀盆地のトンボ』(2012年1月発行)という本に,「イトトンボの中で最も小さい.産卵は♀が単独で水面近くの植物組織内に産み付ける.羽化は年に2回見られる.和名はアジアに生息していることに由来する.」などとある.

2012.9.6




オナガサナエ♂

2011-08-01 | トンボ

サナエトンボ科のオナガサナエ Onychogomphus viridicostus

菰野町の道路にオナガサナエ♂がひっくり返っているのを見つけた。死んでいるのかと思ったら,たよりなく動く。なので,道路上に止まらせて撮影。細部の写真は手に持って撮影。
近くに大きな川があって,家族連れで賑わっている。白い大きな石や岩が多い川だ。

『トンボのすべて』という本に,「初夏から盛夏にかけて,流れの速い川の石の上に黄と黒の縞模様のトンボが止まっていたら,たぶんそれはオナガサナエの♂です。腹部第8節のあたりがふくらみ,その先の尾部付属器は細長くとがっています。」

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,オナガサナエは「中型種で,腹長♂45㎜内外,♀40㎜内外。後翅35㎜内外。翅胸前面には左右に分かれた黄色の襟条と「ハ」字紋がある。本州・四国・九州に分布する日本固有種で,砂礫底の流れより羽化して出る。」などとある。

2011.7.30







オニヤンマの羽化殻と死骸

2011-07-25 | トンボ

オニヤンマ科のオニヤンマ Anotogaster sieboldii (Selys)

答志島。休耕田があって,細い用水路には水が流れており,ちょっとした湿地帯となっている。そんなところで,ミゾソバの葉上に約5㎝ほどのオニヤンマの羽化殻を見つけた。オニヤンマは日本で一番大きなトンボだから,羽化殻もさすがに大きい。

羽化殻の大きさに感心して眺めていたら,すぐ近くに大きなトンボ成虫の死骸があることに気が付いた。すごい数の小さなアリがトンボに集まっていた。オニヤンマの成虫である。

羽化殻には原産卵弁という雌の器官があり,この死骸も長い生殖弁があるので雌。
羽化して直ぐにアリの襲撃を受けて死んでしまったのだろうか。

2011.7.12



キイトトンボ

2011-07-05 | トンボ

イトトンボ科のキイトトンボ Ceriagrion melanurum

夕方,田中川干潟へ出かけた。堤防際のススキの葉に止まるキイトトンボを見つけた。山手の溜池周辺では見かけているが,このあたりでキイトトンボを見るのは初めてである。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体の太い黄色大型種。腹部は♂では鮮黄色で,腹端8~10節の背面には黒紋がある。♀では腹部は全体鈍黄緑色で斑紋はない。脚は体に比してすこぶる短く,黄色を呈する。日本では5~9月にわたって平地の池沼の草間に少なくない。」

この個体は,腹端8~10節の背面に黒紋があるから♂。近くにある元養鰻池周辺で暮らしているのだろう。
2011.6.30



ノシメトンボ♀

2010-11-01 | トンボ

トンボ科アカネ属のノシメトンボ♀ Sympetrum infuscatum (Selys, 1883)

豊津海岸。砂浜に生えるマサキの枯れ枝にノシメトンボの雌が止まった。マサキの木を背にして開けた方に向いて止まる。近づいて立ち位置を変えて撮影していても逃げない。ノシメトンボは人間に対する警戒心が比較的薄いと言われているようだ。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「翅端黒褐色種のうち最大で,腹長25~30㎜,後翅28~35㎜。胸側の2黒条は太く完全で,第1側縫線のものは上端に達する。♀の生殖弁はきわめて未発達でよい標徴にならない。平地・低山地の林間に普通で秋季に多い。」などとある。

2010.10.27


ノシメトンボ 食事中

ウスバキトンボ羽化殻

2010-10-25 | トンボ

トンボ科のウスバキトンボPantala flavescens (Fabricius) の羽化殻

豊津海岸。砂浜にいくつかの大きな水槽が放置されている。水抜きの穴が塞がれていないので,さして水は貯まっていない。その水槽の壁を途中まで登ってきて羽化したウスバキトンボの羽化殻を複数見つけた。大きさは26ミリ。
よくもこんなところでヤゴが生きていけたものかと感心した。

腹部第8節と9節の側棘の様子,そして腹部の斑紋の様子からウスバキトンボと知れた。背棘は腹部第2節-4節にあるようだが.羽化殻では判らない。

2010.10.24

マユタテアカネ♂

2010-09-18 | トンボ

トンボ科アカネ属のマユタテアカネ Sympetrum eroticum eroticum

津市安濃町の安濃川河川敷。堤防から河岸へ降りる道の両側は丈の高い草木が育っていて,ほの暗い林縁のおもむき。
マイコアカネよりは少し大きいが,やや小ぶりの赤とんぼを見つけた。少しでも明るいところへと追い立てようとするが,なかなか思うようには行ってくれない。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,マユタテアカネの体は黄褐色であるが,成熟♂は腹部が赤化する。♂は前額前面に2個の眉斑があり,尾部上付属器は先半が直角に上に屈折する。極東におけるアカネ中最も分布が広く大陸ではウスリー・中国北部・朝鮮半島からさらに南方に広がり台湾にもいる。日本では北海道・本州・四国・九州・種子島・屋久島に分布し,7月から11月にわたって出現する。

この図鑑には♀の眉斑についての記述は無いが,2個の眉斑は雌雄共に有る。
普通種と言えども,どこにでも居るわけではない。我が家の庭でも見たことが無いし,砂浜海岸でも見たことが無い。
眉と言われている黒斑が私には鼻くそが詰まったようにしか見えず,長い間トンボの眉がどこを指すのか分らなかった。いまだに眉が立っているようには見えない。

2010.9.17



ヒメアカネ 若い雄

2010-08-04 | トンボ

トンボ科のヒメアカネ Sympetrum parvulum

津市河芸町の里山。明るい林縁。
林縁の生き物を探していて,マイコアカネとは少し色合いが違うかなと思いながら撮影した。
このトンボはどうやらヒメアカネの若い♂であろう。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ヒメアカネは「小型種で,腹長21~22㎜,後翅24~27㎜。♂腹節には下方部に黒紋がある。日本では北海道・本州・四国・九州に局地的に産する。7月下旬から10月上旬に出現する。」

成熟した雄は腹部が赤くなるものの,マイコアカネ♂のようには額が青くならない。

トンボ屋のT氏なら,トンボでの誤同定は無い。T氏が誤同定しようものなら,それは信用に関わる。私はトンボ屋ではないから,トンボでの誤同定はありうる。誤同定しても,自分ではなかなか気付かないから,誰かに教えてもらって初めて分る。生物の同定は本当に難しい。いろんな分野で,二種であったものが一種になったり,一種が二種に分かれたりしている。昔,ある昆虫学者がいっぱい新種を見つけたとして発表したが,そのほとんどは別の人がすでに見つけていたものであることが後日明らかとなった。学者でもいっぱい間違えるのだから,素人が間違えたって,大した事じゃない。注意はしているが,あまり気にしても仕方ない。

成熟したヒメアカネの雄に会いに出かけよう。
2010.8.1


河川敷のミヤマアカネ雌

2010-08-01 | トンボ

トンボ科アカネ属のミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum elatum

津市を流れる安濃川の中流域。安濃町の辺りの河川敷で,ミヤマアカネを見つけた。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ミヤマアカネは「体は橙褐色で黒条はきわめて退化する。4翅の縁紋の内側に褐色の帯状紋(バンド)があるので一見して区別できる。このバンドは北海道産では狭くなる傾向がある。成熟した♂は真赤になって美しい。」

真赤になって美しい成熟した♂にも早く会いたい。

2010.7.30

ショウジョウトンボ♂

2010-07-30 | トンボ

トンボ科のショウジョウトンボ Crocothemis servilia mariannae

津市河芸町の国道23号線に平行して,新川と呼ばれている川が流れている。流れが殆んど無くて汚い川である。その青黒い淀みの中に,真っ赤なショウジョウトンボ♂を見つけた。

ショウジョウトンボは中型種で,成熟♂は全体赤色を呈し,4翅の基部は広く橙黄色である。(新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ)

ヤゴは,きっと新川に群生するオオカナダモの下で過ごしていたのだろう。
このショウジョウトンボ♂をみると,いつも私は美空ひばりが「真っ赤に燃えた太陽だから」と歌っていたのを思い出す。そして,ついつい口ずさんでしまう。好きなトンボのひとつである。
2010.7.27

渓流のミヤマカワトンボ

2010-07-20 | トンボ

カワトンボ科のミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia

宮妻渓谷の更に奥。内部川の源流部の川原で大きなカワトンボと出会った。
ハグロトンボより一回り大きい。
ミヤマカワトンボは「渓流に発生し,成虫期5月下旬~9月。日本固有種。」(『原色日本昆虫図鑑(下)』)
渓流なんて,めったに行かないから,こんな美しいトンボに会えるなんて感動した。
2010.7.17

干潟のマイコアカネ雄

2009-09-28 | トンボ
マイコアカネ雄
トンボ科のマイコアカネ雄 Sympetrum kunckeli (Selys)

田中川干潟。葦原の中には枯れたヨシがたくさんある。去年の株だろう。
1頭のマイコアカネの雄が枯れたヨシの先端に止まった。近づくと、逃げていくが、また枯れた別のヨシに止まる。
田中川干潟でこれまでにマイコアカネと出会った記憶がない。よく来てくれたと感動した。
額の青白さがみずみずしく感じられた。成熟した雄に違いない。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、マイコアカネは「成熟♂では胸部がオリーブ色となり、腹部は真赤に、額前面は青白色になる。」

近くにハマボウの若い木があって、季節外れの黄色い花を数輪咲かせていた。
トンボの赤と青、ハマボウの黄、みな美しいと感じられた。

2009.9.26
マイコアカネ雄

マイコアカネ雄

ハマボウの花
季節外れのハマボウの花は少し小さめ

コフキトンボ♂

2008-08-16 | トンボ
コフキトンボ♂
干潮の田中川干潟。ハマボウ古木の近くでコフキトンボを見つけた。
植生の多い池沼、湿地を好み、羽化後もほとんど水域を離れることは無いらしい。
干潟に流れ込んでいる淀んだ排水路でも見かけたことがある。
葉の先を軽くつまんで止まる様子が可愛い。
近づこうとしたら、逃げられてしまった。
尾毛の先端が下方に曲がっていれば♀、この子は♂。
2008.8.15

アオモンイトトンボ未熟♀

2008-07-13 | トンボ
アオモンイトトンボ未熟♀
ハマゴウの花が咲き出した。その群生地の砂浜でアオモンイトトンボと出会った。
メスの異色型未熟個体だ。この淡い朱赤色が私のお気に入り。
海岸近くの池でよく見られ、ヨシの茂る池が好みらしい。
アオモンイトトンボIschnura senegalensis 
イトトンボ科アオモンイトトンボ亜科
ヨシが茂っているような池はこの辺りには無い。
彼女はどこの池で生まれたのだろう。
2008.7.12 河芸一色海岸