田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

キンイロアブ♂

2011-03-25 | ハエ目(双翅目)

アブ科のキンイロアブ Tabanus sapporoensis Shiraki

2010.7.17鈴鹿市の奥ノ谷,渓流の近くでキンイロアブ♂(写真)と出会った。
2010.7.31小岐須渓谷と2010.8.8奥ノ谷では灯火にも飛来した。

キンイロアブは日本全国の山間地帯に生息し,7月下旬から9月上旬に発生する。幼虫は渓流沿いの湿った腐葉土中や湿った岩壁に生えた苔中で暮らしていることが知られている。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,キンイロアブ Tabanus sapporoensis Shiraki は「体長11~13㎜,翅長10~12㎜。体は黄色毛でおおわれる。単眼を欠く。触角は橙黄色で末端は濃色。第3節の背面突起は不明瞭。あしは黄褐色で各ふ節のみ黒色。翅は透明で縁紋部は黄色,翅脈は黄褐色。R5室は広く開口する。腹部の末端4節はやや濃色。」

1986年に発表された『アブの分類,生態とその対策』によると,キンイロアブ Hirosia sapporoensis(Shiraki,1918)は「体長9~12㎜。胸背,腹背とも全体黄金色である。腹部は卵形。翅はほぼ透明で,縁紋は小さく不明瞭,R4脈は小枝がない。」などとある。

『新版日本の有害節足動物』によると,キンイロアブ Hirosia sapporoensis(Shiraki)は「成虫は6月下旬から8月末にかけて出現する。ウシ,ウマなどの大動物を好んで吸血するが,ヒトに対する嗜好性も強い。北海道から九州までに分布している。」

キンイロアブの属名については Hirosia に変更されたものの,今なおTabanus を適当とする考え方もあるようだ。


2010.7.17鈴鹿市の奥ノ谷にて キンイロアブ♂

ヤマトアブ

2011-03-24 | ハエ目(双翅目)

2010.8.6津市大里山室町にて ヤマトアブ♂

ヤマトアブ Tabanus rufidens Bigot は森林性のアブだと聞いている。鈴鹿市奥ノ谷では灯火にも飛来した。里山や丘陵地でも良く出会うアブである。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長17~23㎜。中額瘤は線状で長楕円形の下額瘤に連なる。触角は第3節基環節の基部1/3までは橙色で先端は黒色R4脈には小枝がある。」などとある。

『日本産アブ科雌成虫の分類 1.アブ属ウシアブ群,アカウシアブ群及びその関連種』によると,ヤマトアブ Tabanus rufidens (Bigot,1887)は「体長14~21㎜。胸背,腹背とも黒褐色で,胸背には黄褐色のやや不明瞭な縦条が,腹背第2節以下には黄褐色の中央三角斑があり,その後縁斑は側方で幅広く,腹背第2~4節には通常橙褐色の大きな亜側斑がある。翅は淡褐色にくすみ,縁紋は小さく不明瞭,第5径室は開いており,R4脈にはやや長い小枝がある。額三角区は淡黄褐色である。脚は脛節の大部分が橙黄色のほかは褐色~黒褐色である。」などとある。

アブ科の雌雄の判別は簡単で,雄の複眼はぴたりと合わさっているが,雌の複眼は離れている。また,腹部の末端が雄ではやや尖っている。Y氏から,そう教わっている。

『鈴鹿市の自然』にはヤマトアブは記録されていない。

生時の複眼の色は緑色をしているが,標本にすると黒くなってしまう。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲに,アブ科は「複眼は大きく,生時には緑色光彩がある。♀は人畜を刺咬吸血する。」などと解説されている。


2010.9.7津市河芸町久知野にて  ヤマトアブ♀

スズキフタモンハナアブ♂

2011-03-23 | ハエ目(双翅目)

ハナアブ科のスズキフタモンハナアブ Ferdinandea cuprea (Scopoli)

数年前の保存画像を調べていたら,2008.4.13四日市市の丘陵地で出会っていたハナアブの写真を見つけた。どうやら,スズキフタモンハナアブ♂のようである。丘陵地のどの辺りで見つけていたのか,記憶が消えている。あの時,捕まえておけばよかった。
『鈴鹿市の自然』にも記録されていないので,ひょっとしたら三重県での記録が無いかも。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長11mm。♀:中型,黒色で腹部は銅黒色の光沢を持つ。額と顔は黄赤色,中隆起は明瞭で大。触角は赤褐色,第3節は大きくて丸く幅よりわずかに長い,棘毛は上縁中央前に立つ。小盾板は淡褐色。脚は橙黄色で基部と付節の先端は黒褐色。出現:5~7月。」などとある。




フトノミゾウムシ

2011-03-16 | 甲虫

ゾウムシ科のフトノミゾウムシ Orchestes excellens Roelofs,1874
= Rhynchaenus (Orchestes) excellens (Roelofs,1874)

2009.6.7鈴鹿市奥ノ谷で見つけたゾウムシの名前が判明した。T君に教えてもらった名前はフトノミゾウムシという。ノミゾウムシの仲間はノミのように飛びますよとも教えてくれた。後脚腿節が太いので肯けた。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると,「体は幅広く,小楯直後に黄色紋がある。体は暗赤褐色で,吻,頭部,胸部下面はほとんど黒い。本州・九州。少ない。」

『鈴鹿市の自然』には,いくつもの記録があり,どれも山地で採れている。




新版 三重県帰化植物誌の発行

2011-03-09 | 草花

著者の太田久次さんは2008年に83歳で亡くなられている。生前の2007年には原稿の入力作業をほぼ終えられていたようである。太田先生の遺言により,息子さんがその後の編集作業を行い2010年3月にA4判316pp.の『新版 三重県帰化植物誌』が発行された。県内の学校などに寄贈されたと聞いている。定価は8千円(税込だと8400円?)。

希望の方は発行所の有限会社 ムツミ企画(津市丸之内18-5 ℡059-291-2282)へ申し込めば入手できるようだ。

同書によれば,アレチモウズイカは「四日市港:千歳(1955)で採集の標本に村田 源が和名新称(1956:分地16-142)した。筆者の標本を精査したところ四日市港:千歳(Jul.17.1954)で採集していたので記録にとどめる。」とある。生前,先生から「次回の出版では補足説明を加えたい」と聞いていた内容である。
又,同書に依れば,三重県の帰化植物数は678種となり全国一,四日市市の帰化植物数は581種で都市別で全国一。

私は,この本の発行を心待ちにしていた。
「まえがき」の中に「資料の提供や採集地の案内,採集などのご助力いただいた」という人の中に私の名前も入れてもらってあった。
太田先生,ありがとうございました。

アレチモウズイカ 初採集は三重県
松植樹とアレチモウズイカ

キイオオトラフハナムグリ

2011-03-07 | 甲虫

コガネムシ科のキイオオトラフハナムグリ Paratrichius itoi Tagawa in Y.Miyake,1990

2010.7.17鈴鹿市の奥ノ谷でキイオオトラフハナムグリを見つけた。
キイオオトラフハナムグリは手持ちの古い図鑑には載っていない。原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)に「7~8月,山地の花にくる」オオトラフコガネとして載っている種がその後4種に分かれて,紀伊半島から中国地方に分布するものがキイオオトラハナムグリとされたようである。
キイオオトラフハナムグリの後肢の棘は湾曲しているという。山地性の種で,砂浜海岸をうろついている私はこれまで見たことが無かった。

『鈴鹿市の自然』には,滝ケ谷,入道ケ岳,野登山での記録がある。


ムネアカオオアリ

2011-03-04 | ハチ目(膜翅目)

アリ科のムネアカオオアリ Camponotus obscuripes

鈴鹿市の小岐須渓谷で2007.4.7に出会っていたアリ,ムネアカオオアリと思われる。

『アリ ハンドブック』によると,「体長7~12㎜と大形で,赤色が目立つ。胸部背縁はゆるやかな弧を描く。色彩に変異があり,体が黒ずむものや,赤色部が完全にない黒化型が時々見られる。森林に生息し,倒木や木の腐朽部に巣を作る。平野部でも見られるが,山地に多い。」




クロヒゲアオゴミムシ

2011-03-03 | 甲虫

オサムシ科のクロヒゲアオゴミムシ Chlaenius ocreatus Bates

鈴鹿市の奥ノ谷は内部川の源流域である。2010.7.17渓流脇の石の下に隠れるクロヒゲアオゴミムシを見つけた。

原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)によると,「11-12㎜。暗緑色。触角は第1節を除き暗褐色。肢も脛節先端と跗節が暗色。前胸背板はしわ状に密に点刻される。側縁は後角の前で軽く波曲し,後角は鈍くてまるい。上翅の点刻は密で連結し,横じわ状に並ぶ。渓畔の石下に多い。」

『熊野灘沿岸照葉樹林の昆虫』によると,尾鷲市で乙部が,御浜町で鈴木がどちらも灯火採集で得ている。

ヤセモリヒラタゴミムシ

2011-03-02 | 甲虫

オサムシ科のヤセモリヒラタゴミムシ Colpodes elainus Bates

2009.6.7鈴鹿市の奥ノ谷でヤセモリヒラタゴミムシがシダ植物の葉上にいるのを見つけた。

原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)によると,「9.5-12㎜。下唇基節の歯は先端が湾入する。前胸背板側縁の上反部は幅広い。跗節背面の溝は外側の1溝のみ。後肢第4跗節下面の毛は明瞭な列をなさない。第5跗節下面は無刺毛。北海道・本州・四国・九州。」

『鈴鹿市の自然』には10種のColpodes属が記録されているが,ヤセモリヒラタゴミムシの記録は無かった。
『鈴鹿川流域自然環境調査報告書』(2009.3鈴鹿市環境部環境政策課)には2種のColpodes属が記録されているが,こちらにもヤセモリヒラタゴミムシの記録は無かった。
『熊野灘沿岸照葉樹林の昆虫』(2006.11三重昆虫談話会)には11種のColpodes属が記録されていて,1ex.だけヤセモリヒラタゴミムシの記録があった。熊野市で2002年に養老・秋田のコンビが採集していた。




ツバキシギゾウムシ

2011-03-01 | 甲虫

ゾウムシ科のツバキシギゾウムシ Curculio camelliae (ROELOFS)

2009.6.7鈴鹿市の奥ノ谷で出会ったツバキシギゾウムシ♀。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると,「6-9㎜。♀の吻は体長より長い。本州・四国・九州。ツバキの実に産卵。多い。」