田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ハツカネズミ

2015-11-26 | 三重の生き物

齧歯目(げっしもく)ネズミ科ハツカネズミ属のハツカネズミ Mus musculus Linnaeus, 1758

小ネズミがひょこひょこと我が家の農機具小屋から庭に走り出してきた.軽快な走りではない.飼い猫が近くでうろうろしているから,一度は猫につかまって,辛うじて逃れ得たという様子.

先月,小屋に入れてあるコンバインを点検した時,コンバイン本体内の配線がネズミにかじられていることに気づいた.コンバイン内に残っていたモミもかじられていた.

しばらく小ネズミの後をつけた.庭に生えているスギナの葉を食べだした.捕まえようとしたら.草むらの中へ入り込んでしまい,見失ってしまった.
ほどなくして,飼い猫がネズミを見つけて,脚で押さえつけたりしているうちにネズミは動かなくなった.

ネズミはエタノールの液浸標本にして,知人に渡した.種名はハツカネズミと判明した.ハツカネズミは珍しいネズミではないが,それを標本にする人はなかなかいないので貴重な標本だと喜んでくれた.採集ラベルもビンに入れて置いた.

ハツカネズミは昔から我が家に住み着いていて,家族の皆はこれをコギシロと呼んでいた.三重県内各地の知り合いに確かめると,皆コギシロと呼んでいるという.方言なのだろうか?

2015.11.22

アオヒゲナガトビケラ

2013-03-04 | 三重の生き物

ヒゲナガトビケラ科のアオヒゲナガトビケラ Mystacides azureus (Linnaeus)

2011.5.6 津市安濃町の安濃川岸辺で出会っていた虫がどうやらアオヒゲナガトビケラのようだとようやく分かった.

図鑑によると,アオヒゲナガトビケラは体長6㎜前後,触角は細長く前翅の2倍にあまり,各節は灰白色と黒色でまだらになる.成虫は4~10月に出現,平地に比較的普通という.

普通種ながら,私は初めて出会った.今まで行ったことのない新しい場所へ,また出かけてみたいと思った.


アミガサハゴロモ

2012-11-19 | 三重の生き物

ハゴロモ科のアミガサハゴロモPochazia albomaculata 

2012.11.5 亀山の里山公園に出かけた.主に林縁沿いの砂利道を歩き回ったが,湿地帯を横切る木道は角材の腐食が進んでいて,ゆっくりと歩かないと危ない.
この時期,出会える昆虫も少なくなってきた.この日はこのアミガサハゴロモくらいだった.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長7~9mm.本種は本邦に知られる本属の唯一の種で,本州・四国・九州に分布し,カシ類の葉上で見出される.」
ハゴロモ科の頭部はほぼ胸部と同幅という.
別の図鑑には「7~9月,カシ類の葉上でみられる」とあったので,11月に見られるのは珍しいことなのかも.


亀山里山公園

スナヒトデの大量死

2012-10-24 | 三重の生き物

大量発生したスナヒトデがある時,大量に打ちあがった.波打ち際に延々とスナヒトデの死骸が連なっている.場所によっては数百もの死骸が固まって波に揺れている.ほとんどが死骸であるが,中には生きている者もいる.
きっと多くの二枚貝が食べられたことであろう.

こんな光景を,生き物の種類は変わるが,私は何度も見てきた.
2002.5.18





腕の管足がまだ動いている個体も見られた.


生きているスナヒトデは砂の中へもぐりこんでいく


トリガイ(左)とバカガイも打ちあがっていた.

キマダラシマトビケラ

2012-07-20 | 三重の生き物

シマトビケラ科のキマダラシマトビケラDiplectrona japonica Banks  

いなべ市大安町の宇賀渓でキマダラシマトビケラとおぼしきトビケラと出会った.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「成虫の体長10mm前後.体は黒色,触角は褐色で前翅よりやや短い.脚は黄色.成虫は4~6月に出現し,山地渓流付近を昼間に蛾のように飛びよく目立つ.」

2012.5.12

ヒメカマキリ

2011-10-26 | 三重の生き物

ヒメカマキリ科のヒメカマキリ Acromantis japonica

津市美杉町の大洞山。草原の真ん中に木杭があって,その天辺にヒメカマキリがいた。ヒメカマキリはカメラから身を隠そうとして丸い杭の裏側に逃げてしまう。それを追いかけて,杭の周りを何周も回らされた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ヒメカマキリは体長29~35㎜。緑色または緑褐色の小型種。前胸背はかなり細長く,側角部もかなり突出。前部は後部の約1/2。やや山手の潅木上などで発見せられる。日本固有種。」

この日は曇り空で,山の空気は気持ち悪いほど静寂であった。むろん昆虫たちの姿もほとんど無かった。

2011.10.24

オビカワウンカ

2011-10-13 | 三重の生き物

ヒシウンカ科のオビカワウンカAndes harimaensis

津市美杉町の大洞山でオビカワウンカと出会った。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長(翅端まで)♂8~8.2㎜,♀8.8~10㎜。前翅の前縁室のほぼ中央から爪状部の先端に向かって,幅の広い暗褐色帯がある。本州・四国・九州・琉球に分布し,山地に珍しくない。」
2011.9.7

アブラコウモリ

2011-09-14 | 三重の生き物

ヒナコウモリ科のアブラコウモリPipistrellus abramus

知人宅の駐車場でコウモリが死んでいた。民家で見つかるコウモリだから,アブラコウモリだろうと思う。

『故郷の動物』によると,「店の看板も間近な夜ふけ,ふと夜空を見上げると,水銀灯を中心に,ジグザグした飛行で舞っている小型のコウモリに出合うことがある。このコウモリがアブラコウモリ,別名イエコウモリで,主として市街地や住宅地を生息圏としている種類だ。」
また同書によると,ほ乳類のうちコウモリ類はより空中生活と夜行生活に適応した方向に進化したグループであり,真の空中生活者だという。
2011.9.7

青山高原のヒグラシ

2011-08-14 | 三重の生き物

セミ科のヒグラシ anna japonensis

青山高原道路でヒグラシの死骸を見つけた。
カナカナと鳴く声の主を山中で見つけることは難しい。
ヒグラシという名前はずいぶん前から聞き知っていたが,海岸育ちの私はヒグラシの声も姿も子供時代には全く知らなかった。
近頃は山地に出かけることが多くなって,昼間からカナカナの声を良く聞くようになった。

このヒグラシはきっと高原道路を走る車に衝突したのだろう。近くの路面にはアブたちの死骸がたくさん見つかった。
2011.8.11

青山高原のラクダムシ♀

2011-07-07 | 三重の生き物

ラクダムシ目ラクダムシ科のラクダムシ Inocellia japonica Okamoto

青山高原で,道路脇の林道に入り,木々の枝葉をスィーピングしていたら,ラクダムシが入った。長い産卵管を持っているので雌である。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ラクダムシは「開張♂15㎜内外,♀20㎜内外。本属の種は単眼を欠き,翅の縁紋に横脈を有しない。本種は本邦に知られる唯一の種で,北海道・本州・四国および九州に分布し,4~7月に獲られる。」

2011.6.24

砂浜のスナジホウライタケ

2011-06-25 | 三重の生き物

スナジホウライタケ Marasmiellus mesosprus

津市の豊津海岸。コウボウシバ(カヤツリグサ科スゲ属)の群生する砂浜でキノコを見つけた。コウボウシバにくっついているように見えたので,株元を掘ってみると,砂に埋まった茎からキノコが生えていることが確認できた。元気に生きている植物の茎から生えるキノコは珍しい。

調べると,かつてカヤネダケ Crinipellis caulicianalis と呼ばれていたキノコで,2007年にはスナジホウライタケ Marasmiellus mesosprusと和名も学名も変更されている。コウボウムギやイネ科のチガヤにも生えるという。

果実を付けている株にも生えていたので,弱った株にだけ発生しているとはいえないようだ。また,スナジホウライタケが生えている株が弱っているようにも見えなかった。
この翌日,見に出かけたが,キノコの形は無くなって,ただ薄茶色の乾燥した枯葉が散らばっているようにしか見えなかった。長雨が続いていたときは元気でいたのだろうが,晴れてから二日目にしてキノコの形が消えてしまうとは。
2011.6.23






大島(紀伊長島)のマルウンカ

2011-06-11 | 三重の生き物

マルウンカ科のマルウンカ Gergithus variabilis Butler

島の灯台に登る途中で,見たことも無い生き物を見つけた。大きくもないし動きも無いのだが,恐る恐るカメラを向けた。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,マルウンカは「体長(翅端まで)5.5~6㎜。体はほとんど半球形。頭部は暗褐色。前翅の色・斑紋は変化が多く,通常淡褐色~暗褐色で両側に2個ずつの淡色斑があるが,ときに全体が淡褐色で無紋のもの,中央部に1個だけの淡色紋があるものなどのほかに,種々の程度に黒斑をあらわし,ときに全体黒化して翅端のみ褐色の個体もある。成虫は5~8月,クヌギやウツギなど各種の広葉樹上で普通にみられる。」

2011.6.4

砂浜のクロコウスバカゲロウ

2011-05-29 | 三重の生き物

クロコウスバカゲロウ幼虫の巣穴 

津市河芸町の豊津海岸。松葉が散らばっており,近くに松林があることが判る。コウボウムギなどの海浜植物がまばらに生えている。そんな砂浜にいくつもの巣穴を見つけた。掘ってみると,クロコウスバカゲロウのアリジゴクが出てきた。小型種で,巣穴を作るタイプのアリジゴクの一つだ。

取り出したクロコウスバカゲロウの幼虫を掌に載せると,必ず後退して進む。前へは進めない。再び砂に戻すと,必ずお尻から砂の中へ潜っていく。
巣穴を作らないタイプのコカスリウスバカゲロウ幼虫は前後に進むことができる。

鈴鹿市や津市の砂浜海岸には,この2種が生息している。三重県内では,どこかは知らないが,日本最大種のオオウスバカゲロウも生息しているように聞いている。

コカスリウスバカゲロウ幼虫
コカスリウスバカゲロウ成虫

2011.5.18

クロコウスバカゲロウ幼虫


クロコウスバカゲロウ幼虫

美杉町のヤマトシリアゲ

2011-05-25 | 三重の生き物

シリアゲムシ科のヤマトシリアゲ Panorpa japonica Thunberg,1784

津市美杉町。水田脇の土手でヤマトシリアゲを見つけた。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,ヤマトシリアゲは「体長15~22㎜,前翅長13~20㎜。体は黒く,翅の斑紋にはきわめて変化が多い。♂の下付器はY字型。本州・四国・九州の山地・低山にもっとも普通な種で,所によっては沖積平野の河辺の草地にも発生する。」
2011.5.21


2011.5.25 


2011.5.25 シリアゲムシ科の雄の腹節はサソリのように背方に曲がる。

中村(2008)によると,「ヤマトシリアゲPanorpa japonica Thunberg,1784は日本産長翅目の中で最も早く記載された種である。日本固有種でもあり,北海道(?)と沖縄を除く広い範囲に普通に見られる名実ともに日本を代表するシリアゲムシの一つである。本種は季節的多型を持ち,個体変異や地域変異にも富んでいることから,知られている新参シノニムの数は十指に余る。」

参考文献
中村剛之.2008. ヤマトシリアゲの原記載文(Thunberg,1784)について. Panorpodes (長翅目談話会) 20:110.

大洞山のコウヤノマンネングサ

2011-05-02 | 三重の生き物

コウヤノマンネングサ科のコウヤノマンネングサ

大洞山の東海自然歩道を歩く。こけ専門のY氏がコウヤノマンネングサを見つけて喜んでいた。「このこけは水の中に入れておいても生きております。水中花としても使われます。いくつかの苔を天ぷらにして食べてみましたが,全く美味しくありませんでした。」と説明してくれた。Y氏は,苔が食用に適さないことを身をもって確認した生き証人なのだ。「私が学生の頃,市橋さんや石田さんたちが三重昆虫談話会を作られた。」など,いろんなお話を聞かせてもらった。
「また,いつかお会いすることもあるでしょう」と私に言いながら,S氏のワゴン車に同乗して帰っていかれた。

山渓フィールドブックス『しだ・こけ』によると,「コウヤノマンネングサは日本の各地に見られ,林の下のやや湿った地上に群生する美しいこけである。和名は“高野の万年草”の意味で高野山にちなむ。数年前まで水中花の材料とされたり,しおりとして売られていた。日本のほか朝鮮半島,中国,シベリアなどに分布する。」

2011.4.29