田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

オオギンスジハマキ

2011-05-31 | 

ハマキガ科ハマキガ亜科のオオギンスジハマキ Ptycholoma lecheanum circumclusanum (Christoph, 1881)

津市の美杉町。灯火に飛来したオオギンスジハマキに魅せられてしまった。成虫の発生時期は5~6月頃で,開張は ♂17-20mm ♀22-24mm。全国に分布しているようだが,この日は1個体だけしか姿を見せていなかった。数ヶ所の灯火を見て回ったが,この蛾の姿は無かった。下の写真は黄色味が強いが,実物の印象は上の写真のとおりである。

『鈴鹿市の自然』にはオオギンスジアカハマキ Ptycholoma lecheana (Linnaeus)の記録がある。5~6月にいずれも山地で採集されている。
亀山市の自然調査記録にもオオギンスジアカハマキ Ptycholoma lecheana (Linnaeus)の記録がある。
この和名と学名の違いについては,調べても私には判らなかった。
2011.5.21


砂浜のクロコウスバカゲロウ

2011-05-29 | 三重の生き物

クロコウスバカゲロウ幼虫の巣穴 

津市河芸町の豊津海岸。松葉が散らばっており,近くに松林があることが判る。コウボウムギなどの海浜植物がまばらに生えている。そんな砂浜にいくつもの巣穴を見つけた。掘ってみると,クロコウスバカゲロウのアリジゴクが出てきた。小型種で,巣穴を作るタイプのアリジゴクの一つだ。

取り出したクロコウスバカゲロウの幼虫を掌に載せると,必ず後退して進む。前へは進めない。再び砂に戻すと,必ずお尻から砂の中へ潜っていく。
巣穴を作らないタイプのコカスリウスバカゲロウ幼虫は前後に進むことができる。

鈴鹿市や津市の砂浜海岸には,この2種が生息している。三重県内では,どこかは知らないが,日本最大種のオオウスバカゲロウも生息しているように聞いている。

コカスリウスバカゲロウ幼虫
コカスリウスバカゲロウ成虫

2011.5.18

クロコウスバカゲロウ幼虫


クロコウスバカゲロウ幼虫

美杉町のツマジロカメムシ

2011-05-26 | カメムシ

カメムシ科のツマジロカメムシMenida violacea Motschulsky

津市美杉町。道端の朽ち木でツマジロカメムシを見つけた。

日本原色カメムシ図鑑によると,ツマジロカメムシは「体長7.5~10㎜。光沢のある紫黒色で,前胸背の後半に黄白色の幅の広い横帯がある。小楯板の先端が広く白色でよく目立つ。山地の木苺,クヌギ,キリ,フジ,ミズナラ,ノリウツギ,ニワトコなど多くの植物に寄生し,初夏から夏にかけて産卵する。」

2011.5.22

美杉町のヤマトシリアゲ

2011-05-25 | 三重の生き物

シリアゲムシ科のヤマトシリアゲ Panorpa japonica Thunberg,1784

津市美杉町。水田脇の土手でヤマトシリアゲを見つけた。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,ヤマトシリアゲは「体長15~22㎜,前翅長13~20㎜。体は黒く,翅の斑紋にはきわめて変化が多い。♂の下付器はY字型。本州・四国・九州の山地・低山にもっとも普通な種で,所によっては沖積平野の河辺の草地にも発生する。」
2011.5.21


2011.5.25 


2011.5.25 シリアゲムシ科の雄の腹節はサソリのように背方に曲がる。

中村(2008)によると,「ヤマトシリアゲPanorpa japonica Thunberg,1784は日本産長翅目の中で最も早く記載された種である。日本固有種でもあり,北海道(?)と沖縄を除く広い範囲に普通に見られる名実ともに日本を代表するシリアゲムシの一つである。本種は季節的多型を持ち,個体変異や地域変異にも富んでいることから,知られている新参シノニムの数は十指に余る。」

参考文献
中村剛之.2008. ヤマトシリアゲの原記載文(Thunberg,1784)について. Panorpodes (長翅目談話会) 20:110.

美杉町のフナバラソウ

2011-05-24 | 草花

ガガイモ科カモメヅル属のフナバラソウ 舟腹草 Cynanchum atratum

津市美杉町の土手でカモメヅル属の花を見つけた。
『山に咲く花』によると,フナバラソウは「高さ40~80㌢になる多年草。葉は楕円形~卵形で長さ6~14㌢。上部の葉腋に濃褐紫色の花を束にしてつける。花期 6月。」

2011.5.22



ウラキンシジミ幼虫

2011-05-23 | チョウ

ヤマトアオダモ葉上のウラキンシジミ幼虫

津市美杉町。ヤマトアオダモ(モクセイ科トネリコ属)の葉が落ちていて,そこにウラキンシジミの幼虫がいる。複数枚の葉をつけて幼虫が自分で落としているのだとチョウ屋に教えてもらった。この葉を持ち帰って,家で飼育すれば,餌の補給をせずとも成虫の姿を見ることができるという。

ヤマトアオダモの林の中へ県外ナンバーの車でやってきた見知らぬ人が入っていくのを見かけた。彼の手にはビニール袋があり,緑色の葉が見えた。きっとウラキンシジミの幼虫が何匹も入っているに違いない。そして,まだまだ見つける気でいるのか。
2011.5.21


ウラキンシジミ幼虫

チョウ屋が,捕まえたミヤマカラスアゲハ雌とカラスアゲハ雄を見せてくれた。このチョウ屋に見つかったら最後,捕らえられ,しなやかな指で背中を押さえられて息絶えてしまう。そして三角紙の中に入れられてしまうのである。チョウ屋の真似をして,蛾の背中を押してみたことがあるが,暴れられて逃げられてしまった。必殺仕事人のような神業だと感心している。しなやかな指でないと無理なのかも。


ミヤマカラスアゲハ雌


カラスアゲハ雄

追記
このブログ記事について複数の方からクレームをいただいた。蝶の採集行為を非難している記事と読み取られたようである。誤解を招いているようなので青字部分を加えた。幼虫の大量採集については私は苦々しく思ったが,これとて幼虫研究のための採集行為かも知れないから批判的な記事は避けたほうが良いと知人からアドバイスをいただいた。
幼虫の大量採集については非難じみて書いているが,アゲハの採集行為まで非難するものではないので追記した。標本の残っていない生物データは後日の検証が出来ないので無視されたり,否定されたりしている事例を幾つも承知しているので,標本採集を否定するものではないことをここに宣言しておく。共に生物調査に参加している仲間からのクレームは胸が痛む。

河川敷のヤガミスゲ

2011-05-19 | 草花

カヤツリグサ科スゲ属のヤガミスゲ Carex maaskii Maxim.

三重県四日市市塩浜町の鈴鹿川河川敷で見慣れぬスゲを見つけた。当初,ナガバアメリカミコシガヤCarex vulpinoidea Michx.ではないかと思ったが,複数の植物屋にみてもらったら,ヤガミスゲと同定された。写真中央の有花茎の高さは70センチ以上あった。

『日本のスゲ』によると,ヤガミスゲの生育環境は河川敷などの湿った草地で,「花序は3~6cm,熟すと果胞はやや開出する。有花茎は高さ40~70cm,鋭稜があって著しくざらつく。花序は無柄の小穂を円柱状に密生し,長さ3~5cm,幅約1cm。小穂は長さ5~8mm,雌雄性で多数の雌花と基部に少数の雄花をつける。果胞は長さ約3.5mm,狭いが明らかな翼があり,その縁はざらつき,上部はしだいに狭くなって長嘴となる。」
Y氏によると,ヤガミスゲの三重県内の記録は少ないという。

なお,『日本のスゲ』によると,ナガバアメリカミコシガヤは「北アメリカ原産。1998年に神奈川県津久井郡相模湖町の休耕田で採集された。その後,埼玉県,岡山県から報告がある。アメリカミコシガヤにきわめてよく似るが,葉は果期に有花茎よりも長く,果胞は長さ約2mm,幅葯1mmと小さい。」
また,『新版三重県帰化植物誌』をみても,ナガバアメリカミコシガヤは載っていなかった。

2011.5.18

小穂は雌雄性

当初,ナガバアメリカミコシガヤとして紹介していたが,2011.5.23にヤガミスゲとして記事を訂正して加筆した。

水辺のカサスゲ

2011-05-17 | 草花

カヤツリグサ科スゲ属のカサスゲ 2011.4.19

津市河芸町赤部の溜池。池の縁にカサスゲが群生していた。

『野に咲く花』によると,カサスゲは別名ミノスゲとも言い,「丈夫で長い葉を笠や蓑をつくるのに利用したことによる。平地の水湿地にふつうに生える高さ0.4~1㍍の多年草。根茎は太く,地下匐枝を長くのばして群生する。花期 4~7月。」


2011.5.7


2011.5.7


2011.5.7 カサスゲの雌小穂。鱗片の一部が赤褐色を帯びるのが特徴。

道路脇にナガミヒナゲシ

2011-05-16 | 草花

ケシ科のナガミヒナゲシ Papaver dubium L.

津市河芸町上野地区の道路脇にナガミヒナゲシが群生していた。

『新版三重県帰化植物誌』によれば,「檜山庫三が東京の採集品に和名新称した。本県では近年急増し各地の市街地や路傍に普通に見られる。」

『日本帰化植物写真図鑑』によれば,「地中海地方原産で,アメリカやアジアに帰化している越年生草本。春から夏に掛けて茎の上部に長い花茎を出し,直径2~5cmの橙色の4弁花を着ける。果実が細長いことからナガミヒナゲシの名がある。」

ずいぶん前に愛知県内の空き地で初めて見つけたときに,美しさに魅了され,種を採ってきて家の敷地に撒いておいたことがある。栽培するのに問題は無いのだが,増えすぎて,敷地外への広がりが心配になって数年後には全て抜き取った。
2011.5.13

里山のヒメハギ

2011-05-14 | 草花

ヒメハギ科のヒメハギ Polygala japonica


津市片田の丘陵地。日当たりの良い山道を歩いていて,ヒメハギが咲いているのを見つけた。初めて出会ったときから今まで,ずっと好きな花である。やさしくて,凛としている感じが良い。

『山に咲く花』によると,ヒメハギは「山野の日当たりのよいところに生える常緑の多年草。茎は細くてかたく,横に這い,高さ10~30㌢。花期 4~7月。」

2011.5.7



里山の虫こぶ2種

2011-05-13 | 虫こぶ

ナラメリンゴフシ

津市片田田中町の丘陵地を歩いた。虫こぶを2種類見つけたので紹介する。
コナラにはナラメリンゴタマバチが作ったナラメリンゴフシを1個見つけた。

クリ畑ではクリタマバチが作ったクリメコブズイフシをたくさん見つけた。『虫こぶハンドブック』によると,クリの新芽にできる虫こぶで春の萌芽当初はこのように桃赤色だが,やがて緑色に変わっていく。1940年頃に中国から侵入してきたという。

2011.5.7

クリメコブズイフシ


クリメコブズイフシ


クリメコブズイフシ

オオイシアブ初見日

2011-05-12 | ハエ目(双翅目)

ムシヒキアブ科のオオイシアブ Laphria mitsukurii Coquillett

津市河芸町の里山で,車のタイヤに止まったオオイシアブを見つけた。今年の初見である。オオイシアブを見つけたといっても,第一感はクロマルハナバチ雌かと思い込んでいたのだから,私の勘もええかげんなものである。こんなに早い時期にムシヒキアブに出会えるとは思っていなかったのだ。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,オオイシアブは「体長21~24㎜,翅長20㎜内外。体は光沢のある黒色で,長毛を密生する。触角は黒色で細い。顔面には黄色長毛を,口縁部には暗褐色ないし黒色の長毛を密生する。あしはじょうぶにできていて,とくに腿節は太い。脛節の長毛には褐色のものの方が多い。」など。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,オオイシアブは「体長15~26㎜。第4腹節以後が赤褐色長毛で覆われる。胸背の毛は主に黒色。普通種。」という。

2011.5.7  

河川敷のクサノオウ

2011-05-11 | 草花

ケシ科クサノオウ属のクサノオウ Chelidonium majus var. asiaticum

名張市の名張川河川敷を歩く。岸近くにクサノオウの群生が見られた。

『野に咲く花』によると,クサノオウは「日当たりのよい道ばたや草地,林縁などに生える高さ30~80㌢の2年草。花期 4~7月。茎や葉を切ると黄色の乳液がでるので『草の黄』だという説がある。この乳液は有毒だが,鎮静や鎮痛の作用もあり,尾崎紅葉が胃がんの痛みどめに使ったともいわれている。」という。

黄色の花や全体の印象から,優しさを感じてしまい気に入っている植物なのだが,人間にとって有毒な植物なのだと自分に言い聞かせている。姿かたちに惑わされてはいけないのだ。
ケシ科植物は普通アルカロイドを含んでいる。そして,ケシの花は優しく美しい。

2011.5.9

モトヨツコブゴミムシダマシ

2011-05-10 | 甲虫

ゴミムシダマシ科のモトヨツコブゴミムシダマシ Uloma bonzica Marseul

津市河芸町上野の里山で,松の朽ち木の中からモトヨツコブゴミムシダマシを見つけた。この個体は頭部にダニがくっついている。同定はN氏による。

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると,ヨツコブゴミムシダマシの和名で「9.5-10.8㎜。頭部のY字状押圧はやや深い。♂の前胸背板押圧部は深く,2対の小瘤状隆起は明確。前脛節は端部へと強くひろがり平圧され,内縁は単純,外縁には鋸歯状突起がある。朽ち木性。」などとある。

2011.4.19

大洞山のマルクビツチハンミョウ

2011-05-08 | 甲虫

ツチハンミョウ科のマルクビツチハンミョウMeloe corvinus Marseul

大洞山。車道脇の原っぱに座り込んで辺りを見回していると,ツチハンミョウの姿が目に付いた。N氏による同定はマルクビツチハンミョウであった。

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると,マルクビツチハンミョウは「7-27㎜。黒青色,ときに紺色を帯びる。触角は♂♀同様,短太,糸状であるが多少数珠状となる。成虫は早春より初夏にかけて出現し,雑草を食べる。」などとある。
2011.4.29