田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ヒメガガンボ科Symplecta (Symplecta)の一種

2010-02-26 | ハエ目(双翅目)
ヒメガガンボ科
ヒメガガンボ科Symplecta (Symplecta)の一種

2009.2.4 自宅の壁面に止まるヒメガガンボ科を見つけた。翅長は約7㎜。A1脈が大きく波打っている。自力で調べても,さっぱり分らない。
研究者にお尋ねした。
達磨と名乗る人が「属まで同定しますとこれはヒメガガンボ科のSymplecta (Symplecta)の一種。
日本からはホシウスバガガンボS. (S.) hybrida (Meigen, 1804)という種の記録があります。
おっしゃる通り,曲がりくねったA1脈とr3室にある余分な横脈が本亜属の大きな特徴です。」と回答してくれた。
Catalogue of the Craneflies of the Worldによると,世界で27種のSymplecta (Symplecta)がリストアップされている。また,ホシウスバガガンボの分布は日本だけでなく,カナダ,グリーンランド,オーストリア,スイス,ロシア,中国,北朝鮮,ネパールなど非常に広範囲である。

私が出会ったヒメガガンボがホシウスバガガンボであるのか無いのか,研究者でも判断できないのだから,お手上げである。新訂原色昆虫大図鑑ⅢにはSymplecta属の属名さえ載っていない。

ヒメガガンボ科

砂浜のアバタケシボウズタケ

2010-02-17 | 三重の生き物
アバタケシボウズタケ
ケシボウズタケ科ケシボウズタケ属のアバタケシボウズタケTulostoma adhaerens

三重の自然楽校リレーコラム第93話『海岸で「きのこ」ウォッチング』に海岸砂浜のきのこを探してみてくださいと書いてあった。きのこウォッチングクラブMIEの谷口雅仁さんのお話で,「三重県の海岸では、今のところナガエノホコリタケとアバタケシボウズタケ(仮称)の2種が同定可能な種として確認されています。コウボウムギなどの枯れたイネ科植物を分解して生活しているものと思われますが、詳しい生態はまだ良く分かっていません。」と解説されている。

田中川干潟に続く芦原海岸に出かけて,砂浜のキノコを探してみた。なかなか見つけられなかったが,毎年ツリアブたちを観察しているポイントで直径9~11mm程度の白っぽい小さなキノコを見つけた。海浜植物のケカモノハシがたくさん生えていて,近くにはチガヤやメリケンカルカヤも群生している砂浜で,ケカモノハシの枯れた茎葉や種子が落ちていて,この一角は砂の移動も比較的少ない場所である。あばたも確認できたので,たぶんアバタケシボウズタケであろう。ケシボウズタケの漢字表記は芥子坊主茸。

「きのこ雑記」というホームページに
「アバタケシボウズタケは頭部のサイズのわりに小さな口をもち、胞子に大きな疣がある。頭部には外皮の名残などが内皮と渾然一体となって残り、その名の由来どおりの「あばた」面となるものが多い。胞子表面は、光学顕微鏡では、単に大きな疣にしか見えないが、電子顕微鏡 (SEM) でみると非常に興味深い姿をしている。毛糸玉の表面を摘みあげたような姿をしている。
 この仲間は砂地や荒地に発生する。国内では遠州灘ばかりではなく、鹿島灘、九十九里浜、東京湾、伊勢湾から九州の浜に至る広い範囲で確認されている。従来、ケシボウズタケ T. brumale とされてきたものには、アバタケシボウズタケがかなりの確率で混じっている、あるいは誤同定されてきた恐れが大きい。」

Mycoscience 49巻6号 (2008年12月号) 掲載論文要旨の中に,浅井郁夫,浅井淑子の両氏が「日本産Tulostoma 属2新産種について」と題して次のように記載したとある。
「ハラタケ目ケシボウズタケ科の2種 Tulostoma adhaerensおよび T. fulvellumを,それぞれ静岡県産,滋賀県産の標本に基づいて形態学的特徴を記載し,日本新産種として報告した.また,T. adhaerensには頭部表面のまだら模様からアバタケシボウズタケと,T. fulvellumには担子胞子の形状よりタネミケシボウズタケと和名を新たに提唱した.」

アバタケシボウズタケはもう仮称を付けなくても良い。
    
参考文献
浅井郁夫(2008)ケシボウズをめぐる長~いお話.千葉菌類談話会通信,(24):6-15.

2010.2.16
アバタケシボウズタケ
頭部には砂粒がくっついている。

アバタケシボウズタケ
砂が取れた所がマダラ模様になっている。

アバタケシボウズタケ
柄の長さは30ミリ近くもあった。左のキノコの柄は途中で切れている。

観鳥台からの風景

2010-02-16 | 風景
観鳥台からの風景
田中川干潟の全景

風も無く,天気が良かったので,久しぶりにマリーナ河芸の展望台に登ってみた。
2010.2.13 

観鳥台からの風景
干潮時の田中川干潟。干上がることの無い澪筋が銀色に光っている。澪筋を歩いているときは安全だが,少し外れるとぬかるんでいて,長靴が抜けなくなることがある。釣り人が石積堤防を渡っている。

観鳥台からの風景
右奥の高い山は経ケ峰。中央奥の高原は青山高原。左奥の山は長谷山。手前の山は上野の丘陵地で,写真中央辺りに本城山公園がある。
堤防西には元養鰻池が見えている。
干潟の中に2本のハマボウの木が白っぽく見えている。海岸堤防際には海岸性のヒトハリザトウムシの老成個体がまだ生き残っている。カニたちはまだ砂の中や漂着物の下などで冬ごもりしている。

観鳥台からの風景
望鳥台から西の風景。鈴鹿峠方面を望む。防潮水門より上には海水は行かないようになっている。水門より手前の堤防にはマガキがたくさん付着している。それを獲っている人も見かける。手前はヨットの出入り口。

観鳥台からの風景
望鳥台から北西の風景。中央奥の山は藤原岳。右手奥の山は多度養老の山並み。
ヨットやボートがある場所はかつて干潟であった。

観鳥台
干潟から見た観鳥台。螺旋階段を登っていくと,あの手すりのある所から眺望が楽しめる。。写真右下にはハマボウの若木がある。

オオモンシロナガカメムシ越冬中

2010-02-15 | カメムシ
オオモンシロナガカメムシ
三重県立博物館の敷地内。崖下の石の下で越冬しているオオモンシロナガカメムシを見つけた。体長は12ミリ弱。石を裏返しにしても,ほとんど動かなかった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲには「体長15.0㎜。体は黒色。触角第4節の後半(基部を除く),前胸背後葉の中央部,小盾板の先端,革質部先端近くの三角紋と外縁前半は黄白色。腿節基部,脛節および付節は黄褐色,腹部各側板中央部は黄色。頭部の長さは幅に等しい。食草:ヤツデの実。」などとある。

日本原色カメムシ図鑑によると「体長10-12㎜。前胸背の後葉に不規則な黄白色の紋がある。翅は暗褐色で,基半には黄白色条が多く,先端近くに不規則な白色の大きな紋がある。森林の地表で生活し,落下した植物の実や地下茎などを吸収する。行動は活発で,夜間灯火に飛来する。」などとある。

図鑑によって,体長に差が有りすぎるように思うが,両図鑑とも学名も和名も同じであった。

2010.2.13

オオモンシロナガカメムシ

オオモンシロナガカメムシ

ヤマトムカシハナバチヤドリ

2010-02-11 | ハチ目(膜翅目)
ヤマトムカシハナバチヤドリ
コシブトハナバチ科のヤマトムカシハナバチヤドリ Epeolus japonicus Bischoff

津市の豊津海岸で2年前の秋に,キク科のコセンダングサに訪花したハナバチを見つけた。このほど,ようやく同定できたので紹介する。ヤマトムカシハナバチヤドリの雌である。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲには,コシブトハナバチ科の中で,学名をEpeolus japonicus Bishoffとし,ヤマトシロスジヤドリハナバチの和名で ,「体長♀9mm未満。体は黒色。前胸背板上の絨毛はやや黄味がかる。第1・2背板横帯は中央で切断される。第1背板基部にはあまり顕著でない白色絨毛がある。第5節先端にはにぶく灰銀色に光る短毛あり。秋季出現し,ヨメナ等の花に集まる。分布:本州・九州・対馬。」などとある。

秋に発生するアシブトムカシハナバチに寄生するという。
『鈴鹿市の自然』にはコシブトハナバチ科の記録は無かった。
2006年改訂版の千葉県レッドリストでは「生息環境は限られるが,個体数は多い模様」として,削除されている。

九大の昆虫目録によると,ミツバチ科とし,和名はヤマトムカシハナバチヤドリ,学名はEpeolus japonicus Bishoff, 1930 となっている。又,分布は 本州・九州・壱岐・対馬 としている。
記載者のスペルの相違はどちらかが間違えているのだろう。
2008.10.13

参考文献
宮本セツ,1960.Colletes,Hylaeus,およびEpeolus属花蜂の訪花性について 日本産花蜂の生態学的研究ⅩⅤ.昆蟲,28(2):13-130,日本昆虫学会.

ヤマトムカシハナバチヤドリ

フクラスズメ

2010-02-10 | 
フクラスズメ
ヤガ科シタバガ亜科のフクラスズメ Arcte coerula (Guenée, 1852)

津市内のとある堆肥置き場。乾燥した堆肥と同じ色合いの蛾がいた。動いたので,蛾だと分った。成虫で越冬するフクラスズメであった。翅長は35ミリほど。後翅に水色の模様がある。胴は太いが触角は細い。
成虫出現月は7月から3月。

『(続)故郷の動物』には,「ずんぐり太い胴,越冬する成虫も」とのキャッチフレーズを付けて,フクラスズメを次のように解説している。「前翅は暗褐色地に不規則な暗色の斑紋があり,後翅は水色の紋がよく目立つ。年二化で,成虫は8月頃と十月頃に羽化し,第二化の成虫はそのまま越冬する。晩秋には室内にも侵入し,廊下の隅や物置などで見かけることもある。」
2010.2.5

フクラスズメ

カワラヒワ

2010-02-06 | 
カワラヒワ
アトリ科のカワラヒワ Card/uelis sinica

田中川干潟の南端。堤防際の竹に止まったのはカワラヒワ。砂浜からやってきて,4~5羽の群れで竹に止まったが,すぐに西のほうへ飛び去った。
「国内で繁殖しているカワラヒワは,亜種コカワラヒワ」だと図鑑に載っていたが,よく分らない。
誰が植えたものか知らないが,この竹は小鳥たちに良く利用されている。

2010.2.4

アカオビケラトリ雌

2010-02-03 | ハチ目(膜翅目)
アカオビケラトリ雌
ケラトリバチ科のアカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)

2005.7.24 随分前の写真ではあるが,ようやく種の同定ができたので紹介する。
当時,マリーナ河芸の北に池と松並木と空き地があった。いろんな生き物が暮らしていた場所。楽しみいっぱいの自然観察ポイントであった。
このアカオビケラトリはマサキの葉上で死んでいた。
この辺りには,きっと彼らの幼虫の餌となるケラも住んでいたのだろう。
今は,みんな埋め立てられてしまった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ギングチバチ科のケラトリバチ亜科に属し,アカオビトガリアナバチの別名で「体長16~18㎜。黒色で,腹部第1~3環節は赤褐色ないし暗赤色である。本州・四国・九州・奄美大島から知られ,土中に営巣,ケラを幼虫の餌として狩る。」とし,追記に「和名と学名は,アカオビケラトリ Larra amplipennis (Smith)。琉球列島では北琉球をのぞき広く分布する。」とある。

神奈川県のレッドデータブック2006では絶滅危惧1類に選定されている。「南方系のアナバチ」で,ギングチバチ科に属するとしたアカオビケラトリの生息環境について,「ケラを狩って幼虫を托す。したがって,多少とも湿地に近い平地に見られる」と説明している。私が出会ったのも,まさにそういう環境であった。

「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年)によると, 福井県では本種を日本海側の北限となる分布限界種として,B(県レベルで重要なもの)ランクに区分し,「海岸や河川敷の開発が進み,ケラが生息する砂地が激減し,本種も絶滅の危機にある.保護対策としてはケラが生息する自然のままの砂地を確保することが望まれる.」と保護対策の必要性を訴えている。
また,同書によると,ケラトリバチ科のアカオビケラトリは「日中,土や砂の中に生活しているケラを巧みに追い出し,一時麻酔をして動きを止め,卵を産み付ける.しばらくして,麻酔から覚めたケラは砂の中に潜る.卵からかえった幼虫はケラの体を食い終えて,その近くで繭を作り,約1 ケ月後に成虫となる.一般に狩り蜂は巣を作って獲物を貯えるのであるが,本種は巣を作らず,巣坑をもったケラに卵を産み付ける珍しい習性を持った蜂である.南方系の蜂で個体数も少なく,7 月から9 月にかけて,海岸や河原の砂地やアリマキのついている葉の上に姿を現す.」などと解説している。

『鈴鹿市の自然』によると,6月中旬に鈴鹿川の河川敷で記録されており,三重県内から初めて記録された種で,「ケラを狩り,地中に穴を掘り営巣する。本州・四国・九州・台湾に分布している」と解説されている。科はギングチバチ科としている。

九大の昆虫目録によると,アナバチ科のケラトリバチ亜科で,学名はLarra (Larra) amplipennis (F. Smith, 1873),アカオビケラトリの分布は「本州・四国・九州・奄美大島・西表島・台湾・フィリピン・タイ」としている。

私が標本にしたこの個体は三重県で2番目の記録となる。
この種が土中に巣を作るのか作らないのか,現在は何科に属しているのか,分らないことばかり。

オオムカシハナバチ雄

2010-02-03 | ハチ目(膜翅目)
オオムカシハナバチ♂
キク科のセイタカアワダチソウに訪花するムカシハナバチ科のオオムカシハナバチ♂ Colletes perforator Smith

2008.11.20 晩秋の田中川干潟で出会ったハナバチがこのほど同定できたので紹介する。

加藤 真.2006によると,「日本南部で晩秋に活動するハナバチとしてオオムカシハナバチが知られているが,(中略)晩秋のキク科植物との結びつきが深い(Ikudome 1989)」

原色日本昆虫図鑑(下)によると,オオムカシハナバチは「体長約12㎜。黒く,全体に黄白色毛を密生しているが,腹部ではやや疎らであり,第1~5腹節背後縁には灰白色毛による横帯がある。前伸腹節三角状部はあらい網目状の彫刻がある。分布:本州・四国・九州;旧北区。」とある。また,同図鑑によると,ムカシハナバチ科は「粘土質の地面に孔道をつくり,営巣する。大群になることはあるが孤独性生活で,孔道内部はニカワ質の液で薄い膜をはる。花粉媒介者として有益なものである。」などという。

日本生態学会全国大会 ESJ55(2008) 講演要旨に掲載されている「オオムカシハナバチの雄間闘争での体サイズへの温度の影響」(九州大学の楢崎裕美・粕谷英一)には,
「オオムカシハナバチColletes perforatorのような土中に営巣する単独性のハチでは、オスが先に羽化することが多く、オスが巣穴の出口付近で羽化して出てくるメスを待ち構えて交尾するという交尾様式が見られる。その際に、1個体のメスに複数のオスが集まって団子状の塊を形成して争うことがある。このような物理的接触を伴う激しい雄間闘争では、体サイズが大きいオスほど有利で高い交尾成功を得ると考えられている。」などとある。

九州大学の日本産ハナバチ類画像データベースの中に日本産ハナバチ類の科および属の画像検索表があり,それによると,日本産ムカシハナバチ属の特徴は,「体に毛が多い。メスの脚には発達した花粉運搬毛があり、後脚腿節の下面に花粉槽を形成する。前翅の亜前縁室は3個ある。複眼の内側上部にある顔孔は広い。」

参考文献
Ikudome, S. 1989. A review of the family Colletidae of Japan (Hymenoptera: Apoidea). Bulletin of the Institute of Minami-Kyushu Regional Science 5: 43-314.
加藤 真.2006.周防灘長島における海岸植物の訪花昆虫相.日本生態学会中国四国地区会報60:21-27
オオムカシハナバチ♂

オオムカシハナバチ♂