田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ラカンミギワバエは日本最大のミギワバエ

2013-05-23 | ハエ目(双翅目)

ミギワバエ科ラカンミギワバエ属のラカンミギワバエ Dryxo nudicorpus Miyagi,1977

大阪市立自然史博物館が2013年3月に,所蔵する双翅目のうち8科を収録した目録を発行した.総ページ数100ページのうち80ページをミギワバエ科が占めていて,種の検索表や分布目録まで載せ,亜科名,族名,属名,種名に和名を使用している.

ラカンミギワバエという種名は,この大阪市立自然史博物館 所蔵 双翅目目録(1)で新称されたものである.Dryxo属は日本産ミギワバエの最大種.自然度の高い広い河川から,やや山地の渓流にまでみられる.日本産はDryxo nudicorpusの1種だけ.国内では北海道,本州(岩手,宮城,神奈川,静雄,三重,滋賀,京都,和歌山),四国(愛媛),九州(宮崎)に分布する.
同目録によると,三重県産は1952.6.13に大杉谷で伊藤修四郎氏が4頭採集されている.
なお,ラカンとは羅漢のことで,石仏の羅漢像をイメージして名づけられたものと名付け親から伺っている.

A Phylogenetic Study of the Tribe Dryxini Zatwarnicki (Diptera: Ephydridae)という文献によると,体長は4.75~8.85mm.北海道の定山渓で採れた標本が完模式標本となっているが,標本の状態が良くないらしい.Corpusはラテン語で,bodyを意味する.

Dryxo属の検索表によると,本種は
Dark band on tergites 3-5 lacking narrow, medial extension to posterior margin; postpronotal
seta present; scutellar disc, and in some specimens the frons, lacking a
gray, medial, microtomentose stripe (Palearctic)

三重県レッドデータブック2005では,「山地の清流の砂地に見られる.産地は自然度の高い所に極限されていて,詳しい調査を要する.」として情報不足種に選定されている.

私が現在までに確認できている県内の生息地は,櫛田川,宮川,大内山川.櫛田川の湿った砂地では本種はゆっくりと歩いていて,すぐに捕まえられた.しかし,宮川と大内山川では砂地のない石ころだらけの河川敷で見つけたものの,何度も俊敏に逃げられた.


2013.5.17 大内山川の石の多い河川敷にて Dryxo nudicorpus


2013.5.17 櫛田川の砂地の河川敷にて Dryxo nudicorpus

ジャケツイバラの花

2013-05-22 | 樹木

マメ科(またはジャケツイバラ科)ジャケツイバラ属のジャケツイバラ Caesalpinia decapetala var. japonica

2013.5.17 大紀町大内山の大内山川を上流へと向かった.4キロ先で工事中とのことで引き返すことにしたが,Uターンする空き地でジャケツイバラの黄色い花を見つけた.
つる性の落葉樹.花を見上げて撮影していたので,その高さは2メートルを超えていた.

花には多くの昆虫が集まるらしいが,茎や枝などに多くの棘があり,虫とり網が破れてしまうので網は振らなかった.

ジャケツイバラの幼虫




サカハチチョウ春型

2013-05-22 | チョウ

タテハチョウ科サカハチチョウ(アカマダラ)属のサカハチチョウ Araschnia burejana

2013.5.20 大台町,宮川の支流でサカハチチョウを見つけた.初めて見るチョウで,翅のにきやかな紋様に見惚れていたら,カメラを向けるのが遅れてしまい,その後は翅を開いてくれなくなってしまった.翅表が黒色の地色に赤橙色の斑紋だから,春型だと思う.

広島県蝶類図鑑によると,前翅長18~25mm.幼虫の食餌植物はイラクサ科のコアカソ,イラクサ,ヤブマオなど.低山地や山地の渓流沿いや林道でよくみられ,成虫は林縁や草の上などを,ときどき翅を小刻みに震わせ,滑空を混じえながら飛翔する.


グンバイトンボ♂

2013-05-21 | トンボ

モノサシトンボ科のグンバイトンボ Platycnemis foliacea sasakii

2013.5.20 三重県大台町の宮川河川敷にて,グンバイトンボを見つけた.
グンバイトンボ♂は,中・後肢の脛節が真っ白い軍配状を呈する.三重県レッドデータブック2005で絶滅危惧ⅠB類に選定されている種である.

八木孝彦氏の三重県のトンボ記録(3)によると,県内においても中央構造線南側に沿う帯状のエリアのみに限定され,産地も多くない.成虫は6~7月に多い.宮川の記録もあるが,「全くの本流岸辺草地にいたもので,どこから来たものか分からない」という.私が見つけたのも同じ環境のところであった.

本種の三重県最早記録はこれまで5月22日であったが,私が見つけたのは5月20日なので私が発表すれば5月20日が三重県最早記録となる.

かつて本種が群棲状態で見られた南伊勢町の押淵湿地は,もはや湿地ではなくなったと聞いている.あの湿地が貴重な湿地であるということは十分に知られていたはずなのに.
櫛田川水系での記録は少なく,雲出川水系では見つかっていないようだ.

キバネオオヒラオオドリバエ

2013-05-13 | ハエ目(双翅目)

オドリバエ科のキバネオオヒラオオドリバエEmpis(Planempis) latro Frey 2013.4.8 中ノ川

4月中旬頃,三重県内の河川敷をうろついていると,アブラナ科の花にキバネオオヒラオオドリバエを見つけることがある.なかなか見つからないが,出会えば,すぐに本種と判る.三重県内には近似種はいないと思われる.
図鑑によると,体長は12ミリ前後で,世界最大のオドリバエの1種.翅は黄褐色で,脚は黒色で頑丈.本州(近畿・中国地方)に分布し,平地から低山地の森林に生息し,成虫は中春から晩春にかけて出現.

安濃川,雲出川,宮川にもいた.群れているのはまだ見たことがない.昔の図鑑には,キバネオドリバエの和名が使われている.


2013.4.8 中ノ川


2013.4.18 宮川