田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

三重県のヤマトツルギアブ

2011-04-29 | ハエ目(双翅目)

ツルギアブ科のヤマトツルギアブ Dialineura albata (Coquillett. 1898) 2011.4.10 三重県津市河芸町の豊津海岸にて

ヤマトツルギアブが三重県にも居るということが判ったのは昨年の5月のことである。私が見つけたのは津市北部の砂浜海岸だ。二年前の画像を調べたら,ヤマトツルギアブの写真も撮ってあったが,そのときは種名なんて,さっぱり判らなかった。

桜の花が開花する頃から出現すると聞いていたので,4月の初めから探していたが,今年は開花が遅かったこともあってか,4月10日になってようやく見つけた。今年の初見日にいきなり交尾シーンと出会った。交尾中のカップルはなかなか逃げないので撮影にはもってこいである。
昨年見つけた2ヶ所の生息地では,同じ場所にいつも何匹もがたむろしていた。何のために,毎日同じ所に居るのかが判らなかったので,今年も砂浜へ通ってみようと思っている。
5月の中旬になれば,ムシヒキアブ科Machimus属の仲間がヤマトツルギアブを食べに来る。このムシヒキアブの種名もいずれ解明したいと考えている。


ヤマトツルギアブ交尾中(左が雌) 2011.4.10


ヤマトツルギアブ♂ 2011.4.21


ヤマトツルギアブ雌

ヤマトツルギアブ

我が家のニホンヤモリ

2011-04-28 | 三重の生き物

ヤモリ科のニホンヤモリ Gekko japonicus

庭で使っていた寒冷紗を片づけようとしたときに,ニホンヤモリの姿に気が付いた。我が家でヤモリなんて,子供のときに見た記憶がある程度だ。ヤモリのためを思い,寒冷紗を片付けるのをやめた。

『故郷の動物』(冨田靖男著)によると,「ニホンヤモリは全長12センチ,頭胴長6.5センチ内外である。しかし,尾部をよく自切するので再生途中のものが多く,全長はあまりあてにならない。四日市市で調べたものは八割ほどに,少なくとも一度は自切経験をもつ個体が認められた。
体にはトカゲやカナヘビのような鱗片はなく,代わりに小さな顆粒で覆われる。眼はまぶたが不動で,丸いレンズ状の膜で覆われているため閉じることができない。また,雄は前肛部に6~8個の小孔が認められるので,雌雄の区別は容易である。
本土では,主として家屋に生息し,昼間は天井裏や戸袋,ひさしのすき間などに潜んでいる。夜になると門灯や窓際の明りの近くに来て光に集まる昆虫などを捕食する。」などとある。

2011.4.19

道端のツボミオオバコ

2011-04-26 | 草花

オオバコ科のツボミオオバコ Plantago virginica L.

鈴鹿市三宅町の国道306号線沿いで,北アメリカ原産の帰化植物であるツボミオオバコ(別名タチオオバコ)と出会った。道端なので,車のタイヤに踏まれた株もあった。

『日本帰化植物写真図鑑』によると,ツボミオオバコは「ハワイ,アジアなどに帰化している一年生草本。全体に白色の短毛を密生する。現在では,関東北部から沖縄まで分布し,しばしば道端や芝地などに群生する。」などとある。

『新版三重県帰化植物誌』によると,「久内清孝が愛知県岡崎市(1913)で採集した標本について報告した」という。
2011.4.24


ハマダラハルカ

2011-04-20 | ハエ目(双翅目)

ハルカ科のハマダラハルカ Haruka elegans Okada, 1938

鈴鹿市西庄内町の一ノ谷。野登山を目指して登っていくが,斜面が急峻になってきたところで諦めた。途中,明るい森林内の低いところをハマダラハルカが飛び回っていた。

三重県レッドデータブック2005では情報不足種とされており,「第3紀周北極要素を示す種として学術的に貴重であるが,現在のところ広く分布し,個体数も多い。」としている。周北極要素とは,北半球の温帯から亜寒帯にかけて広く分布している種を指して使われる用語で,北米と極東アジアの植物要素の類似性を説明するときに「第三紀周北極要素」などという用語が使われる。温暖な時代に北極で暮らしていたハマダラハルカは,地球の寒冷化に伴い南下して今や日本で生き延びているということなんだろう。

三重県内の記録は,蒔田実造氏が藤原岳坂本登山口で記録し,「羽斑春蚊。ハマダラハルカは1属1種からなる日本特産種で,本州,四国,九州に分布する。春蚊の名前が示すように早春3~4月に発生,成虫の出現時期が10日間と短いためか,採集例は少ないようである。」と三重昆虫談話会の会誌に報告している。「本種は三重県でも記録は少なく」と言っているから,他にも記録があるのだろうが,私は未だ知りえていない。

福井県レッドデータブックでは要注目種に選定され,「春に低山地の雑木林で見かけられる.黒っぽい蚊のような双翅類.体長約10mm ,翅長8mm 前後で,体は全体黒い.黒褐色の翅には,黄白色半透明の斑紋が12 個ほどある.
幼虫は,朽ちた広葉樹の樹皮下で育つ.成虫も,樹幹や倒木の上に止まっている姿がよく見かけられる.」と,種の特性が解説されている。

京都府でも要注目種に選定されており,「成虫は早春3~4月に出現し、林間を低くかつ素早く飛翔し、交尾のため立木に集合する。幼虫はネムノキの朽木の樹皮下に生育する。京都府では個体数も多く、良好な森林のみならず周囲の二次林でも見られる。」と生態的特性などが解説されている。

愛媛県では絶滅危惧種に選定されている。「ハルカ科は世界に3属3種が知られるのみで、ハマダラハルカは日本特産の貴重な種である。」と特記されている。

大分県では情報不足種に選定され,「分布は局地的であり、雑木林の消滅によって生息地を失う危険性が増している。」としている。

栃木県では,「環境省のレッドリストで情報不足(DD)とされる。」との理由から要注目種に選定している。形態と生態について「他に似た種がいないため、同定は容易である。
 成虫は4月ごろ出現し、低山地~山地の森林で見ることができる。昼行性で、雄は早春の見通しのよい林内をすばやく活発に飛び回り、木の幹に止まっては飛びたつ動作をくり返して交尾相手を探す。成虫の発生が早春に限られることと、動きがすばやく見つけにくいことから、分布記録は少ないが、発生地での個体数は決して少なくない。幼虫は立ち枯れや地面に落ちて朽ちた枯れ枝の樹皮下にすむ。食餌としてネムノキの枯れ枝が報告されているが、この他の植物も利用するものと思われる。」と解説している。

岡山県では,「森林性の昆虫で、既記録地、個体数は共にそれほど多くない。」との理由から情報不足種に選定されている。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,「体長12㎜,翅長7㎜。全体黒褐色で光沢があり,黒色毛が多い。触角は短く15節よりなり,頭長の約2倍の長さ。翅は黒褐色で,黄白色のまる味のある半透明の斑紋が大小合わせて15個内外あり,R1脈末端には黒色の縁紋がある。」などとある。

2011.4.17



マダラメバエ

2011-04-19 | ハエ目(双翅目)

メバエ科のマダラメバエ Myopa buccata (Linnaeus)  

畑の白菜が黄色い花を咲かせている。ミツバチ類も訪花しているが,一匹だけ見慣れぬ虫を見つけた。頭部の様子はメバエ科のようであった。調べると,マダラメバエであった。これまでに見た記憶はない。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長7~11㎜。ナカホシメバエに似るが,翅は暗褐の不規則な斑紋を持ち,r-mはつねに無色。腹部第2節は中央を残して淡褐。脚の斑紋はより明らか。3~5月,ナタネの花などに集まる。本属の幼虫はハナバチ,スズメバチ類に寄生する。」

原色日本昆虫図鑑(下)によると,「体長6~11㎜,翅長4~8㎜。体は主として赤褐色。口吻は細長く,胸部の長さよりもやや長い。頭部は大きく胸部と同幅で淡黄色。前額にY字形の赤褐色紋があり,頬部は白色。触角の第3節は第2節よりも短い。胸部背面はほぼ正方形で,黒褐色の3縦条がある。あしは短くじょうぶで,とくに各腿節は太い。」など。

2011.4.19



津市のコノハナザクラ

2011-04-16 | 樹木

コノハナザクラ Prunus Jamasakura Sieb.ex koidz.ver.nahohiana koiz.etk.takeuchi 2011.4.12 三重県津市河芸町上野

10年前の2001年4月に,三重県環境保全事業団の二人の職員が近くの丘陵地で1株のコノハナザクラを発見した。全国で5番目に発見された株で,京都府と三重県にしか分布していない種だと聞いている。発見当時は新聞にも紹介されたが,その所在を知る人は多くない。満開の頃,毎年眺めに出かけているが,この桜を見物する人とはこれまで出会ったことがない。

葛山(2008)によると,「和名は此花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)にちなんでコノハナザクラと名づけられた。本変種は,葉や葉柄・花柄に毛がないこと,花より先に赤褐色の葉が展開することなどからヤマザクラのグループに属し,開花はヤマザクラより一週間ほどおそい。員弁町での観察記録では4月15日~18日が見ごろである。花は八重で,一輪の花弁の数は40~50枚からなり,花弁の形はヤマザクラにくらべて細長い,さらに,一輪の花にめしべが通常2本,ときに1~5本と変異に富んでいる。」

葛山(2008)は「津市の河芸町久知野にて」としているが,河芸町上野が正しい。
この自生地は上野地区の個人所有地である。

員弁町(現いなべ市)では天然記念物に指定しているが,津市では,調査はしているようであったがこれまでのところ指定していないようだ。ひょっとしたら,津市のコノハナザクラは真のコノハナザクラではないのかも・・・・・。

参考文献
葛山博次 (2008) 此花咲耶姫にちなむコノハナザクラ.三重生物,(58):11-12


コノハナザクラ 2011.4.12 


コノハナザクラ 2005.4.15 崖下は伊勢鉄道が走る。


コノハナザクラ 2005.4.15


コノハナザクラ 2005.4.15

ノコギリカメムシ

2011-04-14 | カメムシ

ノコギリカメムシ科のノコギリカメムシ Megymenum gracilicorne Dallas

四日市市,鈴鹿川河川敷。朽ち木に見慣れないカメムシを見つけた。図鑑でしか見たことのないノコギリカメムシだ。

日本原色カメムシ図鑑によると,「体長12-16㎜。体は赤銅色の光沢を帯びた黒褐色で,頭部は大きく突出する。和名は,腹部の外縁がノコギリの歯のようになっていることに由来する。カラスウリ,黄カラスウリ,スイカ,カボチャ,キュウリなどのウリ科植物に寄生し,ウリ類の害虫とされている。」

島根県のレッドデータブック平成16年3月改訂版では,「農耕地周辺の水辺の草本群落で発見されるカメムシで、生息地は局限され個体数も少ない。」として情報不足種に選定されている。又,その概要の中でノコギリカメムシは「前胸背の前縁と側縁に突起があり、腹部側縁は鋸歯状となる。」と記載されている。
2011.4.13


アトモンサビカミキリ

2011-04-13 | 甲虫

カミキリムシ科のアトモンサビカミキリ Pterolophia (Pterolophia) granulata (Motschulsky, 1866)

四日市市,鈴鹿川の河川敷。アブラナ科の花上でアトモンサビカミキリを見つけた。カメラを近づけると,どうやら気付かれた様で翅を広げるや直ぐに飛んでいってしまった。顔を見たかったのに,残念。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると,「7-10㎜。上翅端は幅広くまるめられる。4~8月,温~暖帯樹林帯のいろいろな広葉樹の伐採枝・枯枝に多い。成虫は野外越冬する。」
2011.4.12


今井専蔵院のシダレザクラ

2011-04-08 | 樹木

津市一身田西豊野に今井姓の多い今井という地区がある。この地区に今井山観音寺専蔵院という寺があり,境内いっぱいに枝を広げたシダレザクラが見事である。京都の醍醐寺からもらってきたとかで,醍醐桜の看板もある。
例年,ソメイヨシノよりも早く咲き出すので私は3月末には観桜に出かけているが,今年は一週間ほど遅れているようで,4月4日だというのに満開にはなっていなかった。

津市内のいろんな所へ樹木ウオッチングに出かけているが,私はこの今井の寺が最も気に入っている。寺の横から裏山へ抜ける小道があって,ヤブツバキの赤い花も楽しめる。
来年は誰かを誘って観桜に出かけよう。







セグロセキレイとハクセキレイ

2011-04-04 | 

セキレイ科のセグロセキレイ Motacilla grandis 

津市河芸町中別保地区の水田でセキレイ科のセグロセキレイとハクセキレイを同時に見かけた。
ハクセキレイは干潟で良く見かける。セグロセキレイも時々干潟に姿を現す。
セグロセキレイは山間部の農耕地で良く見かけるが,ハクセキレイは山間部では見かけないように思う。
背中の黒色だけを見て,両種を見分けようとすると,時々失敗してしまう。セグロセキレイだと思うような黒色なのに,良く見るとハクセキレイであったことが何度もある。

セキレイ科の鳥は尾羽を上下に動かす。剣道をやっている知人から「セキレイのごとく竹刀を振る」なんて言い回しを聞いたことがある。それ以来,尾羽を振るセキレイを見るたびに剣道を思い浮かべてしまう。
2011.4.2


セグロセキレイ


セキレイ科のハクセキレイ Motacilla alba lugens


ハクセキレイの過眼線は黒い