田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ネグロクサアブ雌雄

2012-05-25 | ハエ目(双翅目)

亀山市の森林公園.オサムシの仲間がネグロクサアブ雄を引きずっているのを見つけた.巣穴へ持ち込もうとしているのか.
このネグロクサアブ雄は羽化後まもなくオサムシに捕えられたのではないだろうか.翅が少し破損しているのかもしれないが,十分に伸びきっていないようだ.本来こんなに短いことはない.
近くで,雌にも出会った.

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによれば,クサアブ科のネグロクサアブCoenomyia basalis Matsumuraは「♀:体長25mm内外.褐色,黄褐毛を密生.頭部は小さく,額は狭く前方に開く.♂:体長17mm内外.黒色.黄毛を密生.触角は黒褐.複眼は接する.5~7月.」などという.

三重県では,これまで亀山市以外からは見つかっていない.
大分県では「保存のよい森林の朽木に生息するが、希少である」とし,愛媛県では「北海道では平地でも見られるが、四国では山地に発生する.生態はまだよく判っていない.」とし,環境省と同じく情報不足種としている.
京都府では「生態は不明.ただ比較的湿潤な環境に生息するように思われる.成虫の発見例は極めて少なく,何らか目に触れにくい生態をもっているかもしれない」とし,準絶滅危惧種に選定している.

2012.5.3に出会って以降,全く姿を見かけないので,きっと個体数も少ないのであろう.


ネグロクサアブ♂


ネグロクサアブ♀

シギアブ科のRhagio miyonis

2012-05-17 | ハエ目(双翅目)

シギアブ科のRhagio miyonis Nagatomi, 1952

亀山市の森林公園やその周辺部で見かけたシギアブがRhagio miyonis と判明した.鈴鹿山脈の朝明渓谷や津市美杉町の大洞山,津市白山町川口でも見ている.樹木に止まっていることが多いように思う.明るい林縁にもおれば,薄暗い森林公園内にもいる.翅の黒色の濃淡は個体差があるようだ.
複眼がくっついているので,2枚の写真とも♂である.

三重県ではこれまでに採集記録がされていないようだ.

2012.5.10


アシナガオトシブミ

2012-05-03 | 甲虫

オトシブミ科のアシナガオトシブミPhialodes rufipennis

亀山市の里山公園.林縁の草むらでアシナガオトシブミを見つけた.艶のある美しい赤色に魅せられてしまった.

原色日本甲虫図鑑Ⅳ によると,「6.5-8.0mm.前胸は赤いものから黒いものまである.♂の前脛節は長くて内方へ曲がる.本州・四国・九州.コナラ・カシなどの新葉を両側から切って巻く.普通.」

私が出会った個体は前胸の赤い♂ということ.

2012.4.29


ガガンボ科のTipulodina joana

2012-05-02 | ハエ目(双翅目)

ガガンボ科のTipulodina joana (Alexander, 1919)

菰野町田口.大きな木の幹が二股に分かれているその窪みに腐葉土が溜り,草も生えている,そこにこのガガンボが何やら暴れている様子.捕まえようとしたら,下に落ちてしまった.翅長は約18mm.

どうやらTipulodina joana 雌のようである.触角は黒く,触角柄節はオレンジ色.後脛節の基部が白っぽくなっており,翅の柄部が長く,先端部は黒褐色で,A2室が非常に狭い.タイプ標本は東京目黒産の♂.
この種の新種記載は文章だけで,何の図も示されていない.Alexanderさんも困った人だ,後世の人間が困るじゃないか.

2012.4.30



マダラガガンボ近縁種♂

2012-05-01 | ハエ目(双翅目)



ガガンボ科Nippotipula亜属のマダラガガンボ近縁種Tipula (Nippotipula) sp.

菰野町の県民の森で,マダラガガンボ近縁種♂を見つけた.翅長は約20mm.マダラガガンボTipula coquilletti♂とは交尾器の形が異なるので区別できる.

『日本産水生昆虫』をみると,「近年の研究で,翅や体の模様は酷似していながら,体の大きさと脚の色,雄交尾器から区別できる2種が同所的に分布していることがわかった」という.しかも「両種ともに北海道から九州南部まで分布している」という.また,この近縁種はマダラガガンボよりも「体がやや小さく,脚は全体的に暗褐色,雄の第9腹板は平滑で突起をもたない」という.
なお,2種の内どちらが真のTipula coquillettiなのかは,原記載の文とAlexanderの図とが食い違っているようなので,まだまだ時間のかかる問題らしい.

これまで1種だけと思われていたものが2種に分かれるとなれば,過去の記録の整理が大変である.きちんと標本が残されておれば,確認できるのだが.......

マダラガガンボ

2012.4.27

マダラガガンボ近縁種Tipula (Nippotipula) sp.の翅と交尾器