田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

溺れるマメコガネコツチバチ雌とアカアシクロツチバチ雌

2010-10-31 | ハチ目(膜翅目)

コツチバチ科のマメコガネコツチバチ♀ Tiphia popilliavora Rohwer

津市の豊津海岸。砂浜に放置されたいくつかの水槽のひとつに雨水がいっぱい溜まっている。その中で小さな2匹のハチが脚を動かしている。溺れているのだ。
足元にあったイネ科の穂を放り込んでやると,しがみついてきた。水槽の縁に穂を引き寄せると,ハチが自力で水槽の壁を登ってきた。

ハチはアカアシクロツチバチのペアーかと思っていたが,穂にしがみいてきた個体の翅に明瞭な縁紋がない。知人に確認してもらうと,この個体はマメコガネコツチバチ♀ と判った。体長は8ミリを少し越えるくらいで,アカアシクロツチバチの雄よりも少し大きく雌よりも少し小さい。

てっきりアカアシクロツチバチが仲良く雌雄揃って水でも飲みにきて,この日は西風が強かったので水槽内に落ちてしまったのだろうと思い込んでいた。2種類のコツチバチだったとは。本当に同定は難しい。
水に濡れた翅では水面から飛び立てないようだ。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカアシクロツチバチの「♂は全体黒色。第5腹板両側の歯状突起は小さく,前胸背板の横隆起は側方で角をなして突出する。」などとある。
マメコガネコツチバチについては,私は何も資料を持ち合わせていない。何に載っているのだろう。

2010.10.30

水面から水槽の壁面を這い上がるマメコガネコツチバチ雌


水槽から脱出したコツチバチ科のアカアシクロツチバチ♀ Tiphia biseculata Allen et Jaynes,1930

砂浜にアカアシクロツチバチ

白い蛾は何者か

2010-10-28 | 

2010.10.17 鈴鹿市の東海自然歩道を歩いていて,緑のシダの葉上で交尾している小さな白い蛾を見つけた。

葉上にいるのはこのカップルだけで,他の個体は皆葉裏に隠れて止まっていた。東海自然歩道沿いの比較的明るい場所にいた。林の奥にも同じシダが生えていたが,そちらには居なかった。ほんの数メートルの範囲内に10頭程度が集団で暮らしていた。自然歩道上を私の膝くらいの高さでふらついて飛んでいる個体も居た。

キバガの仲間かと思うが,科名すら判然としない。前翅長は約3mm。

気になったので,1週間後に会いに出かけた。彼らはまだ同じ所で暮らしていた。
シダの名前も判らない。






砂浜のアカゴシクモバチ 蜘蛛を狩る

2010-10-27 | ハチ目(膜翅目)

巣穴を前脚だけを使って掘るアカゴシクモバチ Anoplius (Arachnophroctonus) reflexus (Smith, 1873)

2010.10.24 津市の豊津海岸において,クモバチ(ベッコウバチ)科のアカゴシクモバチがヤマジハエトリ♀を狩って,巣穴まで運ぶ様子を観察した。

狩ったのは11時20分過ぎ。
狩った場所から約20メートル離れた所に巣穴を掘ったが,その道中アカゴシクモバチはヤマジハエトリの脚を大顎でくわえて後退運搬した。
運搬の途中で何度か蜘蛛を置いたまま進行方向の方面に出かけてなかなか帰って来ないことがあった。巣穴を掘る適当な場所やら運搬経路を探し回っているように見えた。蜘蛛を砂上に置いたまま出かけることも数回あったが,オオフタバムグラの草上に引き上げてから出かけることも二度あった。10分以上戻ってこないときもあったが,ちゃんと狩った蜘蛛の置いてある場所に戻ってきた。

13時過ぎ,巣穴を掘る場所が定まった。狩ってから1時間半以上も経過している。掘る作業は前脚だけを使う。蜘蛛を巣穴の近くに置いて巣穴を掘り始めてからでも,作業を中断して30分以上出歩くことがあった。
巣穴が未完成であるにもかかわらず作業を中断して,巣穴の近くに,2ヶ所(一つは50cm離れたところ,もう一つは1m離れた所)の浅い巣穴を掘った。他にも数ヶ所で巣穴を掘る仕草をした。偽装工作なのか?

14時20分過ぎ,まだ巣穴を掘っている。蜘蛛を狩ってから3時間が経過したにもかかわらず,巣穴は完成していない。
昼食も取らずに観察していたので,いったん砂浜を離れた。
16時半頃,巣穴を訪ねると蜘蛛の姿もアカゴシクモバチの姿も見当たらなかった。巣穴は封鎖されていなかった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,アカゴシクモバチは「体長6~14㎜。黒色で,第1~2腹節は赤色。白色微毛を密生し,特に前伸腹節,後基節上面で顕著。翅は僅かに曇り,外縁はやや広く暗色。♀の前脚付節には櫛歯状の刺の列があり,尾端に剛毛を密生する。ハエトリグモ・コモリグモ類を狩り,地中に単房巣を掘って搬入する。」などとある。

神奈川県昆虫誌Ⅲによると,「海浜などの砂浜に住む。以前は極めて多かったが,今ではそんなに多くない。安定した砂地が減少したということだと思われる。」

三重県内での記録はこれまで無いかもしれない。


狩った蜘蛛を近く(写真の右下)において,巣穴を掘るアカゴシクモバチ


狩った蜘蛛をオオフタバムグラの草上に引き上げている。


巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ


巣穴への運搬の途中,狩った蜘蛛の横で体の手入れをするアカゴシクモバチ


ヤマジハエトリ♀を大顎でくわえて後退運搬するアカゴシクモバチ


アカゴシクモバチに狩られたヤマジハエトリ♀Asianellus festivus

アカゴシクモバチが営巣場所に選んだ砂浜の様子。コウボウムギと帰化植物のオオフタバムグラが生えている。写真の上部にはチガヤ群落がある。

センダンキバガ

2010-10-26 | 

キバガ科のセンダンキバガ Paralida triannulata Clarke, 1958

田中川干潟を一望する絶好の場所に大きなセンダンの木がある。干潮の干潟にアオバトがやってくるのを待つ時もこのポイントが良い。
このセンダンの木の側で,アオツヅラフジの葉裏に隠れた蛾を見つけた。どうやら幼虫がセンダンを食餌植物とするセンダンキバガのようである。

開張は22~24㎜。本州(千葉)と九州(佐賀)に分布する。ネット検索すると,大阪府,京都府や四国,熊本県,宮崎県,鹿児島県でも見つけている人が居る。
まるでニワトリのトサカみたいだこと。
2010.10.23


ウスバキトンボ羽化殻

2010-10-25 | トンボ

トンボ科のウスバキトンボPantala flavescens (Fabricius) の羽化殻

豊津海岸。砂浜にいくつかの大きな水槽が放置されている。水抜きの穴が塞がれていないので,さして水は貯まっていない。その水槽の壁を途中まで登ってきて羽化したウスバキトンボの羽化殻を複数見つけた。大きさは26ミリ。
よくもこんなところでヤゴが生きていけたものかと感心した。

腹部第8節と9節の側棘の様子,そして腹部の斑紋の様子からウスバキトンボと知れた。背棘は腹部第2節-4節にあるようだが.羽化殻では判らない。

2010.10.24

手乗りヤマトマダラバッタ

2010-10-24 | バッタ類

バッタ目バッタ科のヤマトマダラバッタ Epacromius japonicus (Shiraki,1910)

河芸町中別保地区の豊津海岸。砂浜を歩き回っていると,ヤマトマダラバッタたちが次から次へと飛ぶ。10月の下旬でも元気だ。
雌のヤマトマダラバッタが大人しくあまり動こうともしないので,手を差し伸べると私の手に移ってきた。手を高く上げても大人しくしていた。

先日,手乗りのオカメインコを亡くした。亡くなる前日に動物病院へ連れて行ったが,待合室や医者の前では元気を装っていたが,家に帰り着いた途端,ほとんど動けなくなってしまった。徹夜して看病したが,翌早朝に冷たくなってしまった。
手乗りのヤマトマダラバッタを見て,オカメインコを思い出していた。
2010.10.22




クルマバッタモドキ♀緑色型

2010-10-23 | バッタ類

バッタ科のクルマバッタモドキ♀緑色型 Oedaleus infernalis 

津市河芸町一色の豊津海岸でクルマバッタモドキ雌の緑色型を見つけた。緑色型との出会いは4年振り。4年前は雄,緑色の部分は同じところ。草を食べていたようで,まわりに緑色の糞がいくつも有る。
近づいても少しも逃げない。糞をしながらの食事中なら,逃げられないよな。
2010.10.14

クルマバッタモドキ緑色型

河川敷のメハジキ

2010-10-22 | 草花

シソ科のメハジキ Leonurus sibiricus

鈴鹿市の東海自然歩道を歩いた。流れのない川があって,その河川敷をうろうろしていて,淡い紅紫色の花に気がついた。何株もあった。高さは40センチ前後のものが多かった。
メハジキ属のメハジキだと思う。
『野に咲く花』によると,メハジキは「野原や道ばた,荒れ地に生える高さ0.5~1.5㍍の多年草。全体に白い毛が密生する。根生葉は卵心形で長い柄があり,花期には枯れる。」

メハジキの葉は成長するにつれ,どんどん変化していくようである。

2010.10.17



砂浜のハイイロクモバチ

2010-10-21 | ハチ目(膜翅目)

クモバチ科のハイイロクモバチ Pompilus cinereus (Fabricius)

津市北部の砂浜海岸。町屋海岸から河芸の海岸にかけて,海浜植物が生えている砂浜を忙しそうに歩き回っている小さなクモバチがいる。探せば,砂浜のあちこちに彼らの巣穴がいくつも見つかる。オオフタバムグラが群生している砂浜であろうと,ハマボウフウ・コウボウシバ・ハマニガナの群落であろうが,変わりなく彼らは暮らしているように感じられる。
この日は一つの巣穴に2頭のクモバチが入れ替わりながら巣穴を掘ったり,出入りしているのを見つけた。

ハイイロクモバチだと思う。三重県内では未記録種ではなかろうか。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ハイイロクモバチは「体長♀5~14㎜,♂4~7.5㎜。黒色。顕著な灰白色の微毛を密布し,特に腹部の各背板後方では幅広い帯斑となる。各脚脛節の距は乳白色。頬(♀♂)や前胸側板,前脚基節(♀)に白色長毛が密生する。翅は透明で,前翅の外縁は幅広く曇る。海浜や川岸に棲み,各種徘徊性のクモを狩り,これを前進運搬する。獲物をいったん砂中に隠してから,単房巣を掘る。分布:本州・沖縄・八重山諸島;旧世界(含オーストラリア)。

石川県では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
石川県のレッドデータブックによると「比較的自然に恵まれた海浜植物帯に生息している。徘徊性のクモを狩り、砂中に穴を掘り産卵する。営巣は海浜植物群落内およびその周辺と思われる。アオスジクモバチに似るが、各肢脛節の距が乳白色であること、メスの前肢付節には櫛歯状の刺列が発達していることなどから区別できる。別名、ナミコナフキベッコウ。」

2010.10.14



河川敷のツリフネソウ

2010-10-20 | 草花

ツリフネソウ科ツリフネソウ属のツリフネソウImpatiens textorii Miq.

津市の安濃川の河川敷でツリフネソウを見つけた。赤い花は目立つが,こんな場所へは私しか近寄らない,なんか素敵な人を独り占めしているような感じがした。

『野に咲く花』によると,「やや湿ったところに多い高さ50~80㌢の1年草。茎はやや赤みを帯び,節がふくらむ。花序は葉腋から斜上し,紅紫色の花を数個つける。花期8~10月」

実物はもっと赤い色なのに,なぜか赤さが写真では失われてしまって青みがかって見える。何枚撮っても同じようになってしまう。カメラの設定によるものなのか,よく判らない。

2010.10.18

答志島のクロマドボタル幼虫

2010-10-18 | 甲虫

クロマドボタル幼虫

夜の答志島を何人かで歩き回った。
暗闇の中,道路脇の草むらの中で光っているものがある。最初に気付いたのは鳥屋のI氏だ。誰かがクロマドボタルの幼虫じゃなかろうかと言う。別の者が幼虫を見つけ出して,道路上に置いた。長さは2センチほど。頭部がどっちにあるのか,よく判らないまま撮影した。
クロマドボタルの答志島での記録はあるのだろうか。幼虫は甲虫屋のIが持っていった。
私はゴミムシの仲間を見つけたが,甲虫屋が欲しいと言うので差し上げた。
鳴く虫も何種か見つけたが,全てK氏に渡した。

2010.10.10

後日談
2011.2.1東京都のO氏から「この幼虫はオオマドボタルの可能性があります。クロマドボタルとオオマドボタルは幼虫での同定は出来ません。成虫でも雌では両種の区別はなかなか出来ません。両種の分布は中央構造線を境にして分かれておりまして,三重県では熊野灘沿岸地域ですとオオマドボタルが分布しています。答志島は分布の境にありますので,どちらとも言い切れません。雄の成虫が見つかるといいんですが,なかなか見つからないものです。答志島のマドボタルについてはこれまで記録が無いと思います。」と教えていただいた。

答志島のツルボ

2010-10-17 | 草花

ユリ科ツルボ属のツルボ Scilla scilloides

答志島のメインロードを歩いていると,崖下の日当たりの良い道路脇に淡紅紫色の花が目に入った。ツルボが群生していたのだ。
花にはハナアブやハチ類が集まっていた。
宿で,ハチ屋のK氏に採集したハチを見せると,たいそう喜んでくれた。その中には絶滅危惧種も含まれているようだ。

2010.10.10



答志島の奈佐浜とヤマトタチバナ

2010-10-16 | 風景

答志島の奈佐浜

長者ケ浜へは以前に行ったことがある。とにかく砂浜が見たかった。このたびは和具港から奈佐浜を目指して何キロも歩いた。高台から見えた奈佐浜は素敵だった。
清掃工場があって,そこで働いていた人々が休憩していたので,ここの浜は何と言う浜ですかと尋ねると誰もが知らないと言う。全員名古屋から来た作業員だと言う。

「奈佐のヤマトタチバナ」という看板が見えたので,ここが奈佐浜だと確信した。
看板の矢印どおり進むと,ハマボウの群落があった。ヤマトタチバナの木が見当たらなかったので,草刈をしている地元の人に尋ねると,「あの山の上,そしてあっちの山の上にも有る」と教えてくれたが,もう私の足は靴擦れのためこれ以上歩くことは諦めざるを得なかった。

「道路脇に何本も植えてある」と聞いたので,帰り道に確認できた。

足が丈夫になったら,今度は桃取港から2ヶ所の砂浜を巡りたいと思っている。
2010.10.10

奈佐浜は漂着ゴミだらけで砂が見えない有様。あの山の上にも2本のヤマトタチバナの木があるという。




あの山の上にもヤマトタチバナの木があるという。


道路脇に植樹されているヤマトタチバナ


ヤマトタチバナの果実


鋭いトゲがある。


イモキバガ幼虫

2010-10-15 | 

キバガ科のイモキバガ幼虫

豊津海岸。ハマヒルガオの葉に幼虫を発見。イモキバガの幼虫とひと目で判ったが,どうも様子が変である。触ってみると,動くことは動くが,逃げるのではなく力なく横たわる。
どうしたのか,謎は解けないまま,そのままにしておいた。
2010.10.14



2008.6.9 津市久居のサツマイモ畑にて

神島のハマゼリ

2010-10-14 | 草花

セリ科ハマゼリ属のハマゼリ Cnidium japonicum

神島。セリ科のハマゼリがたくさん生えていた。ハマアザミやハマエノコロと一緒に生えていることが多かった。時化のとき,海水の飛沫がかかるような場所に生えていた。

『野に咲く花』によると,ハマゼリは「海岸の砂地に生える高さ10~50㌢の2年草。根は太い。セリ科のつぼみは花弁や雄しべが内側に巻いた独特の形をしている。果実は長さ約3㍉の扁平な球形で,隆起線が竜骨状にはりだしてよく目立つ。花期8~10月。ハマゼリの果実は煎じて強壮剤にする。」

葉は厚く硬くて,セリ科特有の香りがした。
2010.10.11