田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

公園のユズリハ

2010-11-30 | 樹木

ユズリハ科のユズリハ Daphniphyllum macropodum

津市河芸町の河芸漁港近くの公園に何本ものユズリハが植えられている。この日,のぞいてみると,果序が垂れ下がり,藍黒色に熟した果実をいっぱい付けていた。
ユズリハの葉柄は細く長く紅色を帯びて,美しく感じられるので私は大好きである。
公園には果実を付けていないユズリハもあるが,雌雄別株だから当たり前のこと。
5~6月の花期に,花を見てみようと思う。

2010.11.29



ホソヒメヒラタアブ♂

2010-11-29 | ハエ目(双翅目)

ハナアブ科ホソヒメヒラタアブ Sphaerophoria macrogaster(Thomson)

津市芸濃町の林縁にて。
コセンダングサに訪花したホソヒメヒラタアブを見つけた。
『ルーペで調べる身近な縞模様のあるハナアブの見分け方』によると,
♂の腹部は後方へ狭まり,胸背は光沢が無いものが多いのはSphaerophoria属で,
顔は黄色(僅かにすじが現われることもある),胸背は光沢が無く,胸部側縁は全体に黄色で,小形種はホソヒメヒラタアブとなる。より大きいものはミナミヒメヒラタアブとなる。どちらも腹部の斑紋には変異が有るとしている。また,「他にも近似種-不明種があり,♂交尾器以外では区別が困難」と記されている。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ホソヒメヒラタアブ♂の「胸背の側縁は前半のみ光沢のある黄色。♀の額の黒色縦線は幅が広く額の1/2以上に達する」という。同図鑑の記述に一部間違いがあり,命名者はThompsonではなくThomson.また,「分布:九州・対馬・壱岐・五島列島・男女群島」とあるが,現在では北海道から屋久島まで分布していることが判っている。

2010.11.17



カクベンケイの子供とハマガニ

2010-11-28 | カニ

カクベンケイの子供

田中川干潟内の西側の土手を久しぶりにのぞいた。カニたちの巣穴がたくさん見つかった。
アカテガニの巣穴の入り口辺りにカクベンケイの子供が居た。
昼間からハマガニもうろついていて,アカテガニの巣穴に入り込もうとしては諦めて次の巣穴にもぐりこもうとしている。ハマガニの巣穴とアカテガニの巣穴の区別が私には付かない。

潮が引いたばかりの泥干潟には,たくさんの穴が開いてはいたが,カニたちの姿は見られなかった。また,ヒトハリザトウムシが集団生活をしていたところには,生きている彼らの姿は無く,クモの巣にかかった数個体のみ見つけた。

2010.11.25 13:30頃

ハマガニ

干潟のハマボウ 11月下旬

2010-11-27 | ハマボウ

2010.11.25 田中川干潟。海岸堤防から紅葉した2本のハマボウが見える。


2代目のハマボウ。左奥に紅葉した古木のハマボウが見える。


2代目ハマボウの果実の中に小さな幼虫を見つけた。種子は食べつくされていた。カクモンノメイガの幼虫ではないかと思うが,種子が1個も残っていず,果実の中には幼虫の糞が詰まっていた点が気になる。この幼虫が食べ尽くしたにしては,体長が小さすぎると思う。羽化確認していないので,種の同定は無理かな。

ヘリヒラタアブ♂

2010-11-26 | ハエ目(双翅目)

ハナアブ科ヘリヒラタアブ Didea alneti (FALLEN, 1817)

津市芸濃町の林縁でヘリヒラタアブを見つけた。体長は15㎜近くもある。

『札幌の昆虫』によると,ヘリヒラタアブの体長は11~15㎜で,主に山地で見られ,「黄色紋は生きているとき青色光沢を帯びる。前・中腿節は基方1/3が黒色。」

津市内の里山では,ヘリヒラタアブにそっくりな少し小型のマルヒラタアブも生息している。二種を同定するとき,ハナアブ屋のT氏は二種の顔を見比べていた。

2010.11.17

ムラサキシジミ雌

2010-11-18 | チョウ

シジミチョウ科のムラサキシジミ Narathura japonica

津市芸濃町の里山を歩いた。明るい林縁で,ムラサキシジミが目の前に止まった。光沢のある青藍色に見惚れているときに,知人から電話がかかってきた。ムラサキシジミは慌ててどこかへ飛んでいった。

『広島県蝶類図鑑』によると,「日当たりの良い照葉樹林の林縁や伐採地に生息し,住宅のカシ類の生け垣などにもよくみられる。春から夏にかけての成虫は訪花性に乏しいが,秋の越冬する個体は訪花性が顕著である。また翅を水平に開いて葉上で日光浴をする習性があり,とくに晩秋から初春にかけての越冬個体で目立つ。越冬中の死亡率はかなり高いことが知られている。」

無事に越冬しておくれよ。

2010.11.17

紀伊長島の大島

2010-11-16 | 風景

手前の岩の間に見えている奥の島が長島大島である。

許可を得て,生きものに詳しい人たちが生物相の調査のため,大島に入島した。
上陸後,最初に見つかったのはアカウミガメの卵の殻。豪雨で砂が流されて,産卵巣が地表に出てきていたのだ。この島でアカウミガメの産卵が確認されたのは初めてのこと。孵化率は悪かったようで,生育途中の個体たちが多く見つかった。また,腐敗臭もしていた。

この島ではドブネズミが繁殖していて,その調査は一部の人によって一泊二日で行われた。ドブネズミの体長が尻尾を含めないで約350ミリほどの個体も見つかったと聞いた。120個のネズミ捕りを仕掛けて,7個体の生息が確認できたという。陸地により近い付近の島では発見されていないので,陸地から泳いで渡ってきたとは思えない。島内には歩道が整備されているので,その工事資材に紛れ込んでいたものではないかと推察される。乳腺が発達していた個体も見つかったと女性調査員から聞いた

2010.11.12

右奥が大島


船はこの浜に突っ込んで止まった。舳先が低い船なので,乗り降りは比較的たやすかった。


豪雨があったとみえ,砂浜の中央部が川底のように掘れていた。


アカウミガメの孵化率調査を行っているところ。


「国指定天然記念物 大島暖地性植物群落」の立て看板。周りにハマユウの株がたくさん生えていた。




長い長い階段を登っていくと,頂に灯台がある。翌日に筋肉痛となった。


「長島大島燈台 初点 昭和29年3月 改築 昭和51年3月」のプレートがあった。

海野漁港

2010-11-15 | 風景

紀北町紀伊長島区の海野漁港

海野漁港に着いたのは朝の7時過ぎ。無人島への船に乗せてもらうのは8時過ぎだから,思ったより早く到着した。
イセエビ漁のエビ網も手入れが殆んど終わっていて,人が少なくなっていた。「変わったカニは居ないですかねえ」とおばあさんに声を掛けると,「深い所に網を入れた時はいろいろ変わったものが出てくるけど,今日は何も無い。」と答えてくれた。
「これから大島へ渡るんです」と言うと,おばあさんが「あの辺りはいろんなものが獲れる」と答える。なぜそんなことを知っているのかと尋ねると,「昔は海女をしていて,大島周辺で潜っていた」と言う。

8時前になり,顔なじみの人や名前を知らない人たちが集まってきた。さあ,大島へ向かうぞ。
2010.11.12

里山のニトベハラボソツリアブ

2010-11-12 | ツリアブ

ツリアブ科のニトベハラボソツリアブ Systropus nitobei

津市片田田中町の丘陵地帯。明るい林縁に咲いているコウヤボウキの周りをニトベハラボソツリアブがふらふらと飛んでいた。これまで標本でしか見たことが無かった種で,今日この日に出かけてきて本当に良かったと感慨深い。なかなか静止してくれないので,写真が撮りにくかった。

ニトベハラボソツリアブは,体長は12~18㎜で,後脚の第1付節の後半部は黒ずむ。中胸背板肩部の黄色班は,通常側縁に沿って後方へ伸びる。メスの第8腹板末端の黒色突起は鋭い針状。触角の第1節は橙黄色。

2010.11.7


スズキハラボソツリアブ覚書

赤花のゲンノショウコ

2010-11-11 | 草花

フウロソウ科のゲンノショウコ Geranium thunbergii

津市大里川北町。里山の林縁を歩いた。
舗装されていない道に赤紫色の花を見つけた。一瞬,園芸品種の花かと思えたほど美しい色である。田舎道には何と不釣合いな花色だこと。近くには四葉のクローバーもあった。
ゲンノショウコの花を踏まないように,気をつけて山道を歩いた。

ゲンノショウコの花は,東日本では白色が多く,西日本には赤色が多いようである。

2010.11.8


里山のコシマゲンゴロウ

2010-11-10 | 甲虫

ゲンゴロウ科シマゲンゴロウ属コシマゲンゴロウ Hydaticus grammicus  

津市片田田中町の丘陵地。いくつかの池があり,休耕田や畑もある。
畑の脇にバスタブが置いてあって水がいっぱい溜まっている。この中をゲンゴロウの仲間が泳いでいた。ときどき泳ぎをストップして休憩している。

ゲンゴロウはコシマゲンゴロウであった。
『福岡県の水生昆虫図鑑』によると,「縦縞模様が美しい,中形のゲンゴロウ。よく似た名前の「シマゲンゴロウ」がいるが,本種の方がサイズが小さいだけでなく,体色や模様が全く異なる。福岡県では,沿岸部の田園地帯にある植物の多いため池に生息している。冬季は水中からほとんど見られなくなるため,陸地で越冬しているのではないかと思われる。」という。植物の豊富な環境に生息しているようである。

捕まえてやろうとして水の中へ手を入れて追いまわしていたら,やがて体長10ミリほどのこのコシマゲンゴロウはバスタブから飛び立って,どこかへ行ってしまった。

2010.11.6

ヒメアカタテハ幼虫

2010-11-10 | チョウ

ヒメアカタテハの幼虫

津市の片田田中町の丘陵地。溜池の堤に生えているヨモギの株をチョウ屋のN氏が覗き込んでいた。指差してヒメアカタテハの幼虫だと教えてくれた。
何枚もの葉を合わせて作られた巣は,白い葉裏が見えて良く目立つ。彼らは幼虫で越冬する。

巣を壊して幼虫を確認したが,「また自分で巣を作り直しますよね」とN氏に聞くと,彼は言葉に出さず,うなづいた。

2010.11.6




ヒメアカタテハ

アカヒメヘリカメムシ

2010-11-09 | カメムシ

ヒメヘリカメムシ科のアカヒメヘリカメムシ Rhopalus maculatus

津市の片田丘陵地。林縁に白いキク科植物が咲いている。その花に赤みのあるカメムシが居たので目立った。
カメムシはアカヒメヘリカメムシで,2年前にも志摩市で出会っている。

日本原色カメムシ図鑑によると,「体長6-8㎜。赤みの強い黄褐色で光沢があり、細い毛におおわれている。翅脈および結合版各節にある黒点は小さく目立たない草むらのイネ科、タデ科、キク科などの植物に寄生する。水田に侵入してイネの穂を吸収する。」

2010.11.7



2008.4.8 志摩市にて

林縁のコウヤボウキ

2010-11-08 | 樹木

キク科のコウヤボウキ Pertya scandens

津市片田の丘陵地。里山の明るい林縁にコウヤボウキの白い花が目立つ。

昨日は無風の秋晴れに恵まれ,コウヤボウキに訪花するツリアブやハナアブなどが多かったが,今日は曇り空のためか,彼らの姿はまばらであった。

『樹に咲く花』によると,コウヤボウキは山地の日当たりのよい林縁などに生育する落葉低木で,関東地方以西の本州,四国,九州,中国に分布する。花は9~10月に見られ,本年枝の先に直径1㌢ほどの頭花を1個ずつつける。

2010.11.7

アカヒゲドクガ終齢幼虫

2010-11-07 | 

ドクガ科のアカヒゲドクガ終齢幼虫

津市片田の丘陵地。9名の仲間と生きものたちを探し回った。
誰かがクヌギの幹に50㎜ほどの大きな幼虫を見つけた。
T氏が覗き込んで,「ドクガ科の幼虫の特徴をしていますね」と言い,「持ち帰って種名を調べておきます」と素手で触ってビニール袋に放り込む。「ポロポロと毛が取れてきます」と言いながら,平気な顔をしている。
翌日,T氏から「あの幼虫の同定が出来ました。アカヒゲドクガの終齢幼虫でした」と連絡を受けた。

アカヒゲドクガの幼虫はブナ科のコナラ,クヌギ,クリを食べる。「幼虫は毒針毛無きも、強い接触により軽微な発赤を生じ、1時間以内に治癒」するという。終齢幼虫の体長は50-55㎜。

「昔,趣味で蛾もやっていました」というT氏。『蛾類通信』を今も購読していると聞いた。並の人ではない。

2010.11.6