田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ハマガニの夕食

2010-08-30 | カニ

夜の干潟。8月27日の21時30分。潮が引いたばかりか,まだ干潟の泥が軟らかい。そのためか,ヒトハリザトウムシは崖の上に居る。
アカテガニがうろうろしている。アシハラガニもいる。
ひと際大きなハマガニがヨシの新しい芽を食べている。千切って食べるのではなく,ハサミで新芽をしごいて,軟らかくしたものを口に入れているように見えた。
このハマガニは先日も同じようなところに居た。近くに巣穴があるから,そこからあまり離れない範囲で行動しているのだろう。


左下のカニはアカテガニ

ハマガニ♀

賢島のヤクシマルリシジミ

2010-08-27 | チョウ

シジミチョウ科のヤクシマルリシジミ Acytolepis puspa

親戚の葬儀に志摩市へ出かけた。阿児町の賢島周辺を少し散策していたら,雑木林の林縁でヤクシマルリシジミの群れを見つけた。
ヤマモモやウバメガシなど,いろんな木が生えている。フウトウカズラも絡みついている。近くに人家や畑もある。ヤクシマルリシジミたちは同じ木にじっとしておらず,あちこちへ飛び回っていた。

『広島県蝶類図鑑』によると,南西日本の温暖な地域に分布し,幼虫の食餌植物はノイバラ,イスノキ,アセビなどで,「本種は東洋区の熱帯から亜熱帯にかけて広く分布し,日本では本州,四国,九州,南西諸島に分布する。本州ではかつて紀伊半島南部にしか生息していなかったが,近年急速に分布の拡大が続き,大阪府南部,山口県,広島県などに生息域を広げ,四国では愛媛県で分布拡大が続いている。
日本産に顕著な地理的変異は知られていない。季節変異として,低温期の個体は裏面の黒色斑が退色し,雌翅表の青色部が拡大する。雄の翅表の青紫色で,雌の翅表の地色は黒褐色で,基半分は濃い青紫色である。」

2010.8.21



フウトウカズラの葉上で翅を広げるヤクシマルリシジミ

シオカラトンボがツリアブを捕食

2010-08-25 | ツリアブ

砂浜のツリアブたちに会いたくなって,近くの海岸に出かけた。
マエグロツリアブの雌たちがあちこちで尾端接触行動をしていた。
クロバネツリアブには最近会えていない。
オガサワラツリアブは白塚海岸では見かけているが,豊津海岸では今年確認できていない。
シオカラトンボ♂が何かを捕まえたようなので追いかけてみた。スキバツリアブ近縁種が捕食されていた。トンボを捕まえてみると,スキバツリアブ近縁種の頭が無かった。
これまでツリアブたちがムシヒキアブたちに捕食されているのは見たことが無い。トンボに捕食されるところを見たのは初めてであった。

2010.8.24



マエグロツリアブ雌の尾端接触行動





山地のシリナガカミキリモドキ

2010-08-24 | 甲虫

カミキリモドキ科ナガカミキリモドキ亜科のシリナガカミキリモドキ Nacerdes (Xanthochroa) caudata (Kono, 1936)

鈴鹿市大久保町の奥ノ谷で,渓流脇の石の上を歩き回るシリナガカミキリモドキ♀を見つけた。この日の夜には,灯火採集を行ったところ,シリナガカミキリモドキ♂が飛来した。同定はN氏による。 

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると,「12-16㎜。♂♀とも第5腹板が長く,♀では釘抜状に切れこみ,♂では三角形に深くえぐれられ,生殖節の両葉は細長く,後方に伸長し,陰茎はさらに後方に長く突出し,逆棘は先端から基方に離れる。6~8月。山地に発生,灯火に集まる。本州,四国,九州。」

なお,学名はChecklist of Japanese Oedemeridae by Koji Mizota (latest update: 7.June.2003)によった。

2010.7.17

オオヨツアナアトキリゴミムシ

2010-08-24 | 甲虫

オサムシ科アトキリゴミムシ亜科のオオヨツアナアトキリゴミムシ Parena perforata

鈴鹿市大久保町奥ノ谷。イワヒメワラビの葉上でオオヨツアナアトキリゴミムシを見つけた。ゴミムシの仲間が葉上に居るのは珍しい,さらには肢を折りたたんでいるように見え,てっきり死んでいるのかと思ったが,触ると動いた。オオヨツアナアトキリゴミムシ独特のの姿態のようである。なお,アトキリゴミムシの仲間は樹上性のものが多いらしい。

原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)によると,「9-12㎜。チョコレート色で強い光沢がある。上翅の条溝は浅い小点刻列で,間室は小点刻を粗に装う。第3間室に通常4孔点があり,前方の2孔点は第3条溝に接し,後方の2孔点は第2条溝に接する。樹上性。北海道,本州,四国,九州。」

2010.7.17

ウスイロトラカミキリ

2010-08-23 | 甲虫

カミキリムシ科のウスイロトラカミキリ Xylotrechus cuneipennis (Kraatz, 1879)  
鈴鹿市の奥ノ谷で,ウスイロトラカミキリと出会った。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると,「10-24mm。上翅は淡褐色,周縁部から黒化する傾向がある。6~9月,温帯樹林帯の広葉樹の伐採木に集まる。北海道・本州・四国・九州・佐渡・隠岐・対馬・朝鮮半島・中国東北部・シベリア東部。」

『鈴鹿市の自然』を見ると,ウスイロトラカミキリは22頭の採集記録があった。ちなみに,トゲヒゲトラカミキリの採集記録頭数は8,240頭で,そのほとんどは誘引剤トラップという採集方法によるものであった。一度に600頭を超える採集もあった。ちょいと考えさせられた。

2010.7.17

渓谷のトゲヒゲトラカミキリ

水面に浮くコムライシアブ

2010-08-22 | ハエ目(双翅目)

ムシヒキアブ科イシアブ亜科のコムライシアブ Choerades komurae (Matsumura, 1911)

鈴鹿市の山地,内部川の源流部。渓流脇の小さな水溜りにコムライシアブ雄が浮いていた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,コムライシアブは「体長11~18㎜。イッシキイシアブに類似するが,触角第3節はより細長く,♀も胸背に黄色ないし黄白の毛を密生し」,北海道・本州・四国・九州;サハリンに分布するという。
又,同書の検索表によると,コムライシアブは「体は長毛を欠く。腹部は細長い。第7腹節背板の後縁に又状突起を生じない。第7腹節背板の後縁背中線部は伸びない。♂の交尾器背面の先端近くに剛毛が融合した板状突起がある。板状突起は湾曲する。」という特徴がある。

2010.7.17

ナギサツルギアブ覚書

2010-08-18 | ハエ目(双翅目)

ツルギアブ科のナギサツルギアブ Acrosathe stylata Lyneborg. 1986

ナギサツルギアブの三重県での唯一の産地は川越町の高松海岸である。
7月3日と6日に高松海岸でナギサツルギアブと出会った。
7月20日の早朝6時頃に高松海岸に出向き,ナギサツルギアブを探すと,ハマゴウ葉上で交尾しているのを見つけた。
8月15日に高松海岸に出かけて探したが,ナギサツルギアブの姿は見られなかった。
10月1日に高松海岸を探したが,見つからず。

ナギサツルギアブの模式標本産地は山形県の酒田で,1988年に永冨・Lyneborgが種の再記載を行っており,その当時は北海道と本州では山形県のみ,その分布が知られていた。
永冨ら(2000)によると,「川原に住むようである。山形県酒田の標本が川原か海浜か不明である。」
高松海岸も朝明川の河口で,河口と一体となった海岸は干潟を有している。川原と砂浜が繋がっているので,判然とはしないが,どちらかと言えば海浜かなと思う。

その後,兵庫県や新潟県,神奈川県,また愛知県の矢作川でも発見されている。

大石(2009)によると,二ヶ所で採集されたナギサツルギアブは「ともに河岸段丘上の林内。Acrosathe属のツルギアブの中で,最も内陸部まで生息している種である。」

三重県レッドデーブック2005では,絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
大石ら(2006)によると,「多く海岸や河口の砂地で草本に覆われた環境に生息する。すなわちヨシコツルギアブよりはより内陸に生息する。幼虫は砂中にあって他の節足動物を捕食する。年1化といわれているが,春および夏から秋にも採集されているので多化性の可能性もある。」

永冨ら(2000)によると,「属・種の同定が外形による検索表ではっきりしない時は,♂外部生殖器を見る必要がある。腹部を切断し,苛性カリ液中に投じて処理すると鮮明となる。Acrosathe属内の少数標本の時は外形による検索表では間違える。」

外形による検索表でナギサツルギアブとした♂の標本を,その外部生殖器を見ると明らかにナギサツルギアブのものと異なることがある。現在,4種のAcrosathe属が知られているが,翅脈も含めて外形では区別できない別種がいると考えられる。別の類似種が居るとなれば,検索表を作り直してもらわないといけない。永冨博士は故人となられているので,大石氏に期待するしかない。別種の標本数が少ないと,検索表づくりは大変なようである。複数種が混在している可能性が高いので,交尾しているカップルの標本がいくつも欲しいようである。

Acrosathe属の内,ヨシコツルギアブは雌雄共に前・中腿節の前腹面(中央部を越えた所)に1本の剛毛を持つことから,現在のところ,外形から容易に同定可能である。

永冨ら(2000)にツルギアブの翅脈としてタシマツルギアブの翅脈図が載っている。いくつかのタシマツルギアブ標本を調べたところ,その図と同じ翅脈を有する個体も有ったが,多くは異なっていた。また左右で異なっていることもあり,この翅脈図との絵合わせでタシマツルギアブの同定を行うと失敗する。Acrosathe属の同定に,今のところ翅脈は全く使えないのである。

ツルギアブの標本は油が出てきて黒くなってしまうことが多々ある。針を刺した途端に,油が出てきて,あっという間に黒くなってしまうことがあった。雌の腹部背面の斑紋もほとんど消えて,真っ黒になってしまうことがある。真っ黒になっていても,角度を変えて見れば,うっすらと元の斑紋が見えてくる。

1989年発行の『昆虫分類学』によると,ツルギアブ科は「第5径脈とそれより後の脈は翅端より後方に達する。翅端は第4径脈と第5径脈で挟まれる。幼虫は土中や腐植中にすみ,捕食性。」などとある。

追記
大石ほか(2010)によると,「ナギサツルギアブは海浜と河岸の両方に現れ、相当な内陸部でも記録された。草本が疎らな砂地にも見られるが、より内陸の草本や木本上にも見られる。ただし河岸林の林縁辺りが限界となろう。したがって、生息環境はタシマツルギアブと同様ないしそれより少しく広いかと思われる。」
また,「ナギサツルギアブ は本州の海浜・河川の両方にに広く分布することが分かった。県単位での追加は新潟・愛知・三重・京都・奈良・兵庫。これからみると、到る所に広く生息しているように思われるが、実際の生息地は範囲が限られ、各地に点々と分布する様相を呈している。あるいは前述したように本来河岸性の種で、点々と生息地を変えているかもしれない。また三重産のナギサツルギアブの♂個体は、ほとんどのものが前額の毛束を欠くか、1-2本程度である。また♀個体では楯板の中央の黒色の縦条の著しく目立つ個体が見られる(この特徴は、他の種の♀個体にも現れるようである)。しかし♂外部生殖器の特徴に大きな差は認められず、現在の知見の範囲内では、格別区別はしない。」としている。

文献
Akira Nagatomi & Leif Lyneborg (1988)The Japanese Acrosathe (Diptera, Therevidae).Kontyu,Tokyo, 56(3):600-617.
永冨昭・大石久志(2000)日本産ツルギアブの同定.はなあぶ,9:1-32.
新家勝(2000)武庫川でナギサツルギアブを採集.はなあぶ,9:64
櫻井 精(2002)新潟県におけるナギサツルギアブの記録.越佐昆虫同好会報,85:66.
大石久志・蒔田実造(2006)ナギサツルギアブ.三重県レッドデータブック2005動物:287,三重県環境森林部自然環境室.
大石久志(2009)豊田市(愛知県)の双翅目(第1報).はなあぶ,27:38-51.
大石久志・篠木善重・別府隆守(2010)日本産Acrosathe属(ツルギアブ科)の新知見.はなあぶ (30-1):31-46.

砂浜のツルギアブ
ヤマトツルギアブ
シオサイツルギアブ覚書
ツルギアブ科Acrosathe sp.の訪花


ナギサツルギアブ♀ ハマゴウ葉上にて 2010.7.6


ナギサツルギアブ♀


ナギサツルギアブ♀


ナギサツルギアブ♀ 2010.7.3採集


ナギサツルギアブ♀ 2010.7.20採集

山地のヤスマツトビナナフシ

2010-08-17 | 三重の生き物

ナナフシ目ヒゲボソナナフシ科のヤスマツトビナナフシ Micadina yasumatsui Shiraki

鈴鹿市大久保町の奥ノ谷。ここは内部川の源流部。
イワヒメワラビの葉上で,翅があるナナフシの仲間を見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ヤスマツトビナナフシは「体長♀47~57㎜。♂は未発見で,処女生殖によって繁殖している。若齢の頃には,クヌギやクリなどの新葉や若芽を食しているが,老齢のものや成虫は老葉をも食している。分布:本州(関東以西)・四国・九州の丘陵地および山地。」

又,同書によれば,ヤスマツトビナナフシ♀の背面は濃緑色,腹面は白色,わずかに淡青緑色を帯び,頭部は全体一様に同色で,腹面部はより淡色。前胸部や中胸部は全体一様に同色。
一方,同属のトビナナフシ♀の背面は緑色,いくらか黄色みを帯び,腹面は淡黄緑色。頭部は両側に黄色縦条を走らす。中胸部の両側には明瞭な淡橙黄色の縦条を走らす。

2010.8.15









灯火のオオシマトビケラ

2010-08-16 | 三重の生き物

オオシマトビケラ Macrostemum radiatum

鈴鹿市大久保町の奥ノ谷で灯火採集を行った。
前翅に特徴的な模様があるオオシマトビケラが1個体だけ飛来した。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,オオシマトビケラは「成虫の体長は18㎜前後,開翅長30㎜前後。体は黒褐色,頭部は黄色,触角は細くて極めて長く前翅の2倍に達し,黒褐色。肢は淡黄色。前翅は光沢があり,地色は黄色,これに黒褐色の帯状斑紋がある。後翅は暗色で半透明で袋翅になる。成虫は5~9月に平地にあらわれるが発生地がやや局限されている。」

この日,参加者の一人がしきりにトビケラを液体の入ったビンに放り込んでいた。「Mさんへのお土産です。乾燥標本にすると,交尾器が変形するので,液浸のほうがが良いのです」と言っていた。

2010.8.15

林縁のオオトモエ

2010-08-14 | 

ヤガ科シタバガ亜科のオオトモエ Erebus ephesperis (Hübner, [1823])

鈴鹿市三宅町。丘陵地帯の林縁を歩いていると,大きな蛾が飛び出してきて,近くの草むらに逃げ込んだ。大きな目玉模様が見えたのでトモエガの仲間だとは分った。近づくと,初めて見るオオトモエであった。
トモエガの仲間を初めて見たとき,大きな目玉と目が合ってビックリしたが,ようやく慣れてきた。

鈴鹿市の椿渓谷で灯火採集をしたときにも,このオオトモエが飛来したから,灯火にも飛来する蛾であることが分った。甲虫屋のM氏が「この蛾はオオトモエで間違いありません」と言うので,なぜ分るのですかと尋ねると,M氏は「私はもともとチョウ屋ですから,蛾も大好きなのです。ガガンボもカメムシも好きですよ。」と答えた。

成虫の出現月は 4~9月。前翅長は47~49㎜。
幼虫の食餌植物はユリ科のサルトリイバラやシオデ

2010.7.22

キボシトックリバチのランデブー

2010-08-14 | ハチ目(膜翅目)

スズメバチ科又はドロバチ科(二説あり)のキボシトックリバチ Eumenes fratercula Dalla torre

津市河芸町一色の豊津海岸でキボシトックリバチのランデブーを眺めた。上になっているのが♂。二頭はくっついたまま腹部を動かしながら私から少しずつ遠ざかって行った。まことに仲むつまじく,うらやましく眺めておりました。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長13~17㎜。肢は基部を除き,黄褐色。頭楯は♂では全部黄色,♀では基部の約1/3,あるいは基部付近に黄斑を有する。斑紋は比較的変化が少なく,小楯板の2紋は消失しない。後胸背板の2紋は中央で連結する事が多い。本州・四国・九州に産する。」
腹部に一対の黄色斑紋がある。キアシトックリバチに良く似ている。

キアシトックリバチ
キアシトックリバチ巣
2010.8.10




外来のオオモモブトハムシ

2010-08-08 | 甲虫

ハムシ科のフェモラータオオモモブトハムシ Sagra femorata 2010.8.3松阪市岡本町にて採集

標本の大きいほうが♂(体長約19ミリ)。採集者のO氏から毒ビンに入っていたオオモモブトハムシのペアーを頂戴した。
全身に赤紫色の金属光沢がある,このハムシの実物を見るのは初めてで,欲しそうな顔をしていたから,心優しいO氏が「差し上げますよ」と言ってくれたのだと思う。よく眺めてみると,脚の一部は緑色の金属光沢をしている。

1年前にチョウ屋のN氏が,信号待ちで止まった車の中から道路脇のクズの葉上にいる本種を見つけた。普通はあまり葉上には出てこない種なのだが,運悪く?N氏に見つかった。その後,知らせを受けた虫屋たちが確認。日本での生息が始めて確認された外国産のハムシということで,和名はA氏がフェモラータオオモモブトハムシと名付けた。フェモラータは学名の一部。最初,この和名を聞いたとき,なんて長たらしい名前だことと思った。どうやら虫屋たちの間でも評判は芳しくなさそうである。言葉の意味が重複している部分があるようである。素人考えではマツザカオオモモブトハムシとかクズオオモモブトハムシのほうが良さそうに思う。

マメ科植物のクズを食べて,クズの中で蛹となり,無事越冬して繁殖しているとのことである。松阪市の阪内川河川敷だけでなく,櫛田川や祓川の流域でも見つかっており,また津市の久居町にも分布を広げているらしい。本来は中国南部やインド、タイ、ベトナムなど東南アジアに分布している種である。
蛹をたくさん見つけた人が家に持ち帰っていたところ,6月にたくさんの成虫が羽化してきたという話も聞いた。

農作物への被害が心配されており,クズ以外のマメ科植物が食害を受けないか,関係機関が調べているという。クズが絡み付いているヨシやヨモギなども食べられているようである。
一部の人たちが駆除しようとしていると聞いているが,もう遅すぎて難しいのではないかと思う。

フェモラータオオモモブトハムシの幼虫が作る大きな虫こぶも見てみたいと思う。秋遅くには,一つの虫こぶ(ゴール)の中に複数の幼虫が入っていると聞いているので楽しみにしている。


フェモラータオオモモブトハムシ♂

ヒラタムシヒキ覚書

2010-08-06 | ハエ目(双翅目)

ムシヒキアブ科のヒラタムシヒキ Clinopogon sauteri Bezzi, 1910

津市北部の砂浜海岸。スナガニの巣穴が見つかるような高潮線あたりの海岸線を歩き回った。海浜植物は生えていなくて,貝類や海藻類が打ちあがり,流木など漂着物が多い,そんなところばかりを何日も歩き回った。狙いはヒラタムシヒキである。

三重県レッドデータブック2005では,ヒラタムシヒキは「海浜性の種で,自然度の高い海岸に局所的に生息するが,生息地は極めて少ない」として,絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
また,同書によると,「体長14~17㎜程度。体は黒色で灰白色の微粉に覆われる。翅は透明,成虫は捕食性,海浜のゴミや藻類の上に見られる。幼虫の生態は不明だが,捕食性で砂地に生息すると考えられる。ムシヒキアブのうちで最も海水に近い波打ち際に生息する特徴的な生態の種。年1化,初夏に出現。」

大石久志・乙部宏(2003)によると,2000年7月27日に津市の町屋浦で7個体を見つけている。それから10年が経ち,私は今年,津市の白塚海岸と豊津海岸で見つけた。
7月初旬頃から歩き回って,何度も何度も空振りが続いた。そして,ようやくにして7月20日,22日と31日に1個体ずつ見つけたのである。もう二度と探したくない。さすが,絶滅危惧種だけのことはある。7月31日に出会った雄は,炎天下この場所でこの姿勢のまま30分間ほど全く動かなかった。根負けした。私は日射病が気になって,砂浜を後にした。

春沢 圭太郎(2004)によると,沖縄県西表島では6月27日に河口の汀線付近で採集されている。
祝輝男(2008)によると,福岡県では7月中旬に見つけている。
別府隆守(2009)によると,7月初旬に高知県土佐清水市の海岸では「波打ち際と草地の間で」見つけている。

ヒラタムシヒキが図鑑に出てくるのは1950年(1932年の同図鑑に出ているようだが,私は見ていない)の日本昆虫図鑑だけである。その後の改訂版ではなぜか消えてしまっている。O氏によれば,津市の海岸で見つかったヒラタムシヒキは「図鑑の記載と合致します。標本は油が浮いてきて,やがて真っ黒になります,どうしようもないです。生時の美しさを記録しておくには,生態写真または採集後の早い時期に標本の写真撮影しておくことですね」とのことである。

1950年の日本昆虫図鑑によると,「中形,灰黒色。頭は胸部より狭く,額は幅広く,灰白粉及び白毛で被われ,頭幅の1/3より広く前方に狭まり毛が少ない。顔面は多少下方に広がり,白粉で被われ,下方に向かう白毛顕著。触角は黒色,第1,2両節は甚だ短く等長,第3節は細長,前2節の和の2倍強長,末端棘毛は甚だ短かく,その末端に微棘を有する。胸背は比較的大,中央に太い白色粉からなる縦帯を有し,その末端は2分する。側縁も白色粉で不規則に被われ,全面に白色微毛を生じ,側縁に白色の3長棘毛を生ずる。小楯板は中庸大。翅は殆んど無色,比較的短く,m3とCu1とは1点で接合する。腹部は太く,尾端に至るに従って細まり,雄では著しく長い。体長15(雌)-20(雄)㎜。本州・沖縄・台湾に産するが,稀な種類である。[素木]」

大石久志・乙部宏(2003)によると,「♂♀:身体は黒色で,全体に灰白色の微粉に覆われ,砂地の色彩に適応したやや青みを帯びた灰白色を呈する。♂外部生殖器は小さい。♀第10背板には5対の刺状突起がある。」

文 献
大石久志・乙部宏(2003)三重の海浜性ムシヒキアブ.はなあぶ,16:49-52,双翅目談話会.
春沢 圭太郎(2004)ウミアメンボを狩るヒラタムシヒキの記録.はなあぶ,17:75,双翅目談話会.
大石久志・蒔田実造(2006)ヒラタムシヒキ.三重県レッドデータブック2005動物:288,三重県環境森林部自然環境室.
祝輝男(2008)九州における海浜性双翅目について -2007年,ヒラタムシヒキ,ハマベコムシヒキ,ハネボシスナニクバエ,ホリホソニクバエ,ゴへイニクバエ,ハマベニクバエの確認状況-.はなあぶ,25:49,双翅目談話会.
別府隆守(2009)ヒラタムシヒキがハマベコムシヒキを狩る.はなあぶ,27:33,双翅目談話会.


ヒラタムシヒキ雄 2010.7.31 豊津海岸


ヒラタムシヒキ雌 2010.7.22 豊津海岸


ヒラタムシヒキ雌 2010.7.20 白塚海岸


日本昆虫図鑑 (1950年) に図示されたヒラタムシヒキ雌
雌の腹部末端には黒く太い毛(この図では8本)が生えている。砂浜で産卵するときに,この毛が有効に働くのであろう。

林縁のスキバツリアブ

2010-08-05 | ツリアブ

服に止まってきたスキバツリアブ雌

津市河芸町の里山の林縁で,スキバツリアブを探した。
雌たちがあちこちで尾端接触行動をしているところに出くわした。私の服にも止まってきた。
同じ町内に彼らが暮らしていたなんて,全く思いも付かなかった。日本全土に分布している種だから,近くの林縁で容易く見つかるようである。旧津市内では片田や産品地区の林縁でも見つけている。
2010.8.3


スキバツリアブ雌の尾端接触行動


林縁に軽トラが通る明るい砂利道が続く。その砂利道で彼らは尾端接触行動をしている。