田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

クダヒゲガニ

2006-02-27 | カニ


「異尾類って、ご存知ですか?エビでもカニでもない、ヤドカリなどのグループのことなんですよ」と小学生の女の子に観察会で教えてもらった。

クダヒゲガニは異尾類である。
スナホリガニ上科のクダヒゲガニ科。

2006.2.26 河芸の芦原海岸にヒトデ、イッカククモガニ、イボイチョウガニ、キセワタガイなどと一緒に大量に打ちあがった。



クダヒゲガニ昨晩の波音は大きく、浅い海の砂場に暮らす生き物たちに犠牲者が出た。クモヒトデの脚はほとんど千切れてしまっていた。
クダヒゲガニのほとんどはまだ脚を動かしていた。












第一触角は甲の3倍くらいの長さがある。触角には剛毛が密生しており、左右二本の触角を合わせると網目状の呼吸水の導管となる。ヒゲが管になるのでクダヒゲ。
クダヒゲガニ腹面
普段は砂の中にもぐって生活している。

色っぽい蛾 ユウグモノメイガ

2006-02-25 | 
ユウグモノメイガ10月
2005.10.1 田中川干潟の南端にて

ユウグモノメイガ7月
ツトガ科ノメイガ亜科のユウグモノメイガ。
以前はベニモンキノメイガと呼ばれていた。
幼虫も成虫もタデ科のスイバを食べる。

お化粧が少し濃すぎるように思える。この色合いは好みのタイプなので、人に見られてしまうのが恥ずかしいような気がしてしまう。
お願い、少し紅を落として!

2005.7.19 田中川干潟の南端にて


ハゴロモヤドリガ

2006-02-22 | 
奇主 ベッコウハゴロモ (半翅目ハゴロモ科)
学名   Orosanga japonicus
   ベッコウハゴロモ 

西洋朝顔の上で、1㎝ほどの蛾を見つけた。カイトと呼ばれる西洋凧のよう。
顔はセミに似ている。どうりで、蛾ではなくセミの仲間だった。
ベッコウハゴロモという美しい名をもつ。葛の汁などを吸うらしい。
近付いても飛ぶ気配も無く、朝顔のツルをつたって歩く。後姿を見て驚いた。
翅の内側、体に白い繭の様なものが、くっついている。

 2005年 8月3日  

ベッコウハゴロモに寄生するハゴロモヤドリガ。
繭の様に見えたのは、ハゴロモヤドリガの終齢幼虫だった。
幼虫はやがて奇主の体を離れ、植物上で繭を作り、羽化をする。
セミヤドリガ科は、鱗翅目の中では特異グループとされ、幼虫は、セミ・ウンカ・ハゴロモ類に寄生する。動物食性である。日本には、セミヤドリガとハゴロモヤドリガの2種が生息する。  
ハゴロモヤドリガ (鱗翅目セミヤドリガ科)
学名   Epiricania hagoromo  
図鑑で見たハゴロモヤドリガの成虫は、全身墨色で美しかった。

  

ホシヒメヨコバイ

2006-02-20 | 田中川
ホシヒメヨコバイ
ヌルデの葉裏にホシヒメヨコバイがいました。
ヨコバイ科ヒメヨコバイ亜科  
2005.11.5






ホシヒメヨコバイ
背中の斑紋に矢印模様が目立ちますが、黒い斑紋には変異があるようで、矢印模様が無かったり、黒斑がほとんど無いのもいるようです。

ヌルデの群生地を見つけ、1本1本調べてみると、ほとんどの木に、ほとんどの葉裏にホシヒメヨコバイがいました。

ホシヒメヨコバイ幼虫
葉を裏向けると成虫たちは小走りに反対側へ逃げていきます、ある者は飛びたって別の葉裏へ移動します。
サイズは3ミリ程度。

左の個体は斑紋が異なっています。
居るところには結構いるようで、普通種のようだが手持ちの安物図鑑には載っていません。

ホシヒメヨコバイの幼虫もいました。2005.11.5
ホシヒメヨコバイ


別の場所でアカメガシワの葉裏にいる個体を見つけました。
2005.11.12
ホシヒメヨコバイ

ヒメアシハラガニ

2006-02-17 | カニ
ヒメアシハラ抱卵
イワガニ科のヒメアシハラガニ。
アシハラガニの第1と第2歩脚には短毛が密生するが、このヒメアシハラガニでは第3と第4歩脚にも短毛が密生している、ただし雌の第4歩脚には少ない。


ヒメアシハラ♀
写真の1,2枚目は雌の抱卵個体。
始めて見たときは、アシハラガニの子供かと思った。甲の色合いや斑紋が何となく違う印象があり、アシハラガニのようにハサミを上げる威嚇行動も見ていない。






ヒメアシハラ♂
写真の3、4枚目は♂
アシハラガニがこの干潟内で最も広い範囲で見られ、行動範囲も広いのに対し、ヒメアシハラガニは川の石積堤防近くでしか見かけない、ヨシ原の際や中では見つけていない。行動範囲も広いようには思えない、軟らかい泥質の所に巣穴を作っている、軟泥といってもヤマトオサガニがたくさんいるような所よりも硬さがあり、乾燥もしやすい場所である。
ヒメアシハラ♂2

トビウオ科幼魚

2006-02-15 | 田中川
優雅に泳ぐトビウオ科の幼魚。
トビウオ科は種類が多く、良く似たものばかりで、幼魚となると図鑑類も少なく種の特定が難しい。胸鰭や腹鰭の黒色斑など特徴のある幼魚だが、種名は特定できないでいる。
トビウオ幼魚
田中川干潟の潮溜まりでは、いろんな魚の幼魚に出会う。
この幼魚は干潟に遊びに来ていた小学生たちが見つけてくれた。
2004.8.6


オオユビアカベンケイガニ

2006-02-13 | カニ

イワガニ科のオオユビアカベンケイガニ。
クシテガニとも呼ばれている。
図鑑にはあまり出てこない。
干潟の澪筋際、ヨシ原の周辺部で見かけるが、数は少なく、いつも単独で動いているところしか見かけない。


ウモレベンケイガニやハクセンシオマネキなどと共に、三重県のカニでは希少生物のひとつ。
はさみ(可動指)の上面に8~9個の粒が等間隔に並んでいる。ユビアカベンケイガニはこの粒の数が3倍くらい多い。
ハサミはオレンジ色っぽい赤、先は濃い赤色。ユビアカベンケイガニは先だけが赤い。


石積み堤防を登るオオユビアカベンケイガニ さすがイワガニ科だ

クシテガニ
近づくとアカテガニは足早に逃げてしまうが、オオユビアカベンケイガニはゆっくりと逃げていくように感じている。
目つきが悪いという印象を持っている。



アツバキミガヨラン

2006-02-09 | 風景
アツバキミガヨラン田中川干潟最奥部の風景。
2003.5.30
白い花を豪華に咲かせているのはアツバキミガヨラン(厚葉君が代蘭)、ユッカの仲間、学名はYucca gloriosa 、英名はSpanish dagger(スペインの小刀)。
原産はアメリカのジョージア州で、日本へは明治中期に移入され、庭園樹として利用されてきた。ユッカランと称されることもある。
同じ仲間のキミガヨラン(君が代蘭:Y. whipplei)の英名はOur Load's Candle(主のろうそく)で、Our Loadを「君が代」と翻訳して名づけられたようだ。キミガヨランの名で流通しているものは何種類もあるようである。
アツバキミガヨランはリュウゼツランやキミガヨランとは別種である。
日本では結実しないようだが、根茎で増える。株元で切り取っても、新芽が出てくる。葉先が鋭く尖っているので危険、指で軽く触っただけでも痛い。
温暖地の砂浜を好む。
花は豪華に年2回咲くが、ほとんど匂わない。昆虫類もあまり寄り付かないが、ガガンボの仲間が花ではなく葉に集まってきているのを見たことがある。
在来の海浜植物が生息を脅かされているからという理由で、この帰化植物を根絶させようとしている地域やグループもある。

ユビアカベンケイガニ 越冬中

2006-02-09 | カニ
干潟の海岸堤防際、枯れたヨシの茎や流木などが高みに集まっている。ひとつの流木を持ち上げてみると一匹のユビアカベンケイガニ♂がじっとしていた。手にとってみると、体は冷たかった。2006.2.5

オオユビアカベンケイ
彼らはいつもアシ原の中や流木の下にいる。アシハラガニのように干潟の大通りを闊歩することは少ないように思う。葦原の縁を歩くオオユビアカベンケイガニの姿は良く見かけるがこのユビアカベンケイガニの歩き回る姿はあまり見かけない。





はさみの先が赤く、顔がオオユビアカベンケイガニ(クシテガニともいう)よりも優しい。両種を見分けるにはハサミの可動指にあるギザギザの数を数えるのが確実.オオユビアカベンケイガニなら8個程度,ユビアカベンケイガニならその倍程度ある.
     

県鳥 シロチドリ

2006-02-09 | 
三重県の県鳥、シロチドリ。
田中川河口右岸の砂浜海岸は数キロにわたって、シロチドリの営巣地である。
巣らしい巣は見かけない、無造作に砂浜に転がっている感じ。人が近づくと親鳥は足早に巣から離れるが、雛はじっとしている。

写真の卵と雛は2003.4.18
シロチドリ雛

スベスベオウギガニ

2006-02-08 | カニ
オゴノリの上に

右岸突堤近くの海岸に時々打ちあがる。大潮のとき、突堤際の潮溜まりで見かけることもある。
イソオウギガニ科のスベスベオウギガニ。
はさみ脚の大きさは左右で異なり、指の部分は濃いチョコレート色をしている。甲の両サイドに3歯あるが、一番上の歯は目立たない。
図鑑で見る個体の色は淡い褐色だが、私が見ているのは紫色を帯びた写真のような個体ばかり。


お腹

つかまえると脚を折りたたんで死んだ振りをする。
この個体は死んでいるものと思い、標本にしようと家に持ち帰ったが、洗浄していると脚やはさみが力弱く動いた、まだ生きていたのだ。

2006.2.5 スベスベオウギガニ♂



正面

ナミベリハスノハカシパン

2006-02-07 | 田中川
波打ち際で、ナミベリハスノハカシパンを見つけた。
この日見つけたカシパンを、砂の上に並べてみる。
どれも3㎝に満たないが、大型種の直径は8㎝にも達する。
棘皮動物のウニ綱に属し、分類学上はウニやヒトデの仲間とされる。
菓子パンに似ていることから、名前が付いたそうだが
こんな菓子パンを、私は知らない。
2002年、10個体程採集したが、大きな個体は直径約6㎝、いずれも白色化していた。
  花紋のある背面  
 カシパン腹面 中央口 
扁平な体に、やさしく波打った縁取りがある、ナミベリハスノハカシパン。
美しい花紋のある方を背面と呼び、背面を上に、海底に生息する。
腹面の中央に口があり、浅瀬の砂の上で、珪藻や小動物、デトリタス等を食べる。
砂の中に潜ることもあり、砂泥中の有機物を摂食しているのだろう。
詳しい生態は不明であるが、稚貝を食べることから、大量に発生すると影響が心配される。
水深3m、海底のカシパンは、水面下黒く見えるそうだ。
口の部分を割ってみると貝殻が見つかり、個体のサイズに合う稚貝を食べていることが分かるという。
暗紫色の個体は、まだ生きていたのだろうか。
死亡すると骨のように白くなり、毛も取れてしまう。
英名  Sand Doller  「砂浜の1ドル銀貨」
  2005年2月17日 
  
 腹面2005年2月17日 

シオクグ育つ干潟

2006-02-03 | 風景
シオクグ群生田中川干潟の一番奥。
2005.5.8
右手の堤防西から濁った真水が入ってくる、左手からは海水が満ち潮と共にやってくる、いわゆる汽水域である。この辺りは泥深く、長靴でも足をとられる。
堤防際に生える草はシオクグ、カヤツリグサ科スゲ属の多年草。干潟内のそこかしこに見られるが、この場所では他の植物は無く、シオクグだけの純群落となっている。
シオクグこの写真は2005.5.14
ヨシやアイアシの間に育つ花期のシオクグ。
同じ仲間のコウボウシバと良く似ているが、シオクグはそれよりも数倍はひょろ長い。生息場所も異なり、コウボウシバはコウボウムギと同居するように砂浜に育つ。丈の短いシオクグの場合はコウボウシバとの区別は悩ましい。

ベニスジヒメシャク本州以南亜種

2006-02-03 | 
なんて美しいんだ、ほんとにきれいだ、と何度もつぶやいてしまった。誰にも見せたくないと思った。
シャクガ科ヒメシャク亜科の蛾。
翅を広げたままのサイズは2cm余りで意外と小さいなと感じた。カメラをどれだけ近づけても逃げなかった。幼虫はタデ科植物を食べるらしいが、この辺りにあるのはヒメスイバ、ミチヤナギ、アキノミチヤナギくらい、少し離れたところにはギシギシ類がある。幼虫にも会ってみたい。
ベニスジヒメシャク2



上の個体は2005.10.1 

2枚目と3枚目の個体は
2005.10.11 


ベニスジヒメシャク1