田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

オオムラサキ幼虫

2015-11-15 | チョウ

日本の国蝶であるオオムラサキ(タテハチョウ科)の幼虫がエノキの葉を食べているのを見つけた.
11月初旬のこと.
成虫は6~7月に出現するが,私はまだ見たことがない.
幼虫は落ち葉の下で越冬する.ゴマダラチョウの幼虫と一緒に見つかることもあると聞く.

ホソバセセリ

2013-07-19 | チョウ

セセリチョウ科のホソバセセリIsoteinon lamprospilus

津市美杉町太郎生の高原地帯でホソバセセリと出会った.

『広島県蝶類図鑑』によると,出現時期は6~8月で,幼虫の食餌植物はススキ.暖地性の種で,雑木林やの林縁や林内の草地に生息し,成虫はセセリチョウ科としてはきわめてゆるやかに飛翔し,各種の花で吸蜜する.翅裏面の地色は黄色味が強い個体から黒化した個体まで様々な変異があり,個体変異が著しい.

2013.7.17





サカハチチョウ春型

2013-05-22 | チョウ

タテハチョウ科サカハチチョウ(アカマダラ)属のサカハチチョウ Araschnia burejana

2013.5.20 大台町,宮川の支流でサカハチチョウを見つけた.初めて見るチョウで,翅のにきやかな紋様に見惚れていたら,カメラを向けるのが遅れてしまい,その後は翅を開いてくれなくなってしまった.翅表が黒色の地色に赤橙色の斑紋だから,春型だと思う.

広島県蝶類図鑑によると,前翅長18~25mm.幼虫の食餌植物はイラクサ科のコアカソ,イラクサ,ヤブマオなど.低山地や山地の渓流沿いや林道でよくみられ,成虫は林縁や草の上などを,ときどき翅を小刻みに震わせ,滑空を混じえながら飛翔する.


コツバメ

2012-04-25 | チョウ

シジミチョウ科のコツバメCallophrys ferrea

青山高原で コツバメと出会った.幼虫の食草はアセビのつぼみ.アセビの多い青山高原を代表するようなチョウである.蛹で越冬し,年1回,早春にのみ発生するという.

『広島県鳥蝶類図鑑』に「明るい落葉広葉樹の周辺に生息し,成虫はやっと芽吹き始めた明るい雑木林を,せわしなく飛翔し」とあり,まさにそんな風景の中での出会いであった.
このチョウはこのあと飛んで行ったが,翅表の青色が見えたので,きっと雌だったのだろう.

2012.4.24

ヤマトシジミ交尾

2012-04-21 | チョウ

シジミチョウ科のヤマトシジミPseudozizeeria maha

鈴鹿川の河川敷でノイバラの葉上にいるヤマトシジミを見つけた.翅裏の色や斑紋の濃さの違いは個体差によるものなのだろうか.発生時期は年5~6回か.幼虫の食餌植物はカタバミ類.
この辺りでは最もよく見かけるシジミチョウだが,チョウへの関心が最近は少しも湧かない.三重県には優秀なチョウ屋がたくさんいるから,しっかり調べつくされているんだろうと思う.その人たちに任せておこう.

最近聞いた話では,三重県立博物館に新しい昆虫の学芸員が採用されたそうな.県外の博物館で働いた経験があるとかで,今後の活躍を期待したい.

2012.4.20


ミスジチョウ越冬幼虫

2011-12-30 | チョウ

タテハチョウ科のミスジチョウ Neptis philyra 

松阪市飯高町波瀬。モミジの枯葉にミスジチョウの幼虫を見つけた。葉はほとんど落葉していたが、数枚の枯葉が残っていた。残った葉にはどれもミスジチョウの越冬幼虫がいた。葉柄の付け根には白い糸が幾重にも巻きつけられていて、落葉しないようにしてある。

『広島県蝶類図鑑』によると、日本では北海道、本州、四国、九州に生息し、西日本では山地性となる。いずれの地でも、個体数は少ない。日本産ミスジチョウ類でもっとも森林的環境に適応した種で、おもに山地の渓流沿いに生息する。幼虫の食餌植物はカエデ、ヤマモミジほか。越冬形態は幼虫。

2011.12.18



コムラサキ♀

2011-08-11 | チョウ

タテハチョウ科のコムラサキApatura metis substituta

菰野町。樹液の出ている木を何本か見つけたので覗きに行った。
この日はカナブンが多かったが,見られぬチョウと出会った。コムラキで,10年ぶりくらいか。
『広島県蝶類図鑑』によると,コムラサキの「雄の翅表は角度によって紫色に輝く幻光があるが,雌にはこの紫色の幻光がない。」

この雌は翅をゆっくりと閉じたり開いたりしながら,この場所から離れようとしなかった。右翅が相当傷んでいる。
2011.8.10

コムラサキ♀

コムラキ幼虫

答志島のヒカゲチョウ

2011-07-30 | チョウ

タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科のヒカゲチョウ Lethe sicelis

答志島。樹液の出ている木があって,近寄ってもカナブンとヒカゲチョウが動こうとしなかった。

『広島県蝶類図鑑』によると,ヒカゲチョウは「夕方になると活発に飛翔し,雄は占有行動をとる。雄の占有行動は,日が沈んで暗くなったあとも,しばらくは続けられる。また,クヌギ,コナラ,ヤナギなどの樹液を好み,獣糞や腐果,焚き火あとなどにも集まる。湿地などで吸水することも多いが,訪花性はきわめて弱い。」

答志島の蝶については,いろんな人がいろいろと発表しているようである。ヒカゲチョウはジャノメチョウ科として1955年に採集されたという記録がある。隣の菅島でも記録されている。
答志島での最近の採集は無さそうなので,個体数はきっと少ないのだろう。
2011.7.12

ツマグロヒョウモン♂

2011-07-17 | チョウ

タテハチョウ科のツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius

2011.6.23津市の芦原海岸。チガヤやオオフタバムグラが生えている砂浜でツマグロヒョウモン♂を見つけた。

『広島県蝶類図鑑』によると,「雄は地上で吸水する。また雄は見晴らしのよい山頂や道ばたなどで占有行動をとり,侵入したものを追い出そうとする。」という。



12月のツマグロヒョウモン

青山高原のタテハチョウ3種

2011-07-01 | チョウ

タテハチョウ科のテングチョウ(天狗蝶)Libythea celtis

2011.6.25 青山高原。駐車場トイレの中で窓から脱出しようとしてもできないでいるテングチョウを見つけた。
ウラギンヒョウモンは高原の尾根筋でウツギに訪花していた。
ヒオドシチョウも尾根筋のウツギに訪花していたし,その周辺で何度も姿を見かけた。

『広島県蝶類図鑑』によると,テングチョウは「おもに山間の渓流沿いなどに好んで生息し,市街地付近の神社や公園などでもよくみられる。成虫は林道にある水たまりなどに集団で吸水し,小動物の死体や汚物などにも集まる。また白系統の花にもよく集まる。」幼虫の食餌植物はエノキ。


タテハチョウ科のウラギンヒョウモン Fabriciana adippe

『広島県蝶類図鑑』によると,ウラギンヒョウモンは「山地の明るく開けた草原に生息し,陽光を好む傾向が強く,曇天時にはほとんど活動しない。成虫は各種の花に集まって吸蜜し,とくにアザミなどのキク科植物を好む。」なお,食餌植物はスミレ類。


タテハチョウ科のヒオドシチョウ(緋縅蝶) Nymphalis xanthomelas

『広島県蝶類図鑑』によると,ヒオドシチョウは「翅形や斑紋には雌雄の差異はみとめられない。おもに山ろくにある落葉広葉樹林の周辺にみられるが,食餌植物の生える人家周辺や公園などでもよくみられる。羽化直後の個体は樹液や花などによく集まり,樹幹や崖,岩などによくとまる。暖地では羽化後1~2週間でいっせいに姿を消し,その後翌春までほとんど姿をみせない。」なお,食餌植物はエノキ。


ウツギに訪花するヒオドシチョウ(緋縅蝶)

大洞山のイチモンジチョウ

2011-06-23 | チョウ

タテハチョウ科のイチモンジチョウ Ladoga camilla (Linnaeus,1764)

津市美杉町の大洞山。ウツギの花がぼちぼち咲き出した頃,イチモンジチョウの姿を見かけた。

『広島県蝶類図鑑』によると,イチモンジチョウは「食餌植物が自生する林縁や渓流沿いなどに生息する森林性の種で,成虫はウツギやイボタノキなど低木の白色系の花に,好んで吸蜜に訪れる。雌雄ともに地上で吸水することもあり,雌の吸水行動はイチモンジチョウ類やコミスジ類に共通した習性である。」
また,良く似たアサマイチモンジは「明るく開けた河川周辺の林縁や平地・山地の雑木林などに生息し,標高の高いところを好まない傾向がある。」という。

私が出会った場所は標高が700m以上の辺りである。

2011.6.6

ナミアゲハ

2011-06-18 | チョウ

アゲハチョウ科のナミアゲハ Papilio xuthus

津市の豊津海岸。大きなマサキの木にナミアゲハが大きく翅を広げて止まっていた。

『広島県蝶類図鑑』によると,アゲハ(ナミアゲハ)は「平地から低山地にかけての人家周辺や二次林,畑などに生息し,成虫は明るい低木の茂み周辺に蝶道をつくって飛翔する。蝶道をつくるのは雄で,交尾行動との関係が指摘されている。赤色系の花に好んで集まり,吸水することは少ない。雌は食餌植物の若い葉や芽に,1個ずつ卵を産み付ける。幼虫はミカン科植物を広く食し,栽培柑橘類の害虫とされる。」

ナミアゲハの翅には黄白色の線が翅の根元まで入っている。キアゲハとの区別点の一つである。

2011.6.11

大島(紀伊長島)のルリシジミ

2011-06-16 | チョウ

シジミチョウ科のルリシジミ Celastrina argiolus Linnaeus)

大島の海岸や岩場にはハマボッスの白い花がたくさん咲いていた。その蜜を求めてルリシジミが集まっていた。

チョウ屋の話によると,「おそらく第2化のものでしょう」という。

『広島県蝶類図鑑』によると,ルリシジミは「ユーラシア大陸と北米大陸に広く分布し,蝶類の中ではもっとも広範囲に分布する種のひとつである。こうした広域分布は,基本的にマメ科植物を食餌植物としながら,その他多くの科の植物を利用することができることに起因している。」という。

2011.6.4



ウラキンシジミ幼虫

2011-05-23 | チョウ

ヤマトアオダモ葉上のウラキンシジミ幼虫

津市美杉町。ヤマトアオダモ(モクセイ科トネリコ属)の葉が落ちていて,そこにウラキンシジミの幼虫がいる。複数枚の葉をつけて幼虫が自分で落としているのだとチョウ屋に教えてもらった。この葉を持ち帰って,家で飼育すれば,餌の補給をせずとも成虫の姿を見ることができるという。

ヤマトアオダモの林の中へ県外ナンバーの車でやってきた見知らぬ人が入っていくのを見かけた。彼の手にはビニール袋があり,緑色の葉が見えた。きっとウラキンシジミの幼虫が何匹も入っているに違いない。そして,まだまだ見つける気でいるのか。
2011.5.21


ウラキンシジミ幼虫

チョウ屋が,捕まえたミヤマカラスアゲハ雌とカラスアゲハ雄を見せてくれた。このチョウ屋に見つかったら最後,捕らえられ,しなやかな指で背中を押さえられて息絶えてしまう。そして三角紙の中に入れられてしまうのである。チョウ屋の真似をして,蛾の背中を押してみたことがあるが,暴れられて逃げられてしまった。必殺仕事人のような神業だと感心している。しなやかな指でないと無理なのかも。


ミヤマカラスアゲハ雌


カラスアゲハ雄

追記
このブログ記事について複数の方からクレームをいただいた。蝶の採集行為を非難している記事と読み取られたようである。誤解を招いているようなので青字部分を加えた。幼虫の大量採集については私は苦々しく思ったが,これとて幼虫研究のための採集行為かも知れないから批判的な記事は避けたほうが良いと知人からアドバイスをいただいた。
幼虫の大量採集については非難じみて書いているが,アゲハの採集行為まで非難するものではないので追記した。標本の残っていない生物データは後日の検証が出来ないので無視されたり,否定されたりしている事例を幾つも承知しているので,標本採集を否定するものではないことをここに宣言しておく。共に生物調査に参加している仲間からのクレームは胸が痛む。

ムラサキシジミ雌

2010-11-18 | チョウ

シジミチョウ科のムラサキシジミ Narathura japonica

津市芸濃町の里山を歩いた。明るい林縁で,ムラサキシジミが目の前に止まった。光沢のある青藍色に見惚れているときに,知人から電話がかかってきた。ムラサキシジミは慌ててどこかへ飛んでいった。

『広島県蝶類図鑑』によると,「日当たりの良い照葉樹林の林縁や伐採地に生息し,住宅のカシ類の生け垣などにもよくみられる。春から夏にかけての成虫は訪花性に乏しいが,秋の越冬する個体は訪花性が顕著である。また翅を水平に開いて葉上で日光浴をする習性があり,とくに晩秋から初春にかけての越冬個体で目立つ。越冬中の死亡率はかなり高いことが知られている。」

無事に越冬しておくれよ。

2010.11.17