田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ウスモンオトシブミ

2010-07-31 | 甲虫

オトシブミ科ウスモンオトシブミ Apoderus (Leptapoderus) balteatus Roelofs,1874

津市芸濃町の河内谷でウスモンオトシブミを見つけた。キイロヒゲナガオトシブミかとも思ったが,ヒゲは短いし,脚が太く,後腿節の一部も黒っぽくなっているので,これは違うと気付いた。上翅中央後の横帯は個体変異があり,この個体は横帯が不明瞭である。

原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)によると,ウスモンオトシブミは「6.5-7.0㎜。体色の変異は小さく,前胸側縁と上翅周辺部と中央後の横帯は暗色。ゴンズイの葉を横J状に切る。北海道・本州・四国・九州。」
2010.7.30

ショウジョウトンボ♂

2010-07-30 | トンボ

トンボ科のショウジョウトンボ Crocothemis servilia mariannae

津市河芸町の国道23号線に平行して,新川と呼ばれている川が流れている。流れが殆んど無くて汚い川である。その青黒い淀みの中に,真っ赤なショウジョウトンボ♂を見つけた。

ショウジョウトンボは中型種で,成熟♂は全体赤色を呈し,4翅の基部は広く橙黄色である。(新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ)

ヤゴは,きっと新川に群生するオオカナダモの下で過ごしていたのだろう。
このショウジョウトンボ♂をみると,いつも私は美空ひばりが「真っ赤に燃えた太陽だから」と歌っていたのを思い出す。そして,ついつい口ずさんでしまう。好きなトンボのひとつである。
2010.7.27

ニセミギワバエのいる風景

2010-07-26 | ハエ目(双翅目)

四日市市楠町の鈴鹿川派川左岸 

ほどなく満潮を迎える時間帯。海水がどんどん川をさかのぼる。ここは鈴鹿川派川河口に近い干潟。汽水域の砂場で暮らすミギワバエやニセミギワバエがいる。
潮が満ちて,砂場から追われた彼らは岸寄りの草に逃れる。草が真っ黒に変わっていく。ものすごい数である。
ほとんどはニセミギワバエ科のウィリアムニセミギワバエ Procanace williamsiのようである。

2010.7.25








ミゾソバ葉上のタデハバチ

2010-07-24 | ハチ目(膜翅目)

ハバチ科ハグロハバチ亜科のタデハバチ Allantus nigrocaeruleus (F. Smith, 1874)

鈴鹿市南部の丘陵地。休耕田にハンノキが生え,その下草はミゾソバが群生し,湿地となっている。
ミゾソバの葉上にハバチの雌雄を見つけた。

タデ科のミゾソバを寄主植物とするハバチに,ハグロハバチ属のタデハバチがある。
『大阪府のハバチ・キバチ類』によると,「上唇は全体白色.メスの頭盾は通常黒色で一対の白色紋を持つ.オスの頭盾は白色で上縁のみ黒色.オスは第9背板中央が白色になるほか,第3・4背板中央部に黄白色部がある.平地の農耕地周辺から山地の林縁部にまでみられるが,やや少ない.平地では,湿地化した休耕田等のミゾソバ群落周辺で時おりみられる.」また,分布は「北海道,本州,四国;台湾,中国」

私が出会ったこのハバチが真にタデハバチかどうか,いささか心もとないが,出現環境は申し分ない。体長は8ミリ弱程度。この雌雄はこの後すぐに姿を見失ってしまった。
また,会いに行きたい。
2010.7.22

水田雑草オモダカ

2010-07-23 | 草花

オモダカ科オモダカ属のオモダカ Sagittaria trifolia

田中川の源流部,鈴鹿市三宅町の丘陵地を訪ねた。
稲穂が出てきたばかりの水田に,オモダカが花を咲かせていた。
白い花は凛として美しいが,水田雑草の一つに挙げられているだけに,ところどころ稲株よりもオモダカの株の方が多いような水田も見られた。
オモダカは日本全土の水田,浅い沼,湿地などに生える多年草である。花茎は高さ20~80cmになり,上部の節ごとに白い花を3個ずつ輪生する。花序の上部には雄花が、下部には雌花がつく。
図鑑には花期は8~10月と書いてあるが,このところの真夏日続きで花期が少し早まったのかな。
2010.7.22




ミカドガガンボ

2010-07-22 | ハエ目(双翅目)

ガガンボ科のミカドガガンボ Ctenacroscelis mikado (Westwood)

鈴鹿市徳居町の谷地をのぞきに出かけた。湿った山道を歩いていると,薄暗いヒノキ植林地の中に大きなガガンボが飛ぶ。ミカドガガンボである。
少し開けた林縁でも草むらに隠れて止まったミカドガガンボ雌を見つけた。これなら写真が撮れると思って近づいた。意外と大人しくしていてくれた。

京都府レッドデータブックでは要注目種として,その選定理由は「全国的に広く分布するが、個体数が少なく、かつ環境指標性が高い。」としている。
三重県レッドデータブック2005では,「日本最大の種。幼虫は低山の渓流付近の砂地にすむ。生息域は多少減少の傾向がみられる。」として,本種は情報不足種に選定されている。
津市河芸町赤部の里山林縁でも見かけている。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,「体長30~38㎜,翅長35~45㎜。中胸背面の前半部には3本の黒褐色の縦条がある。あしは黄褐色で細長く,各節の末端部は黒褐色を呈する。本州・四国・九州のの低山部の林中に普通。」
2010.7.21


ハマボウ咲く干潟遠望

2010-07-21 | 風景

満潮の干潟に,年々大きくなっている二代目ハマボウの姿が見える。
田中川干潟のハマボウは今年もしっかり咲いている。2本目のハマボウは,10年前には気がつかなかった。ある年,突然ヨシの中から顔を出してくれたので,ようやく気がついて,ビックリした。それまで,ひと通り干潟の中は歩き回って,ハマボウの二代目は居ないかと探していたのに気がつかないで居たのだ。
三代目たちも元気で居るのだろうか,まだ見に行ってない。

2010.7.21



田中川左岸から望む

渓流のミヤマカワトンボ

2010-07-20 | トンボ

カワトンボ科のミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia

宮妻渓谷の更に奥。内部川の源流部の川原で大きなカワトンボと出会った。
ハグロトンボより一回り大きい。
ミヤマカワトンボは「渓流に発生し,成虫期5月下旬~9月。日本固有種。」(『原色日本昆虫図鑑(下)』)
渓流なんて,めったに行かないから,こんな美しいトンボに会えるなんて感動した。
2010.7.17

渓流のヘビトンボ

2010-07-18 | 三重の生き物

アミメカゲロウ目ヘビトンボ科のヘビトンボ Protohermes grandis

宮妻渓谷の奥,四日市市と鈴鹿市の境辺り,奥ノ谷で夜間灯火採集を仲間と行った。
渓流を見下ろす登山道にライトトラップを設営。何度かライトトラップを経験しているが,この日の夜は思いのほか涼しく感じられ,そのためか集まってくる昆虫たちの数も種類も少なかった。
目についた虫はこのヘビトンボ,4個体やってきた。前翅の長さが5センチもあり,体長より長い。昼間に出会うことはなかなか難しいが,灯火に飛来する習性があるので灯火採集のときに出会える。
大きな顎を持っているので,咬まれると痛いらしい。仲間が手袋をして捕まえたら,その手袋を咬んできた。ヘビトンボの体は柔らかいが,素手で捕まえようとしてはいけません。

幼虫は水生で,水生昆虫の幼虫を食べて育つ。(『札幌の昆虫』)
2010.7.17


キバラハキリバチ今年も

2010-07-15 | ハチ目(膜翅目)

キバラハキリバチ♂と今年も同じ海岸で出会った。
この日は2頭を見かけたが,どちらもハマゴウの株に居た。ハマゴウから飛び立っても直ぐに戻ってきた。
2010.7.12


変なポーズだが,直ぐに止めてしまった。


個体によってキバラの色具合が少し異なる。

今年の7月4日には,四日市市の砂浜海岸でも見かけた。三重県内の何ケ所の海岸で彼らは暮らしているのだろう。

海浜のキバラハキリバチ

玄関のニイニイゼミ

2010-07-14 | 三重の生き物

深夜,我が家の玄関灯にニイニイゼミがいるのを見つけた。
6月下旬の梅雨の最中から現われ,7~8月が最盛期となる。
曇りや雨でも鳴くらしいが,ニイニイゼミの鳴き声は未だ聞いていない。
この個体は雌だと思う。
前翅の雲状紋は,大きさや濃度に個体差がある。
2010.7.11

フカイドロバチがマサキの花に

2010-07-09 | ハチ目(膜翅目)

スズメバチ科のフカイドロバチ Rhynchium quinquecinctum (Fabricius, 1787)

津市の豊津海岸。マサキの花を次から次へ渡り歩くフカイドロバチを見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,「体長20㎜内外。本州・四国・九州;満州・沖縄等に広く分布する。孔筒中に泥の仕切りをして営巣する。幼虫の食物として,数種のメイガ類の幼虫が記録されている。」

この蜂は今まで見た記憶が無い。石川県では絶滅危惧種に選ばれているくらいだから,分布域が広いからといって個体数が多いとは限らない。『鈴鹿市の自然』には記録が無かった。
捕まえて,あの先生にお見せしたら喜んでもらえるだろうか。

2010.7.8



玄関灯火の蛾2種

2010-07-08 | 
自宅玄関の灯りに飛来した蛾2種の美しさに引き寄せられて,真夜中に脚立を引っ張り出して撮影した。
時々,自分はなんでこんなことをしているのだろうと思うことがある。


マルハキバガ科マルハキバガ亜科のシロスジカバマルハキバガ Promalactis suzukiella (Matsumura, 1931)

成虫は6~8月に見られる。開張は10-13㎜。幼虫の食べ物は知られていない。


ツトガ科ノメイガ亜科のアヤナミノメイガ Eurrhyparodes accessalis (Walker, 1859)

成虫は5月から9月に見られる。
幼虫の食餌植物はヒユ科のムラサキイノコズチが知られているようだが,そんな植物なんて聞いたことが無いので,この辺りで普通に見られるヒナタイノコズチも食べられているのだろう。

ハマゴウノメイガ初見日

2010-07-07 | 

2010.7.4 ハマゴウノメイガ成虫を四日市市楠町の吉崎海岸のハマゴウ群生地で見つけた。今年の初見である。数はそこそこ居た。

2010.7.5 津市河芸町一色の豊津海岸で2頭の成虫を見つけた。
2010.7.6 川越町の高松海岸で成虫を見つけた。数は少なかった。
2010.7.6 四日市市塩浜の鈴鹿川河口河川敷のハマゴウ群落地では見つけられなかった。
2010.7.8 津市島崎町の島崎海岸・安濃川河口河川敷のハマゴウ群落にて多数の成虫を見つけた。
2010.7.10 津市町屋海岸では見つからず。明和町川尻海岸では多数の成虫が居たものの,幼虫や卵は見つからず。
2010.7.12 鈴鹿市磯山町の磯山海岸で成虫1頭と出会う。鼓ヶ浦海岸では見つからず。

この時期に見られる成虫は,繭の中で幼虫越冬してきた個体たちである。
卵から羽化までは約25日。産卵後,卵の期間は2日ほどというから,幼虫が見られるのも,もうすぐだ。
熊野灘に面した志摩市和具の広の浜でも,ハマゴウノメイガを採集している人がいて,標本を見せてもらった。私の去年の調査では見つけていなかったが,2010.8.20に幼虫3個体を見つけた。
2010.8.31 四日市市楠町の鈴鹿川派川河口でハマゴウノメイガ幼虫を見つけた。成虫は見られなかった。


高松海岸で初めて見つけたハマゴウノメイガ


高松海岸のハマゴウ群落


津市の安濃川河口,左岸河川敷のハマゴウ群生地


津市島崎町のハマゴウノメイガ


明和町川尻海岸のハマゴウ


川尻海岸のハマゴウノメイガ

砂浜のハマゴウノメイガ

ハマゴウノメイガの幼虫たち