田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

西表島のカニ2種

2014-05-19 | カニ

ツノメチゴガニ Tmethypocoelis choreutes Davie & Kosuge, 1995

知人から西表島で撮影した蟹2種の画像を提供してもらった.一週間ほど島に滞在して,自転車で島内を散策していた2008年3月初旬に干潟で撮影したとのこと.いつの日か,一度は行ってみたい島だ.

ツノメチゴガニは沖縄本島以南の砂泥質の干潟に生息していて,自分の巣穴を持つ甲幅5㎜ほどの小型のカニで,ツノのある眼が特徴的である.スナガニ科コメツキガニ亜科ツノメチゴガニ属.


ツノメチゴガニ
白い鋏を振るウエイビング行動をする.体色は生息地の環境によって変化するようだ.


ツノメチゴガニ


ミナミオカガニ  Cardisoma carnifex (Herbst, 1796)
甲幅70㎜ほどもある大型のカニで,マングローブ林で巣穴にいるのを見つけたもの.


ミナミオカガニ
甲はすべすべしている.


ミナミオカガニ
左右の鋏脚の大きさが異なる.この個体は♀.

干潟のホンヤドカリ2種

2012-11-23 | カニ

ヨモギホンヤドカリPagurus nigrofascia(上)とユビナガホンヤドカリPagurus minutus(下)

撮りためた古い画像を眺めていたら,2005年に田中川干潟でヨモギホンヤドカリを見つけていたことが判った.当時は種名にまでたどり着けなかった.
ヨモギホンヤドカリの名前は数年前に知人から聞いていて,きっと三重県にも生息しているだろうなあ,志摩半島あたりの岩場海岸に行けば見つかるだろうと思っていた.
田中川干潟ではユビナガホンヤドカリがたくさん見つかる.現在のヨモギホンヤドカリの生息状況はどうなのだろうか.7月から10月は活動していないようなので見つけられない,冬場に調査すれば大阪湾のように県内各地でいっぱい見つかるかも.
和名は,新種記載をした駒井智幸氏が「本新種には新称ヨモギホンヤドカリを提唱する」として命名したもの.

ウイキペディアに,学名の種小名"nigrofascia"は「黒い環」の意で、歩脚にある黒帯模様に由来すると載っていた.また,産卵前ガード行動の写真まで載せている.えらく詳しい人が執筆しているんだなあと感心した.

参考文献
Komai,T.(1996)Pagurus nigrofascia,a new species of hermit crab (Decapoda:Anomura:Paguridae)
from Japan.Crustacean Research,25:86-92.
山田浩二(2007)二色浜におけるヨモギホンヤドカリの出現.自然遊学館だより,44:11.
山田浩二(2012)大阪湾におけるヨモギホンヤドカリの分布.貝塚の自然,14:16-19.


ヨモギホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ヨモギホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ユビナガホンヤドカリ 2005.3.13 田中川干潟にて トレイに入れて撮影


ユビナガホンヤドカリ 2005.5.3 田中川干潟にて

モクズガニ雄

2012-10-07 | カニ

ベンケイガニ科のモクズガニ Eriocheir japonica

松阪市伊勢寺町の松阪森林公園へ出かけた.道沿いに堀坂川が流れる.道路脇の空き地に車を止めて,あたりをうろついていると,大きなモクズガニがハサミを広げて,こちらに襲い掛からんばかりに威嚇してくる.ハサミで挟もうとするかのような動きもする.
つかまえてやろうと思い,甲を人差し指で押さえながら親指と中指,そして薬指も動員してつかむが,逃れようとする歩脚のパワーがとてつもなく力強く,力負けしそうになる.なんてたくましい奴だ.ハサミも大きいので,恐怖を感じる.

『(続)故郷の動物』によると,「カニ類の中にも,河川を季節的に長距離移動するものがいる.イワガニ科のモクズガニで,ハサミにやわらかいふさふさした長毛が密生し,藻を生やしているようなのでこの名がある.大きな雄は甲幅八㌢余になり,とくに雄の毛は長くて濃密だ.本種は夜間以外は陸にあがることはめったになく,もっぱら水中で生活する.水中での移動は早く,遊泳も得意.」

それにしても川から上ってきて,モクズガニ雄はこんなところで何をしようとしていたのか.夜間以外は陸にあがることはめったにないというのに.
2012.10.5




青山高原のサワガニ

2011-11-19 | カニ

サワガニ科のサワガニGeothelphusa dehaani

青山高原。渓流沿いの山道を歩いていてサワガニと出会った。何か粘っこいものを捕まえて食べているようであったが,突き止められなかった。サワガニは雑食性なので何だって食べるようだ。
昔,知人からたくさんもらって,から揚げにして食べたことがある。

サワガニの体色は,甲が黒褐色で脚が朱色をしたタイプしか見たことは無いが,青白いタイプのものが三重県内にもいるという話は聞いている。

2011.11.1

堤防のアカテガニ

2011-10-01 | カニ

田中川干潟の16時30分頃,海岸堤防上にアカテガニが集結していた。この日は大潮で,満潮は19時20分頃。何百とも知れぬ数である。一部は道路上でも見かけたが,ほとんどは堤防の一番高いところ,波返しの上にいる。
なぜこのような行動をとるのか不明である。
繁殖期に陸から海に集まる習性とは異なる行動だと思う。ひょっとしたら,干潟で育った子ガニたちが成人して,まもなく干潟から陸地へと移動しようとしているのかも。

堤防際に何本も生えているマサキであろうか,その枯れた果実に一部のカニたちが集まって食べていた。アカテガニは生きている鳴く虫も食べるし,枯れた草も食べる雑食性なのだ。
2011.9.30



カクベンケイの子供とハマガニ

2010-11-28 | カニ

カクベンケイの子供

田中川干潟内の西側の土手を久しぶりにのぞいた。カニたちの巣穴がたくさん見つかった。
アカテガニの巣穴の入り口辺りにカクベンケイの子供が居た。
昼間からハマガニもうろついていて,アカテガニの巣穴に入り込もうとしては諦めて次の巣穴にもぐりこもうとしている。ハマガニの巣穴とアカテガニの巣穴の区別が私には付かない。

潮が引いたばかりの泥干潟には,たくさんの穴が開いてはいたが,カニたちの姿は見られなかった。また,ヒトハリザトウムシが集団生活をしていたところには,生きている彼らの姿は無く,クモの巣にかかった数個体のみ見つけた。

2010.11.25 13:30頃

ハマガニ

ハマガニの夕食

2010-08-30 | カニ

夜の干潟。8月27日の21時30分。潮が引いたばかりか,まだ干潟の泥が軟らかい。そのためか,ヒトハリザトウムシは崖の上に居る。
アカテガニがうろうろしている。アシハラガニもいる。
ひと際大きなハマガニがヨシの新しい芽を食べている。千切って食べるのではなく,ハサミで新芽をしごいて,軟らかくしたものを口に入れているように見えた。
このハマガニは先日も同じようなところに居た。近くに巣穴があるから,そこからあまり離れない範囲で行動しているのだろう。


左下のカニはアカテガニ

ハマガニ♀

ジャノメガザミとタイワンガザミ

2009-12-13 | カニ
ジャノメガザミ♂
ワタリガニ科ガザミ属のジャノメガザミ♂ Portunus sanguinolentus

伊勢志摩地方では波浪警報が出ていた,その翌日,河芸漁港南の豊津海岸には多数の貝と蟹が打ちあがっていた。貝はバカガイ,シオフキ,ホトトギスガイの3種が数多かった。オオノガイやアカニシ,トリガイの姿も見られた。蟹はイシガニが最も多く,次いでガザミ。タイワンガザミも見られた。ジャノメガザミも一匹だけ見られた。どれも幼い小さなカニばかりであった。

冨田靖男著の『(続)故郷の動物』によると,
「ジャノメガザミは甲に白色で縁取られた三つの蛇の目模様がある」
また「県内の伊勢湾沿岸の魚市場に出るのはガザミがほとんどで,熊野灘沿岸ではタイワンガザミとジャノメガザミが多いようだ。」

ジャノメガザミは未だ食べたことが無い。
2009.12.12
ジャノメガザミ♂
ジャノメガザミ♂

タイワンガザミ♂
タイワンガザミ♂
鉗脚の長節の前縁に大きな3個の棘がある。
雌雄で色彩が異なり,雄は暗紫色の地色に白い明瞭な雲状紋がみられる。

タイワンガザミ♂
タイワンガザミ♂

河芸漁港の南
河芸漁港の南 鳥はセグロカモメとユリカモメ

タイワンヒライソモドキ

2009-09-01 | カニ

モクズガニ科のタイワンヒライソモドキ Ptychognathus ishii Sakai,1939

熊野灘沿岸の河口域3か所で、タイワンヒライソモドキを見つけた。いずれも既知の生息地以外である。雌は抱卵個体が多かった。ある1か所ではフタバカクガニが同所的に見られた。また、別の2か所ではカワスナガニが同所的に見られた。

三重県と福岡県では準絶滅危惧種となっている。
三重県レッドデータブックによると、「甲長8.0㎜、甲幅9.8㎜ほど。雄の鉗部の根元に軟毛の房がある。前側縁の眼窩後方に切れ込みが1個ある。内湾にある河口の潮間帯上部転石下に生息。県内では熊野灘沿岸の河口域に限られ、記録があるのは南伊勢町南勢、紀北町海山区、尾鷲市の3か所のみである」とし、「生息地の河川開発、海岸開発をする場合、河床や海岸のコンクリート化には注意が必要で、転石が点在する環境を確保する必要がある」との保護対策を訴えている。

かつてはイワガニ科モクズガニ亜科に属していたが、現在はモクズガニ科となっている。

「紀伊半島以南、南西諸島や台湾に分布する。宮崎や鹿児島では大きな河川の河口域や干潟の岩の下などで採集される。」(『干潟の生きもの図鑑』)

2009.8.22~23

タイワンヒライソモドキ抱卵♀
タイワンヒライソモドキ抱卵♀ 甲の一部に傷がある。

タイワンヒライソモドキ抱卵
タイワンヒライソモドキ抱卵♀

タイワンヒライソモドキ

タイワンヒライソモドキ

タイワンヒライソモドキ
タイワンヒライソモドキ♂ 雄の鉗脚外側に軟毛の束がある

ヒメベンケイガニ

2009-08-29 | カニ
ヒメベンケイガニ
ベンケイガニ科のヒメベンケイガニ Nanosesarma minutum (De Man, 1887)

学名は『干潟の生きもの図鑑』(三浦知之)に従った。原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ)ではイワガニ科の Nanosesarma gordoni(Shen,1935) となっている。どうやら、この2種の間には相違点が無さそうということで、新しいほうの学名が消えてしまったらしい。科名もいつのまにか変更されているが、経緯は知らない。

熊野灘に小さな川が注ぐ、その護岸にカキ類が付着している。中でもケガキが目立つ。そんな所に泥をかぶった小さなカニが居た。数は少ないことはない。
「甲および胸脚に軟毛が密生し、生時は泥に被われている。」(『干潟の生きもの図鑑』)

原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ)によると、ヒメベンケイガニは「甲の前縁中央に深いくぼみがある。前側縁には眼後歯の後に明らかな切れ込みにより、眼後歯を含めて2歯がある。潮間帯の岩礁海岸に生息し、トラノオなどの根元に付着している。」

「甲長6mm、甲幅7㎜程度。本州中部以南、中国大陸まで分布する。岩礁や貝類の間に見つかり、干潟でも外洋側のカキ殻などの中に見つかる」(『干潟の生きもの図鑑』)

National Institute of Oceanographyというサイトには、分布は「India, Taiwan, China, Singapore and Indonesia」、生息地は「Mud flats of estuary and backwaters」としてあった。

2009.8.22
ヒメベンケイガニ

ヒメベンケイガニ

カワスナガニ

2009-08-28 | カニ
カワスナガニ
カワスナガニDeiratonotus japonicus (Sakai, 1934)

熊野灘流入の中小河川2ヵ所でカワスナガニの生息を確認した。既知の生息地以外である。

かつてはスナガニ科ムツハアリアケガニ亜科とされていたが、現在はムツハアリアケガニ科となっている。

三重県では絶滅危惧ⅠB類(EN)としている。三重県レッドデータブックによると、「甲長6.5mm、甲幅7㎜ほど。甲はほぼ六角形で表面には小顆粒が密生し、歩脚の長節後縁、前節前後縁に長い毛が列生する。砂泥中の有機物をすくって食べる」
また同書によると、現況・減少要因を「1969年に尾鷲市賀田の古川河口で生息記録があるのみであり、その後36年間確認記録が無い。満潮時に淡水と海水が混じり合う場所に生息していること、河口の砂泥底の転石下に生息することから、このような生息に適した環境が減少したことが要因と考えられる」としている。
さらに保護対策として、「生息地の河川工事や汚染などによる環境の破壊をさけなければならない。また、潮間帯の転石下に生息するため、このような環境を確保する必要がある。今後は既知生息を始めとする熊野灘沿岸河川河口を精査し、生息状況を把握することが最も重要である」としている。

環境省の干潟調査報告書(2007)によると、
「伊豆半島,紀伊半島,四国南岸,九州沿岸,奄美大島(Kawane et al. 2005),それに沖縄島(仲宗根・伊礼, 2003a)の汽水域上流部から知られる日本固有の希少種である.今回の調査からは,以上の分布域に加え,周防灘沿岸の山口県光市島田川からも記録された.」

環境省のカテゴリでは 準絶滅危惧(NT)、福岡県では絶滅危惧Ⅰ類、高知県や鹿児島県、沖縄県では準絶滅危惧種としている。

三重県内での生息記録については、2006年に古川で1個体、また熊野川では高密度の生息を当時東海大学の学生であった上野淳一君が確認している。彼は「県内では尾鷲市の古川以南に生息し、最南端の熊野川では高密度であったことからやや南方系であることが示唆された。また、河口から約1~2km上流の砂泥地の転石下に多く生息しており、汽水域を好むことが分かった。」と三重自然誌の会情報誌70号に発表している。
彼は三重県内での分布を古川以南と決め付けているが、決め付けるのはいかがかと思う。その時の調査結果にしか過ぎない。

ネット検索をすると、三重県内のカワスナガニの生息については、すでに複数のサイトで熊野灘流入河川とか紀伊半島河川とかの表記で明らかにしているところである。しかも県外の人がである。私もある人に1ヶ所教えてもらって、生息を確認した。
なお、今回はカニ屋が一人同行しているので、然るべき所へ記録を残してくれることだろう。

カワスナガニと同じ所でタイワンヒライソモドキやヒメヒライソモドキも見つかる。ヒメヒライソモドキは1枚だけ撮れていたので載せておく。
2009.8.22~23

追記
南紀生物,51(1):3-34,29に木邑聡美らが「三重県赤羽川河口域で採集されたカワスナガニ(ムツハアリアケガニ科)」を発表した。2007年10月6日に採集したという。
それによると、1991年にも古川での採集記録があることが明らかにされている。その根拠となる文献は
寺田正之.1995:カワスナガニDeiratonotus japonicus (Sakai, 1934) (スナガニ科,ムツバアリアケガニ亜科)のゾエア幼生.Crustacean Research,24,203-09.

また、同報告書で木邑聡美らは「これら以外に,三重県内で生息地の記録は見当たらなかった。」としている。
つまり木邑らは上野淳一君の記録を確認していないのである。三重自然誌の会情報誌はお目に留まらなかったようである。

なお、赤羽川、古川、熊野川の既知産地以外に、2009.9に津市のカニ屋が紀北町内3河川、尾鷲市内4河川でカワスナガニを見つけている。


カワスナガニ
この写真の中に5個体のカワスナガニが居る。分かるかな。

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ
以上がすべてカワスナガニ

タイワンヒライソモドキ
カワスナガニと同じ所に居たヒメヒライソモドキ(タイワンヒライソモドキではない)。てっきりカワスナガニと思って撮っていた。

アカテガニの泡

2009-07-25 | カニ
アカテガニ交尾
田中川干潟の堤防沿いにはアカテガニが多い。
ハマボウの古木へ向かう道中で、泡だらけのアカテガニを見つけた。雄が雌の歩脚をハサミではさんでいる。交尾中なのである。
雌雄共に泡を出している。興奮すると泡を出すと知人のカニ屋から最近聞いたばかりである。この雌雄はたしかに興奮しているのである。

近寄って観察しようとしたら、どうも興奮できる心境ではなくなったようで、しぶしぶ離れていった。
申し訳ないことをした。
2009.7.24

トゲノコギリガザミ♂を食す

2009-07-21 | カニ
トゲノコギリガザミ
ワタリガニ科のトゲノコギリガザミ Scylla paramamosain Estampador,1949

甲幅145ミリ、甲長95ミリのトゲノコギリガザミ♂を愛知県のNさんからいただいた。三重県内の河川で獲れたものという。ハサミにはさまれて、軍手をしていたが、血が出てきたとのこと。彼の指には穴が開いていた。
茹でると旨みが出てしまうので、40分ほど蒸すと美味しいという。良く洗ってから蒸した。
鉗脚以外はさほど美味しくないですよと言われたが、みんな食べた。みんな美味しかった。

三重県内にはアカテノコギリガザミもいるが、アミメノコギリガザミはまだ見つけられていないとNさんは言っていた。

『(続)故郷の動物』(冨田靖男著)に、ノコギリガザミは「主として塩分濃度のうすい内湾の河口付近に生息する。県内では松阪市の櫛田川や三渡川河口、伊勢市の宮川河口など伊勢湾の中南部から熊野灘沿岸の各地で漁獲される」と載っていた。

前額突起4歯は尖り、第3歩脚及び遊泳脚にはアミメ模様があるが、第1・第2歩脚には網目模様があまり現れない。鋏脚腕節の突起は上の1本が大きく、下2本の歯は短いが確認できる。
ノコギリガザミ属3種の違いは『干潟の生きもの図鑑』に詳しい。

図鑑にはノコギリガザミ属の大きさは甲長130㎜、甲幅200㎜ほどとある。あな、恐ろしや。
2009.7.20

トゲノコギリガザミ

トゲノコギリガザミ

オサガニ♂

2009-06-10 | カニ
オサガニ♂
オサガニ科のオサガニ  Macrophthalmus abbreviatus Manning & Holthuis, 1981

岐阜県の小学5年生を干潟と海岸に案内した。
干潟の石積み堤防近くで、男の子がオサガニを見つけてくれた。この干潟ではあまり見かけない。甲幅は30ミリほどで、甲長の2倍以上はある。
30分間、掌に置いて持ち歩いていたが、このカニには襲われなかった。指をはさむような動きもあったが、痛くは無かった。おとなしいカニである。
浅い水たまりに入れると、砂泥の中へすばやくもぐりこんでしまった。長い眼柄だけは潜望鏡のように砂の上へ出しているのかと思ったが、それもたたんだまま姿を隠した。
複数個体が一緒に暮らしているところはまだ見たことが無い。
東京湾から九州に分布。
ヤマトオサガニよりも潮位の高い河口で、砂泥質のやや堅いところに生息と図鑑に書いてあったが、この干潟内でも生息状況は同様である。
2009.6.9

オサガニ♂

オサガニ♂
雄の鉗脚の様子。掌部は指節の2倍も長く、大小の顆粒が多い。ハサミの付け根には円形の隙間が出来る。

オサガニ♂
砂泥の中へもぐりこむときは、眼柄をしまいこむ。ほどなく、今見えている眼柄もしまいこんで砂泥の中へ姿を消した。

アカイソガニ雌

2009-05-25 | カニ
アカイソガニ雌
イワガニ科のアカイソガニ Cyclograpsus intermedius Ortmann,1894

志摩市の和具大島という無人島に行ってきた。熊野灘に浮かぶ小さな島である。
磯の観察会に参加した形だが、私はあまり岩場には行かなかった。
打ち上げられていた大きなブイの下に隠れているカニを見つけた。
甲幅16ミリ。

アカイソガニは外洋性の礫の多い満潮線に生息。甲は隅の丸い四角形。甲表面は扁平で平滑。ハサミ脚は左右ほぼ同大。
「安乗灯台の辺りにも、このカニは多いですよ」と教えてくれた人が居た。私が捕まえたカニの甲を一目見るなり、「あっ判りました」と言う。その人が持っていた古い図鑑にはヒメアカイソガニが載っていたが、アカイソガニは載っていなかった。「このヒメアカイソガニのヒメが付かない名前だと思いますよ」と言う。昔、三重県のカニの調査をしていたという。カニとは長い間縁を切っているとも言っていた。
その人も満潮線あたりをうろうろしていて、テトラの間に「ネズミが居る」と叫んでいた。その声に反応した人が居て、彼は手にネズミ捕りを持っていた。その中には白骨化したネズミが入っていた。以前に仕掛けておいたものを回収したのだと聞いた。
2009.5.24

アカイソガニ雌

アカイソガニ雌